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はじまり
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おばあさんが、目薬を飲んでいました。
しかし、訪問介護ヘルパー、塚田 メイは動じない。よくある事だ。
「田中さん、こんにちは。訪問介護サービス、メイドのみやげがら来ました、塚田です。お邪魔しまーす」
団地の狭い玄関先から、室内のコタツに座っている利用者のところまで、彼女は道なき道を切り開く。点々と落ちているテッシュは、ゴミ箱に、シュート。入らない。仕方なく追いかけて、ダンク。
衣類を拾い、新体操のリボンのようにクルクルと回しながら、一か所に纏める。
五メートル先が遠いがメイはノリノリでステップを踏んでいる。
彼女は、所内でも一風変わったヘルパーだった。よく言えば気負わない、悪く言えばガサツ。よく言えば、誰も見捨てない。悪く言えばお節介。他所でお断りされた案件も、一手に引き受けている。
「ちゅ、ちゅー」
「田中さん、お腹すいた? それとも口さみしい感じ?」
「一人は気楽よ」
二人の会話は微妙に嚙みあわない。
おばあさんは、再び目薬を吸い始めた。
メイには、目薬が、ちゅーちゅーアイスのように見えてきた。そう思うと、妙に可愛らしい。
おばあさんこと、田中さんは、御年83歳。ご主人は、十年以上前に亡くなり、一人娘は遠く離れた場所で暮らしている。一年前に骨折をして足腰の弱った彼女がエレベーターのない団地の四階で暮らすのは、苦労が多い。故に、外に出なくなり、身体機能と認知機能は急速に悪化している。しかし、彼女は自宅での生活を強く希望している。
高齢者の中には、思い入れのある自宅でに暮らしたいという人も多い。そして、もう少し症状が進むと、子供のころ暮らした思い出の中の家に帰りたいという。
「もう、お母さんいい加減にして。元気だったあの頃には戻らないんだから」「いい加減あきらめて、引っ越そう。うちの近くのホームとか色々探してるから」娘さんの悲痛な訴えが、メイの耳に残っている。
シングルマザーで仕事と家事をこなしながら、大学生と高校生のお子さんが4人いるらしい。もう大きいと言えばそれまでだが、雑事は沢山ある。そこに遠方に住む高齢の母親の世話。メイは、想像するだけで眩暈がしそうだった。
「今日もドラマ見る?田中さんのお陰で中国時代劇ロマンスに詳しくなったよ」
部屋の使い終わった食器を集めながら、テレビのリモコンを操作し、田中娘が契約している動画配信サービスをつけた。
そして画面にくぎ付けになった隙に、目薬を預かった。
「この若い子たち皆、綺麗な顔してるわよねぇ」
「本当ですよね。でも、大体、最後皆殺しになるのなんでなんですかね。しかも、オープニングの映像で大体ネタバレしてくるし。それが親切設計なんですか?あと、あのよく女性がビーシャーって叫んでるの何て言ってるの?」
「あー、あれね。何だったかしら?」
「あ、それと両手をペンギンみたいにすると、絶対飛びますよね。昔の中国の人って飛べたんですかね」
「それは、あなた。無理でしょう。馬鹿なの?」
冗談で言ったら。至極真面目な顔で返され、笑い上戸のメイは笑いが止まらなくなった。
洗い物スポンジから、泡が増産されていく。
「駄目、笑いすぎて腹筋われちゃう。あー、お腹痛い。ひー、あ、じゃあ、そうだ。あれ今度やりますか。お風呂のお花。湯舟にこれでもかってお花の花びら入れるじゃないですか」
「まぁ、素敵ね」
「事務所の隣の葬儀屋さんにお花よく貰うんですよね」
「棺桶風呂ね」
「極楽、極楽って!まだ逝かないで下さいよ。田中さんは、私の数少ない平和な利用者さんなんだから。高齢者の自虐ボケ強すぎです。あっ、ボケって認知の方じゃなくて漫才の方で」
