25 / 33
チーロ、ナンパに行く
しおりを挟む「ぐらぐら…」
僕の頭の中で、巨大な渓谷の間にかかる大きな吊り橋が、強風に揺られている。
「ぐらぐら…」
そこを渡る、僕…うわぁ…超怖い! いつ吹き飛ばされても不思議ではない。
すごい馬鹿みたいに震えながら吊り橋のロープにしがみついて、もう前にも進めず、後ろにも戻る事が出来ない場所で、鼻水ながしながら、ひぃいいと言っている。
そんな、僕の元に颯爽とやって来て、優しく抱きしめて、前に進もうとしてくれるオルニス。
包み込んでくれる逞しい体に、少し切れ長な秀麗なお顔。そして何より、僕を見つめる…熱い眼差し。
トゥクン
高鳴る僕の胸。
えっ…コレは何ですか?
もしかして…恋?
心臓がドキドキして、ちょっと苦しい。
これは…恋……
「じゃない!そうじゃない!これは…」
『萌え萌え、ダーリンと私のラブ、ぐらぐらブリッジ』でやっていたアレだ。
恋の吊り橋効果音…ドドン…ドドン…あっ、これ高架下の効果音だ。
とにかく、これは恋じゃなくて…なんかそういう、心理的な異常! だってオルニスって僕のお兄さんだし!
気の迷い! 駄目だ、僕。吊り橋のアッチ側に渡っちゃ駄目。
何とか、元来た道に引き返さないと!
そう…その為には、何が必要か…それは…
「チーロは、おんなこのを探しに行くみたいですからね」
僕はお出かけの支度を一人ですませ、若干緊張して言葉がいつもよりおかしくなりながら言った。だって恥ずかしいじゃないか、兄に「僕、今から恋を探しに行ってきます」って。
まぁ、今まで恋なんてクラスのマドンナの斉藤さん可愛いなとか、そのレベルですし。外を歩いただけで恋が始まるなんて甘いことは考えてません。
いいんです、ほんのりと片思い出来る、あぁ…素敵だなあと思える相手に出会えれば、僕の目が覚めるはず!
かわいいは、全てを解決してくれるはず!
でも、この世界…美醜逆転しているから…僕は相手を可愛いと思っても、相手は現在の僕の容姿は「うわ…キモい」と思われてしまうけど…。
「おんなこの…」
甘い微笑みで僕を見守っていたオルニスが、キョトンとした顔で呟いた。
「女の子でしょうか…」
アガメルが僕の言いたいことを通訳してくれた。
「そう、そうです。チーロは、女の子を見て来ます。行ってきます!」
声に出して言うと、何だかチャラ男か、変態のどちらかだな…。
色々聞かれる前に、脱出しようと早々に部屋を出る。
「待て!チーロ。何だか分からないが、危険だ。俺も行く」
閉めようとした扉は、オルニスの逞しい腕で押し返された。
「間に合ってます!」
誰がナンパ的な活動に保護者同伴で行くっていうの。
僕は、オルニスの返事を待たずに、走り出した。
邪魔になる長い髪はアップにして、羽根と一緒にフード付きケープで隠してある。
パッと見は、女性か少年だろう。
走りだして、宿の外まで出て、何だかふと背後に気配を感じて振り返った。
周囲の人々が何だかザワザワとしている気がするけど…気のせいかな?
僕は。フードを目深に被りなおして、足を進めた。
「……」
オルニスとアガメルと出かけると、明らかに衆人の注目を集めるけど、今、僕に注目する人は居ない。
あぁ、そうそう…これが普通の感覚だよね。彼らは目立ち過ぎる。
それにしても、何処へ行こうか。
女の子の多い場所って何処? 日本だったら、都心のファッション系のお店は女の子だらけだけど、この世界も洋服屋さんとかは、そんな感じ? それとも、安いオシャレ系カフェとか?
まさか…まさか……いや、行かないけど……花街みたいな店があったり?
僕の手のひらに汗が滲む。
そんな事を考えながら街を歩いていると、噴水の前のベンチで、推定十代後半の女の子が二人、何かの紙を見ながら、キャッキャとおしゃべりをしている。
特別美少女ではないけど、生き生きとした笑顔が可愛くて、元気な二人組だ。
何をそんなに盛り上がっているのか、僕は興味をそそられて、彼女たちの近くへ足を進めた。
「ホント美しさの権化!」
「もやは人間じゃないからね!もう…眼福…」
「…この絵姿に家の手伝いで貰ったお金全て使ったけど…良い買い物だったよね…」
これは…もしや、この世界のアイドルに盛り上がる少女達の姿では?
「あぁ…格好いい……」
「本当に素敵」
この世界の美形!
とても興味ある。
凄いゴツい、顔まで筋肉みたいなタイプかな?それとも、こう…ふくよかな、富がある感じかな?
僕は、そっと彼女たちの座るベンチの斜め後ろに回った。ちらっと。ちらっとだけ見せてい
ただければ幸いです…。決して…変態ではないので…許して欲しい。
「……えぇ!」
102
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~
荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。
弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。
そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。
でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。
そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います!
・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね?
本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。
そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。
お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます!
2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。
2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・?
2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。
2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる