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第十二章 新学期

10、国語教師からの呼び出し

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櫻は学校で昼食をとっていた。最近は上野と楽しい昼食を取ることが多い。

クラスメイトから櫻は呼ばれた。
「江藤さん、国語の市川先生から伝言。ご飯食べ終わったら、国語研究室へだって。」

了解して、上野には食べ終わったら離席することを伝えた。

櫻は国語研究室へ向かった。

コンコン。
「江藤櫻です。」
「どうぞ、入って。」

研究室の応接セットに促された。

「今日は、私に何か?」
「あなた、学年代表で感想文を提出してみない?」
「え?」
「あなたの日頃からのノートで感想を読んでいたんだけど、とても的確でいいのよね。」

「嬉しいです。でも、いいのでしょうか?」
「何が?」
「編入生の私が。」
「そんなの関係ないわよ。」
「感想文は何に出すんですか?」
「女学生感想文コンクールよ。」
「なんだか難しそうですね。」
「あなたなら大丈夫よ。」
「そんな、いえいえ。」
「あなた、本当に、以前と違って、雰囲気が変わったわね。」
「そうですか?」
「うん。文章も柔らかくなったしね。」
「嬉しいです。」
「あなたは書くことで職業婦人になろうと思ってるの?」
「え。。」
「伊達に40年生きてないわよ。大体わかってくる。教師も長いしね。」
「先生はすごいですね。ずっと教師ですか?」
「そうね、女学校の後、師範学校に行って、教師。」
「転職ですね。」
「本当はね、結婚したら辞めるつもりだった。」
「結婚してお仕事続けられるなんて素敵ですね。」
「たまたまよ。子供ができたら辞めるに変えたの。でも私には子供ができなかった。」
「ああ。」
「いきなりこんなこと言われても困るわよね。気にしないで。私の子供は生徒たち。」
「先生は辛くなかったですか?」
「辛い?」
「思い通りの人生じゃなくて。」
「うーん。結婚して子供を産むのが普通だと思ったからね。そのレールに乗れなかったのは、昔は悔しかった。主人にも、私でいいのって聞いたのよ。」
「大丈夫だったんですか?」
「子供がいることが夫婦の形じゃないって言ってくれた。」
「素敵なご主人ですね。」
「そうね。私、だから、素敵な女学生を育てたいと思うようになった。だから、江藤さんにも素敵な女学生生活を送ってほしいわ。」

市川先生の秘密の背景を知った。しかし、それを乗り越えて、優しさに包まれたこの教師を櫻は尊敬した。
自分自身の未来も思い通りには行かないかもしれない。しかし、それを自分は大切にしていこうと改めて思った櫻であった。
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