「あなた、よく失礼な人って言われない?」
「なんで知ってるんですか」
「何となくね。あっ、静かにして。良いシーンだから」
「はーい」
一件にかけられる時間は、大体30分。メイは、手早く用事をすませ、部屋を見回した。
「……なに?」
妙に派手な金の箱が目に入った。
一度気になると、今まで目に入らなかったことが不思議なくらいに存在感のある箱だった。
ティッシュ箱くらいの箱は、黒い光沢のある漢字が書かれている。『投胎 愿望 手镯』色々と書かれているが、ピンとこなかった。
「田中さん、これ……なんですか?今まで無かったですよね」
「ああ、それね。こないだ買ったの。お家に来てくれた細長い若いお兄さんが、願いが叶う霊験あらたかな物だっていうの」
「んー!」
思わず、目をひん剥いたメイだったが、どうどう、と自らを落ち着かせた。
「三千年前だか何だかのお墓から持って来たんですって」
「えっ、墓泥棒? じゃなくて。えーっと、ちなみにおいくらくらい……」
「……」
沈黙し、目を伏せる相手に、メイの鼓動が粗ぶった。
どっこ、どっこ、馬のように走り出す心臓。
テレビで流れる馬に乗って走るヒーローが「ちゃー、ちゃー」と叫んでいる。
「ちょっと、見せてくださいねぇ」
「……」
箱を開く。
お目見えする、赤いベロア素材の上に鎮座する、淡い緑色の翡翠の腕輪。
メイの目線が、田中に注がれた。
「五千円くらい?」
「……」
特別高価じゃない買い物なら、大騒ぎする案件ではない。
怪しい訪問販売が来ていたので注意してくださいと家族に連絡するくらいだ。
「んー、奮発して一万円で!」
「……」
田中の小さな背中がもっと丸くなて、更にコタツに埋まっていく。
「まさか、三万くらい?」
「そんなに安くなかった!箪笥のお金全部出したもの!」
「それって幾らですかー⁉」
「封筒パンパンよ!帯ついてた。もう、知らない!」
「あー、すいません。わかりました。私が娘さんに……とか言ってると遅い?これって先週は無かったから、買って一週間くらい?クーリングオフできる?名刺とか無いですか?これを買った人の素性がわかるものは」
「……あ、底に保証書が入ってるって」
烈火のごとく、箱を漁り、邪魔だった腕輪をはめて、底を漁った。
「あった!」
おそらく、百万もしたであろう腕輪の保証書はペラペラのコピー用紙で、開くとガサガサ音をたてた。
【政府御用達。来世の望み叶う、神秘の秘宝。始皇帝の墓から来た。翡翠の腕輪。これで来世は安泰】
「なんじゃこりゃ!」
「思い出した。この腕輪売ってくれた人、モヤシみたいに細長いお兄さん。今度駅前のデパートで物産展にも出るって」
「どういうこと⁉ え、駅前のデパートって、今日店じまいですよね⁉ えっちょ……あ、とりあえず、行ってきます!」
メイは、走り出した。
持ってきたリュックを背負いながら、団地の四階から駆け下りた。
途中、スマホを取り出して、事務所に電話を掛けた。
『はい、こちら。介護でお困りの方に真心をお届けします、訪問介護のメイドの土産、伊藤がお伺いします』
「あのー! 塚田ですけど、あれです!大変なんです。モヤシが……デパートで。でも今日でデパートおしまいだし。物産展で見つけないと!百万なんです!」
電話をとった新人パート、伊藤の脳内は混乱を極めた。
電話口を離したのか、伊藤の小さな声が聞こえてくる。
『所長!多分、塚田さんなんですけど、何言ってんのか全然わかりません。デパートがどうだとか……』
その間にメイは地上に降り立ち、乗って来たママチャリのカゴにスマホを投げ込んだ。
そして、力いっぱいペダルをこぎ出した。
「ちゃー、ちゃー!」
