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第十三章 養女になる準備

12、旅館での朝食

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「もう!3人とも僕に声もおかけずに大浴場に行くなんて!」

櫻達が部屋に戻ると、淳之介がぷんぷん怒っていた。

「あら、ごめんなさいね。だって、淳が気持ちよさそうに寝てたから。」
「お母さん、僕に何かあったら事件だよ。」
「じゃあ、探偵さんの淳に解決してもらわなくてわね。」
「もう、冗談言ってるんじゃないんだから!」

そっと櫻は会話に入ってみた。
「私が先に大浴場に行ってしまって、トモヨさんがあぐり先生の付き添いになってしまって。淳之介さん、ごめんなさい。」
「ああ、櫻先生。でも、僕は寂しかったよ。」

まだ小学生の淳之介を可愛いなと櫻は思った。

「さあ、淳、もう朝食だから部屋を片付けましょう。」
しばらくすると、布団上げの授業員がきて、部屋はすっかり片付いた。

ここの旅館は部屋に食事を運んでくれる。夕食の時、櫻はびっくりした。

「ああ、朝ごはん、どんなものかしら?」
「和定食じゃないのかい?」
トモヨとアグリは話していた。

旅館に泊まっているだけでも豪勢なのに、こんなに至れり尽くせりな状態が緊張した。

「あの、浴衣着たまま、朝食いただいていいんですか?」
「あら、櫻さん旅館初めてだもんね。食事の後にお風呂に入る人もいるから、浴衣のままでいいのよ。」

しばらくすると、朝食が運ばれてきた。
鮭がメインの和定食だった。

ご飯はお櫃に入っており、とてもほかほかしていた。

「すごく美味しそうですね。」
「うん、この宿は食事のおいしさでも有名なのよ。」

櫻は小鉢を食べるたびに感動した。
こんなにいい思いをしていいのか、ちょっと遠慮した。

「ねえ、櫻先生。」
「なんですか、淳之介さん、」
「すごく、おいしそうに食べるね。」
「だって、美味しいんですもの。」
「僕、大人になったらこんなのちょちょいのちょいで作っちゃうよ。」
「男性が料理ができるのは素敵ですね。」
「うん。うちのパパだってとっても上手だよ。辻さんだってね。」

櫻は辻の料理上手は知っていたが、あえて知らないふりをした。
淳之介に付き合っていることを知られたら、それこそすぐにみんなにバレてしまう。

「淳、落ち着いて、食べなさい。」
アグリが諌めた。

「この食事が終わったら、荷物をまとめて、群馬の家に行く予定なの。櫻さんにはお手数になっちゃうけど。」
「いえ、私も行ってみたかったので。」
「わたしゃ、百貨店でぶらついてるから、3人でね。」

どうやらトモヨは意地でも行かないらしい。
と言うことで、この後は、望月組へ行くことになっている。
櫻はどんな家か興味があったので楽しみにした。
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