華族の悪役夫人に転生。復讐されないよう、家庭円満を目指します。

いんげん

文字の大きさ
23 / 38

お義父さま

しおりを挟む

 今日は、同じ敷地内にある、義理の両親のお屋敷に呼び出された。こちらは和風の邸宅だ。格式高い旅館にでも来た気分になる。
 
 その一室で、四角い重厚なちゃぶ台を挟んで、夫婦が並んで向かい合っている。
 座布団の上に正座する宵さま。一人だけ足がはみ出てる。

「まだ、時期尚早だと思うよ」

 お呼ばれしたパーティーに、絹子が行くかいなか家族会議の意見が別れた。

 宵さまは、「下らない時間だ。参加の必要はない」
 お義母さまは、「マナーも再教育したし、できるだけ黙っていれば良い」
 お義父さまは、反対だ。

 にこやかなお地蔵さんみたいな、お義父さま。その見た目や、柔らかい物腰に騙されてはいけない。一番、怖い人なのだ。

「だって、今、おかしいんでしょ?」

 まるで悪意など無い顔で、ぶっこんでくるタイプだ。もちろん、故意で。

「高い買い物だったのにね」

 流石に、場の空気が凍り付いている。姑さまも冷めた顔をしているし、宵さまも膝も上の拳がぎゅっと握りしめられている。

「私は、見世物にするために、婚姻したわけではありません」
 宵さまの声は、いつもよりもっと低い。
「……婚姻は、駒を進める大事な機会だよ。そんなに何度も出来ないのにさ」
 にこにこ笑って、私を見ている。
 すごいな。逆に感心してきた。
「隣を見なさいよ」
 姑さまが呆れて言った。
「え?」
「あんた、結婚で進んだの1マス程度じゃない」
 お義父さまは、婿養子だ。小さな商家を継いだのが始まりだった。
「あっ、あはは、ほんとだ。こりゃあ、言い負かされちゃったなぁ」
 足を崩し、頭を掻きながら笑う、お義父を殴りたくなってきた。なんて奴だ。姑さまを馬鹿にするな。
 私は、やはりこの男が好きになれない。

 確か、昔の栄光が忘れられず、今後色んな投資に手を出すが、失敗を重ね、その度に宵さまに失敗をなすりつける。

「今後……」
「えっ、なに?」
 宵さまが話し始めた。
 どんな展開になってしまうのか不安がよぎる。

 嫌な男だけど、宵さまは、意外と義理堅いのだ。映画と変わった未来になってきてるから、離縁とかありうるのでは……。

 復讐回避を目指してたけど。
 最近……愛着が湧いてきて困る。

「私達夫婦のことに関しては、二人で決めます。ご心配は無用です」
 暗に口を出すな、と言った宵さま。
 私としては、嬉しいけれど――お義父さまから笑顔が消えた。
「そうね。そうしなさい」
 姑さまが助け舟を出すように、賛同してくれた。
「……まぁ、たかだかパーティくらいの、女の話しは良いけど、会社の経営や出資に関しては、そうはいかないよ。私の助言が必要だ」

 お義父さまは、金だけではなく、権力や地位にも固執するタイプだ。現代なら疎まれて「名誉会長」などに追いやられる人だろうな。

「……はい」

 絶対、ただの邪魔なのに、1回飲み込む宵さまは大人だ。どうも現代人の感覚だと、一言言い返したくなる。

 くそぉ。

 実は、宵さまが会社で、嫌われてたのって、この男がしゃしゃり出てきて余計なことしてたのでは、と思えてきた。
 
 やっぱり、一発殴りたい。
 宵さまみたいに、テーブルドンしたい。

 でも、我慢。
 我慢するのよ、私!!

 気を紛らわす為に、隣の宵さまに、コッソリ手を伸ばした。向こう側は遠いので、テーブルもあるし見えないだろう。

 つん

 宵さまの太ももを突いた。ほんの少し、宵さまの目線がこちらに動いた。その後、目があっちこっち動いているのを見て、宵さまの動揺を感じ取った。

 ふふふ。

 なんだか楽しくなってきた。もはや場外となった、お義父さまは、昔の自慢を始めた。

 つん つん

「……」

 つ……

 指が捕まった。
 私の人差し指が、宵さまに掴まれた。
 ちらり、宵さまを見ても、彼はまっすぐ前を見ている。
 そして、手のひらに指が入って来て――手が握られた。

 どう、しよう。
 顔が赤くなる。
 照れてしまう。
 足がソワソワするのは、痺れたのか、恥ずかしいのか。
 宵さまの手は、大きくて、温かくて。

 ……好き。

 うおおおおお!
 何言い出したんだ、私の頭。

 私は、宵さまの手から、自分の手を抜いて、じっとお義父さまを睨みつけた。
 呪いをかけよう。
 お前は、今日、魚の小骨が喉に刺さって、四日ぬけない。

 そんな無駄な念を送っていたら、いつの間にか宵さまが、うなだれるように俯いているのに気付いた。
 お、お疲れのようだわ。

「お義父さま、すいみません! 私、お花を摘みに行ってまいりますわ」
「は? 花?」

 困惑する、お義父を呆れたように眺めながら、姑さまが「厠よ。ほら、さっさと帰りなさい」と私たちを追い払った。

 私たちの屋敷へと戻る途中。
 私は、自分と宵さまの手が気になって気になって――手を隠すように腕を組んで歩いた。
 見ると、宵さまも、おでこの前で手を組むという不自然なポーズで歩いていた。






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

愛しいあなたは竜の番

さくたろう
恋愛
 前世で無惨に処刑された記憶を持つ少女フィオナは、今世では幼い頃から番である竜族の王に保護されて塔の中で大切に育てられていた。  16歳のある日、敵国の英雄ルイが塔を襲撃しにきたが、なんとフィオナは彼に一目惚れをしてしまう。フィオナを人質にするために外へと連れ出したルイも、次第に彼女に離れがたい想いを感じ始め徐々に惹かれていく。  竜人の番として育てられた少女が、竜を憎む青年と恋に落ちる物語。 ※小説家になろう様に公開したものを一部省略して投稿する予定です。 ※全58話、一気に更新します。ご了承ください。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―

喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。 そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。 二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。 最初は手紙も返ってきていたのに、 いつからか音信不通に。 あんなにうっとうしいほど構ってきた男が―― なぜ突然、私を無視するの? 不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、 突然ルイスが帰還した。 ボロボロの身体。 そして隣には――見知らぬ女。 勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、 私の中で何かが壊れた。 混乱、絶望、そして……再起。 すがりつく女は、みっともないだけ。 私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。 「私を簡単に捨てられるとでも? ――君が望んでも、離さない」 呪いを自ら解き放ち、 彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。 すれ違い、誤解、呪い、執着、 そして狂おしいほどの愛―― 二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。 過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。

虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~

八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。 しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。 それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。 幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。 それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。 そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。 婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。 彼女の計画、それは自らが代理母となること。 だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。 こうして始まったフローラの代理母としての生活。 しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。 さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。 ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。 ※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります ※「小説家になろう」が先行公開です(第二章開始しました)

処理中です...