馬にまたがるヒーローのように、叫び、ハンドルを叩くと、着けてきてしまった腕輪がガツガツと音をたてた。
『あー、塚田ちゃんまた暴走しはじめちゃった?』
所長の声が、遠くに聞こえた。
『塚田さん、聞こえますか?あの、業務に戻ってくれますか?』
『まぁ、ちょっと放っておいてもいいよ』
『え、だって、皆さん予定パンパンなのでは?』
『塚田ちゃんは別。特別な利用者さんの所ばっかりだから。今日もこのあと、きっと茶色の粘土のお掃除だし。ちょっとくらいデパート行ってもよし』
『は、はぁ』
『塚田ちゃん、聞こえる? くれぐれも交通事故には気を付けて』
「はーーい!!」
五十年前に建った団地の道は、ぼこぼこしている。自転車が跳ねる。
『……あの子のブレーキ役がいると良いんだけどねぇ』
電話が切れる前、所長がつぶやいた。
お節介で、猪突猛進。こうと決めたら止まらない。そんな彼女を今日まで上手く使っている所長は、メイの事を親のように心配していた。
そして、その心配は見事に的中していた。
「ブレーキが、効かない!! 自転車が止まらないい!」
長い坂を自転車はノーブレーキで駆け下りていく。
目の前に見えるフェンスの先。
その3メートル直下は、線路だ。
「ちゃーーー! て何だ! こうなったら、軽功!」
説明しよう。
軽功とは、中国時代劇ドラマでよく出てくる技である。
武功を極めたキャラが、ひと蹴りで屋根の上に軽々と飛び乗る、いわば飛行術のようなものだ。
その際には、彼らの腕は総じてペンギンのようなポーズを取る。
あれはワイヤーで釣られる際にバランスが取れるカッコイイポーズ、なのだろうか。
腐敗したフェンスは、いとも簡単に崩れ落ち。
自転車は宙を舞い。
メイは、ハンドルから手を離し、軽功のポーズを取った。
「飛べろぉぉ!」
彼女の背に、ワイヤーは無い。
しかし、腕輪がキラリと光り、その光は蜘蛛の糸のように天へと届いた。
はたして、田中の買った腕輪は紛い物だったのか?
メイの来世は、安泰なのか。
しかし、訪問介護ヘルパー、塚田 メイは動じない。よくある事だ。
「田中さん、こんにちは。訪問介護サービス、メイドのみやげがら来ました、塚田です。お邪魔しまーす」
団地の狭い玄関先から、室内のコタツに座っている利用者のところまで、彼女は道なき道を切り開く。点々と落ちているテッシュは、ゴミ箱に、シュート。入らない。仕方なく追いかけて、ダンク。
衣類を拾い、新体操のリボンのようにクルクルと回しながら、一か所に纏める。
五メートル先が遠いがメイはノリノリでステップを踏んでいる。
彼女は、所内でも一風変わったヘルパーだった。よく言えば気負わない、悪く言えばガサツ。よく言えば、誰も見捨てない。悪く言えばお節介。他所でお断りされた案件も、一手に引き受けている。
「ちゅ、ちゅー」
「田中さん、お腹すいた? それとも口さみしい感じ?」
「一人は気楽よ」
二人の会話は微妙に嚙みあわない。
おばあさんは、再び目薬を吸い始めた。
メイには、目薬が、ちゅーちゅーアイスのように見えてきた。そう思うと、妙に可愛らしい。
おばあさんこと、田中さんは、御年83歳。ご主人は、十年以上前に亡くなり、一人娘は遠く離れた場所で暮らしている。一年前に骨折をして足腰の弱った彼女がエレベーターのない団地の四階で暮らすのは、苦労が多い。故に、外に出なくなり、身体機能と認知機能は急速に悪化している。しかし、彼女は自宅での生活を強く希望している。
高齢者の中には、思い入れのある自宅でに暮らしたいという人も多い。そして、もう少し症状が進むと、子供のころ暮らした思い出の中の家に帰りたいという。
「もう、お母さんいい加減にして。元気だったあの頃には戻らないんだから」「いい加減あきらめて、引っ越そう。うちの近くのホームとか色々探してるから」娘さんの悲痛な訴えが、メイの耳に残っている。
