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第十六章 最終学年

132、君のスタイル

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辻に手紙を渡すことは危険とも思いながら、櫻は書き始めた。


「辻先生へ
色々、ありがとうございます。それと同時に色々不安にさせてごめんなさい。
私、大杉さんのこと、まだよくわかっていないけど、今あまり気にならなくなってきたのが本心です。

どうしてかというと、私の想像上の大杉さんと皆さんが話す大杉さんの姿に乖離があったからです。
本当は会って判断しなくてはいけないとはわかっているのだけれど、
私は、あなたのことがとても好きなんです。
でも、確証が取れなかった。
大杉さんのことがあってから。
でも、いろいろなことがあって、本当に感謝だけじゃなくて好きなんだなって思って。

この前、先生のことを過去形で思ってしまったことがあったんです。
でも、それって違うってわかったんです。
それはあなたが私にとってかけがえのない存在であることを。
もし、あなたを失ったら私は多分、一生後悔すると思います。

でも、信じてくれないかもしれない。
他の男性に目を逸らした私を。
先生、私、本当は心をふたつに分けたくなんてなかった。
先生がもっともっとって先生になすりつけていた。

わかったんです。
私の問題だってことが。
何がって?
私の心の底にある大切なものが先生の気持ちだってことに。

大杉さんは尊敬してます。
あったら、感動するかもしれません。
でもベターハーフかどうかは今のところわかりません。

私にとってのベターハーフは先生でそれは違いはないってことです。

短い手紙でごめんなさい。とても大事に思っています。
櫻。」


この手紙は望月に預けることにした。
届いたらどう思うかは考えないことにした。
櫻は素直な気持ちを伝えたかっただけだった。
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