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第十二章 新学期

24、ポスターのお願い

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櫻は図書委員会でポスターをみんなに見せた。

「わー、素敵ね。これは本を借りたくなるわ。」
「いいわね。素敵。」

先輩も後輩も褒めてくれた。

「あの、皆さんにお願いがありまして。」
「何?江藤さん。」
委員長がにこやかに言った。

「あの、このポスター最初は図書室に飾ろうかと思ったのですが、もっと皆さんに本を読んでいただきたくて、階段の踊り場に飾りたいんです。」
「踊り場?」
「はい。入って正面の階段の途中のところです。」

委員長はちょっと考える顔をした。
「これは先生に許可が必要な案件ね。」
「え?どうしてですか?」
「あの場所はいろんな来訪者の方が通るでしょ。」
「はい。」
「私は青踏好きよ。でも、そうじゃない考えを持った人も多いのが現状よ。」
「え?」
「だからね、思想が入ってるのもあるから、担当の福澤先生に相談が必要ね。」
「どうしたらいいですか?」
「私と江藤さんで後で福澤先生に相談に行きましょう。」

委員会が終わった後、二人は教員室に行った。
「あの、福澤先生に。」
「すぐ戻ってくるから待ってて。」
他の教員に促された。

「あ、委員長と江藤、どうした?」
福澤は辻より少し上の男性の教員だ。
「あの、ポスターの件で相談がありまして。」
「あ、図書室に貼るって件か」
「それが、別の場所に貼りたくて。」
「どこなんだ?江藤」
「階段の踊り場です。」

そう聞くと、福澤もちょっと考えた表情をした。
「あの、まずいですか?」
「いや、実はそれもいいのかと思った。」
「福澤先生、じゃあ、いいんですか?」
「俺は賛成だ。しかし、思想が入ってるからな。教員会議で説得するよ。」
「先生、ありがとうございます。」

その放課後、話し合いにそれは出された。

帰りの車中で辻が、櫻に切り出した。
「今日、ポスターの件、教員会議で出たよ。」
「ああ、どうでした?」
「福澤くんが熱心にしてくれたから、説得されたよ。」
「ああ、よかった。」
「君はどんどん勇気が出てくるね。」
「本当ですか?」
「逃げることをやめたね。」
「先生の影響ですね。」
「僕は、君と社会に戦いながら一緒になりたい。」
「嬉しいです。先生、どうぞよろしくお願いします。」

ということで、ポスターは踊り場に飾られることになった。
女学生の間では大変好評で、図書室がにぎ合うようにもなった。
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