22 / 34
契約関係
しおりを挟む里見大尉が討伐隊のお風呂を用意し、貸してくれた。
誰も居ないのは人払いしてくれたのかな?
その後も着物を用意してくれたり、甲斐甲斐しくお世話をしてくれた。
里見大尉の着物は長すぎて、腰あたりがダボダボになってしまう。
色々な話をしてくれて面白いし、気さくで楽しい人だった。
煌一が好きになるのも分かる気がする。
綺麗で、優秀で、良い人で…非の打ち所がない。
「里見大尉は、どんな方が好きですか?」
帰りの自動車の中で切り出してみた。
「えっ!?どんな?どうでしょうか?灰に家族を奪われてから、灰のことばかり考えて、隊に入ってからはいつ死んでもおかしくない仕事なので、恋愛など考えたことがありません。」
里見大尉は困った顔をして答えてくれる。
そういえば、華も蝶も男子しかいないから、つい男性が恋愛の基準だけど、里見大尉は人間だから女性とお付き合いしたり、結婚したりしてもおかしくないはず。
でも、そうか危険が多すぎるお仕事だから相手を思うと恋愛も、その気になれないのか。
きっとこれからは煌一が守ってくれる。
だから恋愛する気になるかも。必死に助けられて好きになるかも。
今は煌一の片思いでも、きっと好きになる……。
「煌一は凄く格好いいし強いから……これからは、大丈夫です。朔夜兄さんも、深澤中佐もいるし…」
隣に座る里見大尉の顔をみれず、もじもじと自分の手を眺めて話す。
「……そうですね、煌一様は凜々しくお強いですよね。これじゃあ隊長の勝ち目は薄いのかな…」
「え?」
「いいえ、なんでもありません。あさひ様は煌一様がお好きですか?」
ドキンと胸がなった。
僕は……どうなんだろう?
僕にとって煌一は特別な存在で……里見大尉のことが好きだと聞いて、いやだなと思ったけど。
「あの!大切な人に好きな人ができて、それが嫌だなぁって思うのは好きだって事ですか?」
顔を上げて里見大尉につめより手を掴んだ。
里見大尉が赤い顔をしてビックリしている。
「……どうでしょうか?例えば…あさひ様は、その方と触れ合いたいと思いますか?抱きしめたり、接吻をしたり…」
煌一と接吻…。
さっき深澤中佐としたように?
抱きしめられたりは、いつも蜜を吸うのにしてるし、もっと凄いことをしている。
でも、煌一は僕の事が好きじゃ無いけど、華と蝶だから色々している。
人間のその気持ちとは違うのかも。
「僕は蝶だから……華とするから……特別そう思うか……よく分からない……深澤中佐とも嫌じゃ無かったし…」
「そうですか、まだ脈ありか……」
里見大尉が何やら呟いた。
「え?」
「私も蝶の方の考えや思いは、なかなか推測できませんので、同じ蝶の方に聞かれては?」
どうだろう?
キヨ様はお坊様だから誰かを特別にしていないし…
伊織さんは……どうなのかな?
特別を探したいみたいだけど……
難しい。
「……はぁ」
思わずため息が出た。
「あさひ様、お屋敷に着きましたよ」
外を見ると、屋敷の前に停車しており、丁度煌一がでてきた。
煌一と目があって、慌てて掴んでいた里見大尉の手を離した。
「それでは、私はこれで失礼します。」
里見大尉が反対側のドアからでて、煌一に会釈すると立ち去っていった。
煌一が自動車に近づき、ドアを開けた。
怒っている。
今日も、怖い顔している。
きっとまた怒られる。
里見大尉の手を握っているのを見られたから?
煌一の里見大尉を触ったから?
「おい、降りろ」
有無を言わさない煌一の命令に従い、彼の手を掴んで自動車から降りた。
「あのね……煌一……今のは……」
「深澤の所に行ったと聞いたが、中々帰って来ないと思ったら……お前は人間にまで手を出すのか?」
降りるなり手を引かれ歩き出したけれど、やっぱり怒られた。
「そんな!?違うよ、里見大尉は、そんなんじゃないよ!」
「どうだか。お前から里見の匂いと深澤の匂いがプンプンするぞ」
それは、深澤中佐の蜜をすって、里見大尉の着物を借りたから……。
自分が好きな人の着物を、他人が来ていたら嫌なのかな?
たとえば、里見大尉が煌一のお気に入りの藍色の着物とか着ていたら……
それは、嫌かも……
脱ごう。
部屋に帰ったら直ぐに脱いで煌一に帰そう。
「ごめんなさい」
素直に謝る。
不可抗力だけど、嫌な思いをさせてしまった。
煌一が立ち止まり、振り返った。
「おまえ……謝るような事をしてきたのか!?蜜を吸うだけじゃ無く!?それだけでも業腹なのに!?」
煌一が僕の着物を掴んで怒鳴る。
あまりの苛烈な怒りに、恐ろしくて震え、涙が出てくる。
何か言わないと、でも怖くて喋れない。
どうして、そんなに怒っているの?
僕が深澤中佐の蜜を吸うのに、里見大尉も同席して何かしたと思っているの?
