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第七章 新しい夢探し

13、リビングにて 望月家の優しさ

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夕食後の宴はしばらくして解散となり、弟子たちは各々の部屋へと戻っていった。
リビングには望月家の一行と辻、櫻となった。

「私、今ここに同席してよろしいんでしょうか?」
「櫻くんは僕の編集者仲間でもあるからね。他の弟子だって変には思わないさ。」
望月がいつになく気を遣った回答をした。
「この家は幸せの空気がいつも巡っているね。だから何度も来てしまうんだね。」
辻はポツリと言った。
「辻さん、僕ね、毎日辻さんと会いたいよ。パパだってそうだけど、辻さんは本当に僕を可愛がってくれるでしょ?」
「本当に可愛がってるのは君のパパとママだよ。そう感じないのはいつも一緒に暮らしているからさ。僕だって家に帰ったら仏頂面だしね。」
「辻さんが仏頂面!ハハハ!変なの!」
どうやらその言葉が淳之介のツボにハマったらしくいつまでも笑っている。

「櫻さん、」
あぐりが呼びかけた。
「この家はあなたの家だと思っていいのよ。」
「先生、それはどういう?」
「あなた、いつも気を遣って、女中らしくあろうとしているのを見て、心配になっていたの。」
「そうだよ、櫻くんはこの家の召使じゃないよ。」
辻もそう言った。
「私、寝食を皆さんと共にしていて、こんなに幸せでいいのかって本当に。。。。」
あぐりが続ける。
「私は修行中、女中仕事もさせられたの。それってなんだか変だなってすごく思ってね。修行と関係ないじゃない?で、私自身が弟子を預かる立場になったら、みんなの帰ってくる家にしたかったのよ。」
「私、今編集の仕事もさせてもらってるのに、こちらにお世話になってしまっていいのでしょうか?」
「あなたの私じゃ10個しか違わないから、娘っていうのも変だから、私を姉だと思ってもらっていいのよ。」
「姉?」
「私には本当の妹が二人いてね。早くお嫁に行った私の代わりに家を守ってくれた。」
「素敵な妹さんですね。」
「私、櫻さんには色んな意味で本当に感謝してるの。だから、気を遣わないで、ここに帰ってきたら本当の意味でゆっくりして。」
「はい!」

櫻は本当に嬉しかった。端でニコニコしている辻にも感謝した。
今夜は本当にいい夜だと心底感じた。
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