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第十六章 最終学年

134、カヨの家

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カヨの家に着くと二人はすぐに抱き合った。
そのあとはすぐに交わった。


布団の上で、すぐに大杉は眠ってしまった。
カヨは服をきちんと着て、台所へ向かった。

今日の大杉を自分は手に入れた。
でも、明日の大杉は手に入れられない。

静かに料理を作り始めた。
群馬から野菜が届いていて、大家さんが玄関に置いていてくれた。

群馬の野菜を見ると、結婚していた時代を思い出す。
こっそり働きながら主婦をしていたこと。

東京だと、職業婦人と持て囃されるが、群馬ではそうはいかない。
主人が戦争のことで家を空けていると、安心した。


でも、今は大杉がそばにいないと不安だ。

「あ、カヨくん。」
「あら?起きたの?」
「ごめん、疲れてて、少し落ちたみたいだ。」
「寝てていいのに。」
「うん、でも何か作ってくれようとしただろ?」
「そうだけど。」
「手伝うよ。」
「不思議ね。」
「何が?」
「男子厨房に入らずの世界よ。」
「もう、独り者だからね。そうはいかない。」
「誰かと一緒になりたいとは?」
「その時の気持ちさ。」
「その時?」
「ずっとの約束なんて存在しない。」
「ずっとの約束。、。」
「カヨくんはずっとしたいことはある?」
「言われてみれば、今のことしか考えてないわ。」
「そうだろ。僕たちはにてる。」

二人で、野菜を煮込んで、芋煮を作った。

「群馬でも芋煮を作るのかい?」
「ううん。叔母がね、山形に嫁いでて、教わったの。」
「そうだったんだ。」
「よく知ってるわね。」
「ああ、知り合いが東北の人がいた。」
「昔の女?」
「いや、今現在もあってる。」
「そうなの。。。」


カヨはそうだ、彼はフリーな恋愛をしていることをまた思い出した。

「あなたのことは縛れないわね。」
「縛れない?」
「うん。」
「だから、今だけ一緒にいられることを幸せに思わなくちゃね。」
「カヨくん、あんまり思い詰めるな。」
「え?」
「君の好きなように考えていい。」
「好きなように?」
「そう。その通り。」
「どう言うこと?」
「僕といるときは、僕のことだけ考えていればいい。」


なんてひどい男だ。
でも、なんて魅力的な男だ。
そう、カヨは思って涙が出た。
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