シングルマザーで仕事と家事をこなしながら、大学生と高校生のお子さんが4人いるらしい。もう大きいと言えばそれまでだが、雑事は沢山ある。そこに遠方に住む高齢の母親の世話。メイは、想像するだけで眩暈がしそうだった。
「今日もドラマ見る?田中さんのお陰で中国時代劇ロマンスに詳しくなったよ」
部屋の使い終わった食器を集めながら、テレビのリモコンを操作し、田中娘が契約している動画配信サービスをつけた。
そして画面にくぎ付けになった隙に、目薬を預かった。
「この若い子たち皆、綺麗な顔してるわよねぇ」
「本当ですよね。でも、大体、最後皆殺しになるのなんでなんですかね。しかも、オープニングの映像で大体ネタバレしてくるし。それが親切設計なんですか?あと、あのよく女性がビーシャーって叫んでるの何て言ってるの?」
「あー、あれね。何だったかしら?」
「あ、それと両手をペンギンみたいにすると、絶対飛びますよね。昔の中国の人って飛べたんですかね」
「それは、あなた。無理でしょう。馬鹿なの?」
冗談で言ったら。至極真面目な顔で返され、笑い上戸のメイは笑いが止まらなくなった。
洗い物スポンジから、泡が増産されていく。
「駄目、笑いすぎて腹筋われちゃう。あー、お腹痛い。ひー、あ、じゃあ、そうだ。あれ今度やりますか。お風呂のお花。湯舟にこれでもかってお花の花びら入れるじゃないですか」
「まぁ、素敵ね」
「事務所の隣の葬儀屋さんにお花よく貰うんですよね」
「棺桶風呂ね」
「極楽、極楽って!まだ逝かないで下さいよ。田中さんは、私の数少ない平和な利用者さんなんだから。高齢者の自虐ボケ強すぎです。あっ、ボケって認知の方じゃなくて漫才の方で」
「あなた、よく失礼な人って言われない?」
「なんで知ってるんですか」
「何となくね。あっ、静かにして。良いシーンだから」
「はーい」
一件にかけられる時間は、大体30分。メイは、手早く用事をすませ、部屋を見回した。
「……なに?」
妙に派手な金の箱が目に入った。
一度気になると、今まで目に入らなかったことが不思議なくらいに存在感のある箱だった。
ティッシュ箱くらいの箱は、黒い光沢のある漢字が書かれている。『投胎 愿望 手镯』色々と書かれているが、ピンとこなかった。
「田中さん、これ……なんですか?今まで無かったですよね」
「ああ、それね。こないだ買ったの。お家に来てくれた細長い若いお兄さんが、願いが叶う霊験あらたかな物だっていうの」
「んー!」
思わず、目をひん剥いたメイだったが、どうどう、と自らを落ち着かせた。
「三千年前だか何だかのお墓から持って来たんですって」
「えっ、墓泥棒? じゃなくて。えーっと、ちなみにおいくらくらい……」
「……」
沈黙し、目を伏せる相手に、メイの鼓動が粗ぶった。
どっこ、どっこ、馬のように走り出す心臓。
テレビで流れる馬に乗って走るヒーローが「ちゃー、ちゃー」と叫んでいる。
「ちょっと、見せてくださいねぇ」
「……」
箱を開く。
お目見えする、赤いベロア素材の上に鎮座する、淡い緑色の翡翠の腕輪。
メイの目線が、田中に注がれた。
「五千円くらい?」
「……」
特別高価じゃない買い物なら、大騒ぎする案件ではない。
怪しい訪問販売が来ていたので注意してくださいと家族に連絡するくらいだ。
「んー、奮発して一万円で!」
「……」
田中の小さな背中がもっと丸くなて、更にコタツに埋まっていく。
「まさか、三万くらい?」
「そんなに安くなかった!箪笥のお金全部出したもの!」
「それって幾らですかー⁉」
「封筒パンパンよ!帯ついてた。もう、知らない!」
「あー、すいません。わかりました。私が娘さんに……とか言ってると遅い?これって先週は無かったから、買って一週間くらい?クーリングオフできる?名刺とか無いですか?これを買った人の素性がわかるものは」
「……あ、底に保証書が入ってるって」
烈火のごとく、箱を漁り、邪魔だった腕輪をはめて、底を漁った。
「あった!」
おそらく、百万もしたであろう腕輪の保証書はペラペラのコピー用紙で、開くとガサガサ音をたてた。
【政府御用達。来世の望み叶う、神秘の秘宝。始皇帝の墓から来た。翡翠の腕輪。これで来世は安泰】
「なんじゃこりゃ!」
「思い出した。この腕輪売ってくれた人、モヤシみたいに細長いお兄さん。今度駅前のデパートで物産展にも出るって」
「どういうこと⁉ え、駅前のデパートって、今日店じまいですよね⁉ えっちょ……あ、とりあえず、行ってきます!」
メイは、走り出した。
持ってきたリュックを背負いながら、団地の四階から駆け下りた。
途中、スマホを取り出して、事務所に電話を掛けた。
『はい、こちら。介護でお困りの方に真心をお届けします、訪問介護のメイドの土産、伊藤がお伺いします』
「あのー! 塚田ですけど、あれです!大変なんです。モヤシが……デパートで。でも今日でデパートおしまいだし。物産展で見つけないと!百万なんです!」
電話をとった新人パート、伊藤の脳内は混乱を極めた。
電話口を離したのか、伊藤の小さな声が聞こえてくる。
『所長!多分、塚田さんなんですけど、何言ってんのか全然わかりません。デパートがどうだとか……』
その間にメイは地上に降り立ち、乗って来たママチャリのカゴにスマホを投げ込んだ。
そして、力いっぱいペダルをこぎ出した。
「ちゃー、ちゃー!」
馬にまたがるヒーローのように、叫び、ハンドルを叩くと、着けてきてしまった腕輪がガツガツと音をたてた。
『あー、塚田ちゃんまた暴走しはじめちゃった?』
所長の声が、遠くに聞こえた。
『塚田さん、聞こえますか?あの、業務に戻ってくれますか?』
『まぁ、ちょっと放っておいてもいいよ』
『え、だって、皆さん予定パンパンなのでは?』
『塚田ちゃんは別。特別な利用者さんの所ばっかりだから。今日もこのあと、きっと茶色の粘土のお掃除だし。ちょっとくらいデパート行ってもよし』
『は、はぁ』
『塚田ちゃん、聞こえる? くれぐれも交通事故には気を付けて』
「はーーい!!」
五十年前に建った団地の道は、ぼこぼこしている。自転車が跳ねる。
『……あの子のブレーキ役がいると良いんだけどねぇ』
電話が切れる前、所長がつぶやいた。
お節介で、猪突猛進。こうと決めたら止まらない。そんな彼女を今日まで上手く使っている所長は、メイの事を親のように心配していた。
そして、その心配は見事に的中していた。
「ブレーキが、効かない!! 自転車が止まらないい!」
長い坂を自転車はノーブレーキで駆け下りていく。
目の前に見えるフェンスの先。
その3メートル直下は、線路だ。
「ちゃーーー! て何だ! こうなったら、軽功!」
説明しよう。
軽功とは、中国時代劇ドラマでよく出てくる技である。
武功を極めたキャラが、ひと蹴りで屋根の上に軽々と飛び乗る、いわば飛行術のようなものだ。
その際には、彼らの腕は総じてペンギンのようなポーズを取る。
あれはワイヤーで釣られる際にバランスが取れるカッコイイポーズ、なのだろうか。
腐敗したフェンスは、いとも簡単に崩れ落ち。
自転車は宙を舞い。
メイは、ハンドルから手を離し、軽功のポーズを取った。
「飛べろぉぉ!」
彼女の背に、ワイヤーは無い。
しかし、腕輪がキラリと光り、その光は蜘蛛の糸のように天へと届いた。
はたして、田中の買った腕輪は紛い物だったのか?
メイの来世は、安泰なのか。
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