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首輪物語 第二章 懐に抱く宝
しおりを挟む「ありがとう、犬飼」
犬飼の部屋に入り、そっとソファに下ろしてもらった。
本当に、びっくりした。
まさか本当に前世犬の人間に襲われるなんて…。
頭の中は、理不尽な目にあった怒りや驚きで一杯なのだけど、体は素直に恐怖を感じているみたい…。
見下ろすと、自分の手が震えていた。
「あはは……なんだか…驚いちゃって…」
ぎゅっと自分の手を握りしめた。
すると、目の間に立っていた犬飼が、ゆっくり膝をついた。
そして、躊躇いがちに僕の手に、自分の手を重ねた。
「……すまなかった…」
犬飼の長い指が、僕の手を優しく撫でる。
「彼には、君が望む制裁を……警察に出頭させても良い、それ以外でも…本来は真面目な男だ。君の決定に従うだろう」
犬飼が深く頭を下げた。
「それに…君を守れなかった私にも罰が欲しい…」
俯いたままの犬飼が言った。
もしも、今回が犬の前世に関係のない出来事だったら、僕を襲った人をもっと悪く思ったかもしれない。
でも…どうしても、さっきの人に、発情期を迎えたドーベルマンがチラついて…怖かったけど…犬に襲われた恐怖と驚きでしかない。
「犬飼、頭を上げて…」
「……」
「怖かったけど…大丈夫。それに、犬飼は悪くないよ」
犬飼に掴まれた手を、そっと引き抜いて、犬飼の頭をポンポンと撫でた。
サラサラの絹のような黒髪は、最高の手触りで、心癒やされる。
「…襲われた事にも、ちょっと…心当たりがあるというか…」
僕は、もう大分信じているけれど、流石に前世が犬の人間を魅了してしまうらしいとか言えない。
だって…犬飼も前世犬っぽいし…。
今、気がついたけど…もしかして、犬飼って前世犬だから僕に興味を持って、友達になってくれたのだろうか…。
でも、何だかそれって、ちょっと悔しいかも。
犬飼が僕自身を気に入ってくれているわけじゃないみたいじゃないか!
「心当たりとは…」
犬飼が顔を上げて僕を見つめた。
眼鏡越しの鋭い眼差しが、揺れている。
「……」
僕は、謎の憤りに襲われている。
犬飼も結局、前世犬だから僕と一緒にいるのかと…。
「蛍…どうしたんだい?大丈夫かい?」
犬飼が僕の膝に触れるくらい近づいた。
すると、犬飼の少し開いたバスローブから赤い物が見えた。
「っ!」
それは…まさか…首輪?!
えっ…なんで…バスローブの中に首輪?
犬だ…やっぱり犬飼は犬だった…。もしかしたら、愛犬化も進行する犬なのかもしれない。
「犬飼…少し聞きたい事があるんだけど…」
「あぁ…」
「犬飼は…僕の事、好き?」
「なっ!…も…もちろん…すっ好きさ…友人!そう友人として!」
立ち上がった犬飼は、落ち着きなく、僕の前を歩き回った。
「犬飼は…僕に…その…キスしたいとか…思わないよね?」
「ほっ…蛍!何を言うんだ!ま…まさか、わた…私がそんな事をしたいと思うと?!」
犬飼は艶のある、美しい唇をおさえた。
「……僕が、キスしてって言ってもしないよね」
愛犬化してると絶対服従なのかな?
「もっ、もちろん!しない……しないが、君の希望ならば…友としてキスするのも…不可能ではない」
犬飼は何度も眼鏡をなおし、唇を拭った。
友としてキスっておかしくないだろうか…。
「犬飼は…僕の体とか興味無いよね?」
「かっ…からだ?!」
「僕で…その…なんていうか…あの…」
聞けない…聞けないよ…僕でマスターベーションしますか?なんて…変質者じゃないか。
なんて聞けば…どうすれば…。
「おちんちん…」
「っぐ…」
僕がついハレンチな言葉を発した瞬間、犬飼は再び膝を付いてしゃがみこんだ。
「…ご…ごめん…今のは何でも無い。間違い!!それよりも、そう!首輪!首輪を返してもらいに来たんだ!!」
「っ!なぜ…」
顔を上げた犬飼は、凄く切羽詰まったような顔をしている。
美形だから…どんな表情をしても何だか映画のシーンみたいだ。
「いや…犬飼には必要無いだろう…」
犬と暮らしているわけじゃないし。
「必要…ある……わけじゃないが…」
「はい」
僕は、犬飼の顔の前に手を出した。
愛犬化していないなら返してくれるはず。
とりあえず、犬飼が僕と友達になったのは犬だからという苛立ちは置いておこう。
犬飼は、おずおずと懐に手を差し入れた。
やっぱり、そこにあるんだ…首輪。
「……」
首輪をぎゅっと握りしめた犬飼の手がバスローブから、ゆっくり、ゆっくり出てきた。
そして、僕の手に首輪がのせられた。
「ありがとう」
僕が言うと、犬飼の手がぱっと離れた。
「あぁ…」
「じゃあ、僕…とりあえず帰るね」
僕がソファから立ち上がっても、犬飼はそこから動かなかった。
僕は玄関まで歩き、さっき脱がせてもらった靴を履いた。
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