「くそっ!!お前が蝶で無ければ!!」
それは……僕が蝶じゃ無くて、里見大尉が蝶だったらよかったって事……。
もうこんな僕の面倒を見るのが嫌になったの?
でも、僕も蝶じゃなかったら、煌一のお荷物じゃなくて……少しくらいは役にたてた?
良い友人になれたのだろうか?
「僕……煌一の蝶じゃなかったら良かった」
そうしたら、もっと楽しく二人の時間を過ごせたかもしれない。
「…お前……」
煌一の顔が見たこと無い表情をしている。
驚いているような……苦しそうな。
「もう……俺は用済みか?朔夜と新しい華が手に入ったから」
用済み?
そんなの煌一の方じゃないか。
好きな人が出来たからって僕を邪魔にするんだから。
「……もう、離して!痛い」
僕が叫ぶと、煌一が慌てて手を離した。
「ねぇ…なんだか凄い楽しい話し合い中だね」
玄関前で言い争っていた為か、伊織さんが出てきた。
今日も緩く波打つ長い髪が美しく、蝶の柄の着物が妖艶で色気に溢れている。
「伊織…」
「あさひが要らないなら私が煌一の蜜を吸ってあげるよ……」
煌一が伊織さんに蜜を吸われる??
僕の胸にドロドロとした気持ちが沸いてくる。
嫌だ!
「断る。お前に吸われるくらいなら死んだ方がましだ」
「何ソレ、凄い失礼じゃない?親切心で言ってるのに。ねぇ、あさひ。もう煌一の蜜は吸いたくないんでしょ?」
伊織さんが煌一の逞しい腕にしなだれかかる。
二人の姿は、里見大尉とは別に絵になる。
あぁ……僕…煌一の事が好きなのかも。
嫌だ、伊織さんの所に行かないで欲しい。
人間の里見大尉が好きだというのは、しょうが無いけど、蝶を選ぶのに僕以外にしたら嫌だ。
「煌一は僕の華だから伊織さんにはあげません!!」
「…………」
思ったよりも大きな声が出た。
どうしよう、凄く……わがままな事叫んだ!!
「なんだよ!面白くない!とたんに蝶みたいなこと言い出して!」
伊織さんが怒って行ってしまった。
二人で残されてとても気まずい。
煌一怒っているよね?
凄い失礼なこと言ったよね。煌一の顔が見られない。
「……あさひ……」
「っ!?ご…ごめん……んっん!」
煌一が僕の顎を掴んで上向かせ、唇を合わせた。
端正な煌一の顔が目の前にある。
「お前がどうであろうと、俺の蝶はお前だけだ……」
煌一が、唇を離して語る。
えぇっと……蝶は、僕で良いって事かな?
そうだよね……華である以上、蝶が居た方が都合が良いだろうし。
伊織さんの事は嫌みたいだし、キヨ様は僕らには親みたいなものだからね……
「……うん」
僕も蝶としてでも、煌一の特別が良い。
……好きになって貰えなくても。
「俺は、お前の華として最高の役目を果たす」
煌一が再び僕に口づけた。
「僕も……煌一の良い蝶になりたい」
煌一にとって契約のような関係でも…
21
あなたにおすすめの小説
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される
水ノ瀬 あおい
BL
若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。
昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。
年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。
リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。
【BL】正統派イケメンな幼馴染が僕だけに見せる顔が可愛いすぎる!
ひつじのめい
BL
αとΩの同性の両親を持つ相模 楓(さがみ かえで)は母似の容姿の為にΩと思われる事が多々あるが、説明するのが面倒くさいと放置した事でクラスメイトにはΩと認識されていたが楓のバース性はαである。
そんな楓が初恋を拗らせている相手はαの両親を持つ2つ年上の小野寺 翠(おのでら すい)だった。
翠に恋人が出来た時に気持ちも告げずに、接触を一切絶ちながらも、好みのタイプを観察しながら自分磨きに勤しんでいたが、実際は好みのタイプとは正反対の風貌へと自ら進んでいた。
実は翠も幼い頃の女の子の様な可愛い楓に心を惹かれていたのだった。
楓がΩだと信じていた翠は、自分の本当のバース性がβだと気づかれるのを恐れ、楓とは正反対の相手と付き合っていたのだった。
楓がその事を知った時に、翠に対して粘着系の溺愛が始まるとは、この頃の翠は微塵も考えてはいなかった。
※作者の個人的な解釈が含まれています。
※Rシーンがある回はタイトルに☆が付きます。
王様お許しください
nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。
気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。
性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。
冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~
大波小波
BL
フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。
端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。
鋭い長剣を振るう、引き締まった体。
第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。
彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。
軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。
そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。
王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。
仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。
仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。
瑞々しい、均整の取れた体。
絹のような栗色の髪に、白い肌。
美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。
第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。
そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。
「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」
不思議と、勇気が湧いてくる。
「長い、お名前。まるで、呪文みたい」
その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
仮面の王子と優雅な従者
emanon
BL
国土は小さいながらも豊かな国、ライデン王国。
平和なこの国の第一王子は、人前に出る時は必ず仮面を付けている。
おまけに病弱で無能、醜男と専らの噂だ。
しかしそれは世を忍ぶ仮の姿だった──。
これは仮面の王子とその従者が暗躍する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる