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第十六章 最終学年

136、早速の望月

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学校が終わり、車に乗り込むと、開口一番望月が切り出した。

「あのね、さっき、津田くんのところに行ってきた。」
「え?もう?」
「善は急げだろ?」
「いや、急でびっくりしました。」
「そうだよね。」
「はい。」
「でもさ、今師範の勉強してるだろ?」
「そうですね。」
「他の学校も見ておくべきかと?」
「なんだか辻先生みたい。」
「まあ、みてみるといいよ。」
「でも、帰るのが遅くなってしまいます。」
「さっき、佐藤邸にもしかしたら遅くなるっていっといたよ。」
「望月さんって意外に行動的なんですね。」
「えへん。」


車は武蔵野を目指す。
次第に街から緑が広がってきた。

「あの。」
「うん、どうかした櫻くん?」
「私、聞くことも考えてなくて。」
「考えて聞くことをするなんてしなくていいよ。」
「え?」
「その時、セッションすることが大事さ。」
「セッション?」
「外国じゃ、その場で始まるさ。」
「ああ、そうですか。。。」
「まあ、そういうことだから、肩に力を入れず。」
「そうなんですか?」


望月は鼻歌を歌い出した。
でも、櫻は緊張してきた。

1時間すると、英和塾についた。
「あ、ついたよ。」
「ああ、とても自然の中に。」
「都心は値段が高いしね。」


少し、懐かしい気がした。
自分の田舎のような。。。


「あら、あなたが櫻さん?」
洋髪の着物すがたの女性が出てきた。

「あ、はい。」
「私、津田と言います。」
「あの、望月さんから急ですみません。」
「ううん、いいの。外遊して帰国して友人になったから。」
「急なおじゃまですみません。」
「何度も謝らないの。さあ、入って。」

和風の一軒家の中に入った。
大きな部屋に黒板と机が置いてある。


「すごい、ですね。」
「まだ、費用がなくてね。」
「どんな勉強を?」
「英語だけで授業をするの。」
「え?」
「ここでは外国なのよ。」
「そんな勉強があるなんて知りませんでした。」
「風変わりでしょ?」
「いえ、素晴らしいです。」
「あなた、外国語に興味が?」
「はい。いずれ外遊したくて。」
「なら、とてもお勧めするわ。」
「え?」
「私ね、向上心のある女性が大好きなの。」
「私、優秀じゃないです。」
「優秀じゃないか、どうかなんて問題じゃないの。努力をするかどうかよ。」
「え?」
「私、自分が行きたくて外国に行ったわけじゃないの。」
「どういう?」
「たまたま、選ばれただけ。父の関係でね。」
「ラッキーですね。」
「そう?私は泣いてばっかりいたわ。」
「え?」
「日本にいたっかった。」
「それは。。。」
「でもね、私の今があるのは外国に行ったおかげ。」
「尊敬します。」
「うん。ありがとう。ならね、今度、授業の日に遊びにきてみたら?」
「え?いいんですか?」
「もちろん、学校が終わった後、木曜は夕方まで授業してるから来てみて。」


ということで、次の週の木曜日に行くことが決まった。
少し遠くから眺めていた望月はニコニコした表情で佇んでいた。
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みんなの感想(2件)

浮島龍美
2023.10.19 浮島龍美

おお!私の小説を読んでくれたんですね!ありがとうございます。只今、第1部が完結致しました。

有住葉月
2023.10.20 有住葉月

とてもVANISH!楽しく拝読していたので、第2部も楽しみにしてます!もし、読者様で感想読んでくださった方、とてもオススメです。

解除
浮島龍美
2023.10.19 浮島龍美

多分、主人公は伊藤野枝と辻潤がモデルだろうな・・

有住葉月
2023.10.19 有住葉月

浮島様
いつも楽しく拝読させていただいています。まさか、感想いただけるとは思いませんで。
モデル、その通りです。大昔、青踏の第二期研究をしたのと、ダダイズム辻潤に傾倒した時代がありまして。登場人物の年齢を色々変えたり、いきなり大杉が出てくるのもフィクションとして楽しんでいただければ幸いです。
VANISH!再開されて楽しみです♪

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