望月アグリと申します

有住葉月

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第3章 夫婦って

9、不意に訪れた知らせ

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望月アグリと申します。
私の小さな頃の思い出はサーカスに行ったことです。それは夢の中のようでとても恐ろしくも面白く、魅惑的な世界でした。舶来の人たちがいろいろやってのけるその姿が憧れでもありました。

話を戻しましょう。
ヨウスケさんが家を出て言って、1ヶ月後の夏休みに勇蔵さんが東京の下宿に行きました。
しかし、待てどくらせど帰ってこないので、一週間で根を上げて群馬に勇蔵さんだけで帰ってきました。

私の中では穏やかな毎日が続いていました。
でも、心のどこかでヨウスケさんに話したいな、とかそおう思っていたのです。
一週間も一緒にいなかったけど、あの人の優しさと寂しさに触れて、私はあの人の女房になったことを後悔しておりませんでした。


ヨウスケさんがいなくなって3ヶ月が経ち、新学期が始まりました。
私は体調がすぐれなくなり、学校をお休みしました。
ぐったりして、食欲がなく、食べても吐いてしまうのです。

「おいアグリ!」
お父様が部屋にいらっしゃいました。
「ああ、すみません。体調を崩してしまって。」
「いや、いいんだ。すぐに医者を呼ぼう。」

こんな、ちょっと体調が悪い程度でお医者様を家に呼ぶなんて大事にして、ちょっと困りました。
頑張って学校に行くべきだったかとも迷いました。

お医者様がきて、いろいろ聞かれました。そして、体のいろいろなところを確認しました。

「それで、お医者様、風邪でしょうか?」
私は聞きました。
「いや、病気じゃないよ。3ヶ月だな。」
「え?」
「赤ん坊だよ。」

ええええええええ!赤ん坊ですか!
 
すぐに女中さんがお父様とお母様に言いに行きました。

「よくやったぞ、アグリ!」「アグリ、本当に大事にするのよ。」

ああ、お父様、お母様、私。。。。

「ううう。」
「ああ、そんなに嬉しいか。」
「ああ、お父様、私、赤ん坊なんて」
「どうした?これでヨウスケも帰ってきて家族みんなで収まるんじゃないか。」
「うううう。」」


ヨウスケさん、あなた、子供できることなんてほとんどないって言ってましたよね?
できちゃってますよ。一回で!
運命なんでしょうか。もう、私1人では自由ではなくなってしまいます。

頭が混乱して、泣いてしまいました。

「ああ、東京のヨウスケにも電報打たないとな。」

ヨウスケさんは受験生です。帰ってくるんでしょうか。
私は、女学校に行きたいのに。

「あの、明日は女学校に。」
「もう子供ができたのよ。学校はやめよ。」
「え!だって、通っていいって。」
「それは子供がいなかったらの話よ。」

困りました。学校のけんはまたお話しします。
今日はこの辺りで失礼します。お粗末様でした。
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