大杉緑とは俺様だ(完結)

有住葉月

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第1章 非凡なる学生

1、僕の紹介をする

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君たち諸君、僕のことはご存知かね?
知らない君もいるだろうからあえて名乗ろう。
俺の名前は大杉緑。みどりって女か男かわからないという低俗な方もおろう。
みどりとは自然である。これをつけてくれた両親に俺はお礼を言いたい。

と言っても、俺自身は1歳で養子に出された。
子供のいなかった弁護士の叔父の家に養子に出された第三子と言ったところだ。
まあ、子供の頃は実の両親を叔父と思って育てられたから、特に不自由はない。

まあ、そんな形でまだ俺自身が僕と名乗っていた時代の話をしよう。
旧制中学を私立の学校に通っていた。
まあ、御三家ではないけれどね。
まずまずの成績で、親は弁護士を次いでくれるということで
帝国大学に入らせようとしていたわけだ。

ハハハ。
人生、親の思い通りにならないのが面白いところだね。
僕はその頃、活動写真にハマっていてね。
弁士になりたいとも思ったもんだけど、人に影響を与える発言をしてみたいと漠然と思ったんだ。

え?長い?話が長いだと?
紹介するときはきっちり紹介しなければならないじゃないか。
低俗な君らには俺の苦労はわからんか。

ハハハ。
また、話を戻そう。
それで、15歳の僕は友人と浅草に演劇を見に行った。
まあ、その演劇はそこそこ面白い、恋愛ものだったがそれでも何か物足りなくてね。
帰り道、六区と言われる通りで演説をしている若者を見た。

「この国は間違っている」
そのことはわかった。どうして間違ってるのかどうしても知りたくなったのだ。
本当に間違っているのか。この若者が間違っているのか。
知りたい欲がどんどん増えてきて、その若者の名刺を頂戴したよ。

それで、その若者の集まりとやらに参加して、社会主義者という団体に入ったんだ。

え?面白くない?
俺の人生に面白みを求めるなんて、てんでダメな野郎ですね。

まあ、15歳の話だから許してやろう。
その後も、モテて仕方なかったり、いろんなところからお声がかかったりと引っ張りだこのこの俺を期待してしまうね、君たちは。

ということで、本日はこのくらいでお開きに。
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