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第十三章 養女になる準備

22、辻からの相談2

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考え込んでいる櫻を目にして辻は切り出した。

「ちょっと今まで断った見合いの相手の共通点を改めて思い返したんだよ。」
「え、お見合いしてたんですか?」
「櫻くんと出会う前だよ。」
「ああ、びっくりした。」
「でも、親父は女性らしい習い事をしてる女性が好きみたいなんだ。」
「私がそれをした方がいいことは間違いないんですね。」
「うーん。全てとは言えないが。」
「歯切れの悪い先生ですね。」
「自分が乗り気じゃない提案だからね。」
「どうして急に。」
「養女にするにあたって、佐藤支店長と話をつめているんだけどね。それで、親父の話が出たんだよ。」
「じゃあ、佐藤支店長の分析ということですね。」
「ああ、バカな僕じゃそんなこと気が付かないよ。」
「ではいいです。何か、習います。」
「え?いいの?」
「だって、して欲しいんでしょう?」
「そうだけど。」
「あの、私、自分の身になる習い事がいいです。」
「身になる?」
「先生としては何がおすすめですか?」

そう聞かれると、辻は少し腕を組んで考え込んだ。

「正直いうと、ピアノだね。ドイツ語もあるし、海外に出ると、仲間でピアノを弾きながら踊ったり歌ったりそれは楽しいんだ。」
「それは素敵ですね。」
「僕は今からでも習いたいけど、踊ったり、歌ったりでもいいかなんてここまで来てしまった。」
「じゃあ、ピアノにします。でもピアノなんてどこにあるんですか?」
「佐藤支店長の家と僕の家にある。」
「え?」
「あ、もちろん、僕の家にはまだ連れて行けないけどね。だから佐藤支店長の家で習うことはできる。望月の家にはなかったよね。」
「はい。」
「ピアノは損はないよ。いつか君と海外で外遊したらそういう短期間の生活もしてみたい。」
「おうちでもいいじゃないですか?」
「ああ、でも親父がいるからね。」
「辻さんのお父様ですから。私は家族になれるように頑張りたいです。」


ということで、櫻は受験に入った淳之介の家庭教師の日の半分をピアノを習うことになった。
送迎は辻の車で。
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