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第十二章 新学期

1、女学校の友人

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櫻は新学期になり、学校に登校した。
同級生は、新しい羽織を新調したのか、また社交場のようになっていた。

「あら、江藤さん、オシャレな羽織ね?」
声をかけてきたのは前にからくりクラブに誘ってくれた上野和枝だ。
「はい。洋装店にちょっとコネがありまして。」
「洋服の生地を羽織にしたから、みたことない柄なのね。」

これはアグリが家で新調してくれたものだ。
出社してないからと、櫻にくれたのだ。

「ねえ、私の羽織もどう思う?」
「素敵です。」
「あら、前の江藤さんだったらそんなふうじゃなかったのに。」
「え?どんなふうだったですか?」
「うん、所謂堅物?」
「堅物?」
「でも、冬休みの間になんだか雰囲気変わったわね。」
「何もないんですけどね。」
「あ、隠したでしょ。私鋭いのよ。」

ちょっと背中がヒヤリとした。
「なんて嘘。私、全然わからない。でも、江藤さんと親しくなりたいのは本当。」
「え、本当ですか?」
「今までだったら、断ってたでしょ。勉強があるんでとか言って。」
「ちょっと、考え方が変わりまして。」
「何があったの?」
「卒業まで後一年ちょっとの間に、女学生らしいこと、きちんとしておきたいなって。」
「あら、何の影響?」
「雑誌を貸してくれる人がいて。」
「ああ、雑誌には女学生の特集よく載ってるわよね。」
「それで、放課後の寄り道とか、そういうのとか、友達と行ってみたいなって。」
「あら、私も変わり者だから寄り道、あんまりしたことないの。」
「そうだったんですか?」
「私って、誰かの金魚の糞みたいなの好きじゃなくてね。」
「じゃあ、今度行きましょ。上野さんとパーラーとかいきたいです。」
「私もパーラー行ってみたい!」

2人で盛り上がった。来週の火曜日に行ってみようということになった。
その日は仕事をお休みすることを告げなくてはならないが、富田編集長もアグリも認めてくれるだろう。

楽しみなイベントに櫻は胸が踊っていた。
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