神様のひとさじ

いんげん

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二人の始まり 【完結】

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「ゆらゆらして、気持ち悪い」
「それは、船酔いだ」
 海岸沿いにあった洞窟には、かつての小型漁船の様な船が隠されていた。

 アダムが修繕をしていたようで、船は問題なく動いた。

「これは、いつ、何処につくの?」

 ラブは、操舵するヘビの直ぐ近くにしゃがみ込んで、長い脚にしがみ付いていた。

「残された海図に描かれているのは、違うコロニーの場所だろう。そこへ向かっている。恐らく明日には到着する。それまで、この燃料が持てばな」
「えー、もっと早くが良い。もう、フラフラだよ」
 立ち上がったラブは、まだ見ぬ陸地を探した。

「立つな、落ちるぞ」
 ヘビが、腕を伸ばしてラブを抱き寄せた。

「えへへ、ヘビに抱っこされると、気持ち悪いの少しましだよ」
「気のせいだ」
「それしても、お腹空いたね。もうお魚は飽きたよ。お口、寂しいよ」
「……すまない。急いでいるとはいえ、無策だった」
「しかたないよ、私達、殺人鬼に追われてたんでしょ?」
「そこまでは言っていない」

「ごはん、無いけど。ラブのお口は、ヘビがチューすれば寂しくないよ」
 ラブは、口を突き出した。

「……断る」
「どうして? ヘビ私の事好きなんでしょ?」
「好きだ」

 ヘビは、真っ直ぐ海を見ながら答えた。ラブは、その答えに気を良くして、満足げに笑いながら、ヘビの胸に頭を擦りつけた。

「じゃあ、私達、繁殖はいつするの?」
「……出会って三年はない」
「何で⁉」

「まずは、手を繋いだり、抱きしめたり、簡単な身体接触のみだ。に、二年目になれば、口付けなどに進行する」
「ラブ、最後まで行く覚悟あるんだけど」
 不満そうなラブが、ヘビを見上げた。

「俺には、俺達が繁殖に成功した際に、その家族を守る基盤を作る義務がある」
「……なんか、ラブ……ヘビの義務嫌い」
「……可及的速やかに、整えることを努力する。俺が、そうしたいからだ」
 ヘビの手が、ぎこちなく、ラブの髪を撫でた。
「ラブも、そうしたいから、一緒に頑張るね!」
「ああ」

「ヘビ、大好き」

 大きな波が、船を揺らした。
 見つめ合う二人の顔が近づき、唇が触れあった。

 ラブは、幸福感に満たされ、顔をくしゃくしゃにして笑うと、少しイタズラな顔をした。

「ねぇ、今、二年目になった?」
「……体感的にな」
 ヘビは、ラブから顔を逸した。

「よし、じゃあ、陸に着く頃には、三年目だね」
 ラブは、指を3つ立てた。

「……いや、三日目だ」
「ええー、戻ってるよ」

「本当に、行ったり来たりだ。お前とは」

 微笑むヘビに、ラブは首をかしげ、まぁ良いかと、ヘビの心臓の鼓動に耳を澄ませた。


(良かった、私の男さんには心臓が入っていた)


 
 船の甲板には、コロコロと赤い実が転がった。












END
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