モラハラの婚約者がいたけど、イケメン実業家に言い寄られたので婚約破棄させてもらいます。

3話 それでは早速ですが婚約破棄させて頂きます！

　ロバートさんと話して打ち合わせをしてから数日後。
この日はちょうど両親とキールが揃う日である。
つまり私の意思表明をするのにうってつけの日なのだ。

「いやあ、キールくんが娘と結婚してくれるなんて嬉しいよ」
「本当よね。ソフィアには勿体ないぐらいの好青年よ」
「いやあ、そんなに歓迎されるなんて嬉しいなあ」

　両親とキールは仲良さそうに話している。
最もこれはただの打算に裏打ちされた表面だけの会話。
私はそのスケープゴートというわけだ。
そう思うと本当にムカつく。
最もそれも今日までだ。
私は歓談の流れを打ち消すようにわざと大きく音を立てて立ち上がる。

「ちょっとソフィアなんだ！？　はしたない」
「そうですよ。ソフィア座りなさい」

　両親は私の行動に理解出来ないようだ。
でもそんなことは関係無い。

「お母さま、お父様。私は言いたいことがあります！」

　私は声を張り上げて大きい声が言う。

「実は私ソフィアは密かに思う人が出来ました。ですのでキールさんとの婚約は破棄させて頂きます！」

　はっきり言った。
その瞬間。場の空気が凍るのを感じた。
最もそれも一瞬のこと。
すぐにそれは両親の憤怒の表情に代わる。

「ソフィアァァァ！　お前何を言ってるか分かってるのか」
「ええそうよ。ソフィア。あなた何を言ってるの。すぐに撤回なさい」
「いいえ。私の意思は固いです。それにそのキールさんも私のことは好きじゃ無いようですし、これで結婚何て不可能です」
「ちょっと待てよソフィア。俺がお前を好きじゃ無いとか関係無いことだ。第一婚約破棄なんてされたら俺の面子はどうなる？」
「そうだぞソフィア。キールさんとの婚約が成立しなければ我が家もどうなるか？　当家を父さんの代で潰していいのか？」
「面子とか家のことしか興味がないんですね。私のことなどどうでもいいと。それならいいです。私は家を出ます！　キール、これは返すわ！」

　私はかつてキールから貰った婚約指輪を指から外してキールの足元に投げる。

「おいおいマジかよ」

　キールは私の行動に戸惑いを隠せないようだ。
しかし父はすぐに感情を露わにする。

「なっ！？」

　父は私の発言に怒りの表情をより強める。

「このソフィアァァァ！」

　父さんは私の顔に向けて平手を打とうとする。
その時だ。
　彼が現れた。

「いけませんよ。娘の顔を一時の感情に任せてブツなんて大人げがない」

　彼は父の手を掴みながら落ち着いた表情ででも強い口調で父を窘める。
そう。私の彼ロバートが助けてくれたのだ。