134 / 419
第八章 遭遇
16、富田編集長のアドヴァイス
しおりを挟む辻と富田編集長はバーについてすぐに窓際の席を通された。
さすが、行きつけとあって、すぐにウイスキーを頼み、店内とサービスは極上であった。
まだ時間が早いのか、客は二人が最初であった。
「ねえ、辻さん、あなたお困りことがあるでしょう?」
「どうしてそう思う?」
「顔に書いてある。」
「顔に書かないようにしてるのな。その通りだよ。」
そういうと、辻はウイスキーを口にふくんだ。
「私、ここまで来るのに色々な体験をしたの。普段はあまり話さないけれどね。辻さんになら話せるわ。」
「どうして僕に?」
「あなたが書く小説を読めばわかるわ。芯がある人ってこと。面白がって私の人生を書いたりしない人ってこと。」
「ああ。そんな真面目じゃないんだけどね。他人の人生を人に語るほど、僕は聖人君主じゃないしね。」
「何に迷ってるの?」
「ある女性の人生をどうしてあげたらいいかなってね。」
「江藤さんね。」
「うん。」
「江藤さん、色々苦労されてるでしょ?」
「どうして?」
「女学生であんなに仕事ができる子いないもの。あれは小さな頃から職業についていた印ね。」
「そうなんだ。でも、彼女を苦しめるものから解放したい。」
「それって家でしょ?」
「どうしてそう思う?」
「私がそうだから。」
「え?どう言う意味かい?」
「私、群馬の女学校を出て、すぐに軍人のお嫁さんになったの。主人は寡黙な人で食事中も全然話さない。同じ敷地に主人の親が住んでいて、家事を一日中。でも、私どうしても働きたくて、新聞社の面接を受けて、就職してしまったの。」
「それは大胆なことをしたね。」
「それでね、家族みんなおかんむり。それだから、もうダメで。子供を産まないなら離縁だってなんだか大ごとになってね。」
「そんなことが。」
「で、離縁されて、私は実家に帰ろうと思ったら、実家ももう帰って来るなって。」
「それで君はどうしたの?」
「新聞社の編集長に相談して、東京の支社にお願いしたの。それで、東京へ出てきて、最初は下宿暮らし。」
富田編集長の話は明るく話すがとても影を落としたものだった。
「それでね。江藤さんのご実家がもし今の状態をゆるしてなかったら勘当とかもいいかもしれないわよ。」
「そうしたいところだけど、僕の父が許さないよ。」
「ああ、あなたは辻財閥の御曹司だものね。勘当してどこかの養女になったら?」
「彼女の叔父にしようかと思ったんだけど。」
「うーん。彼女は家からしばられたままになってしまうかも。だから、望月の家とかはどうなの?」
「え?望月ってアグリさんのところかい?」
「そう。年齢は近いけど、養女にするにはいいんじゃない?」
「望月が僕と同い年だったから考えても見なかった。」
「色々な方法があるわ。だからこそ、あなたも江藤さんもまだ自由に囲まれてるって思っていいんじゃない?」
目から鱗だった。それで辻はまた坂本に相談してみようと思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる