1 / 34
はじまり
しおりを挟む「おい、起きろ」
雨粒が浮かんでいるように舞う夜。
月も星も隠れて、部屋の中は彼が持ち込んだカンテラがなければ、何も見えない。
横たえていた体をおこし、布団から這い出る。
寒い。体に震えが走った。
枕元にあぐらをかいて座った男は外套を脱ぎ捨て、着物の前を開いた。
外套の雨がきっと畳を濡らしただろう。
「……煌一。怪我は?」
「……さっさと吸え」
僕の質問は、やはり無視された。
いつも、煌一とはあまり上手に会話できない。
僕が彼を苛つかせて終わってしまう。
モタモタしてまた怒られないように、急いで彼の元に行く。
「あっ」
腕を引かれて、彼の逞しい体にもたれかかる。
着物が少ししっとり濡れている。
長時間外にいて戦っていたからだろう。
でも、彼の体はとても温かい。
はだけた着物から左の肩が覗き、鎖骨の下の、華のあざが露出する。
能力者の証だ。
普段は青いその痣が、今は血が滲み赤くなっている。
ゴクリと喉がなる。
空腹で目眩がしそう。
彼の痣に顔を寄せて、舌を出す。
痣から溢れた血は蜜のように甘い。
「……ん……あっ……」
必死にぴちゃぴちゃと蜜をなめる。
体に熱が戻ってきた。
なめても、なめても蜜は滲む。
今日は三日ぶりの食事だ。
もっと、もっと。
僕はなめるのをやめて、唇を寄せて直接吸い始めた。
「……ん……はっ……ん」
「……っく」
美味しい。甘くて美味しい。
僕が必死で吸っていると、煌一のものが立ち上がり、太ももに当たる。
「……ふっ……ん……はっ……」
僕は、空腹を満たすために、必死で痣を吸う。
煌一が着物をめくり自分の股間を出す。
左手で僕を抱え込みながら、右手で自身を慰める。
僕のものとは比べ物にならない大きさと太さに、毎回羨望の気持ちが湧く。
「……ん……はっ……ちゅっ……」
「……っ……くそっ」
煌一の性器がみるみる大きく膨らんで、濡れ始めた。
段々、痣から滲む蜜が少なくなってきた。大分お腹もいっぱいになった。
煌一の手の動きが加速する。
見ないように食事に集中する。
最後の蜜を吸い出す。
「……んっ」
「……っく…っ!」
痣から顔を離される。一滴、蜜が流れた。もったいない。
「綺麗になめろ」
煌一の濡れた手を差し出される。
僕には拒否権なんて無い。
おずおずと彼の手を取り、指をなめる。
痣からでる血は蜜のように甘いが、これは薄くなった蜜で、あまり好きじゃ無い。
「っは……ん……」
大きな硬い手のひらの上、彼の精液がカンテラの光でオレンジ色に煌めく。
それを舌で、掬いとり飲み込む。
やっぱり美味しくない‥。
煌一が着物をただして立ち上がる。
外套を腕にかけて、カンテラを持つ。
「煌一、僕、明日は先生の所に行ってもいい?」
襖に手をかけた煌一を呼び止める。
彼は眉間に皺を寄せて振り返った。
「‥‥また倒れて周りに迷惑をかけるつもりか?」
いつもより不機嫌な低い声。
やっぱり駄目かもしれない‥けど。
「でも…少しだけでも……」
「何度も言わせるな」
ピシャリと襖がしまった。
再び部屋に沈黙が訪れた。
体の中は食事で温まったけれど、もう秋の霜月だ。布団から出ていた体がぶるっと震えた。
逃げ込むように、布団に潜り込む。
あぁ、明日は先生の下でレッスンが受けられると思ったんだけど‥‥。
仕方ない、屋敷で大人しく、レコードを聞いてから、ピアノを弾こう。
僕は明日の予定を反芻しながら眠りについた。
22
あなたにおすすめの小説
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される
水ノ瀬 あおい
BL
若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。
昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。
年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。
リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。
【BL】正統派イケメンな幼馴染が僕だけに見せる顔が可愛いすぎる!
ひつじのめい
BL
αとΩの同性の両親を持つ相模 楓(さがみ かえで)は母似の容姿の為にΩと思われる事が多々あるが、説明するのが面倒くさいと放置した事でクラスメイトにはΩと認識されていたが楓のバース性はαである。
そんな楓が初恋を拗らせている相手はαの両親を持つ2つ年上の小野寺 翠(おのでら すい)だった。
翠に恋人が出来た時に気持ちも告げずに、接触を一切絶ちながらも、好みのタイプを観察しながら自分磨きに勤しんでいたが、実際は好みのタイプとは正反対の風貌へと自ら進んでいた。
実は翠も幼い頃の女の子の様な可愛い楓に心を惹かれていたのだった。
楓がΩだと信じていた翠は、自分の本当のバース性がβだと気づかれるのを恐れ、楓とは正反対の相手と付き合っていたのだった。
楓がその事を知った時に、翠に対して粘着系の溺愛が始まるとは、この頃の翠は微塵も考えてはいなかった。
※作者の個人的な解釈が含まれています。
※Rシーンがある回はタイトルに☆が付きます。
王様お許しください
nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。
気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。
性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。
冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~
大波小波
BL
フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。
端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。
鋭い長剣を振るう、引き締まった体。
第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。
彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。
軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。
そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。
王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。
仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。
仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。
瑞々しい、均整の取れた体。
絹のような栗色の髪に、白い肌。
美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。
第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。
そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。
「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」
不思議と、勇気が湧いてくる。
「長い、お名前。まるで、呪文みたい」
その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
仮面の王子と優雅な従者
emanon
BL
国土は小さいながらも豊かな国、ライデン王国。
平和なこの国の第一王子は、人前に出る時は必ず仮面を付けている。
おまけに病弱で無能、醜男と専らの噂だ。
しかしそれは世を忍ぶ仮の姿だった──。
これは仮面の王子とその従者が暗躍する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる