婚約破棄の理由が『俺より優秀な女は要らん』って……。もう私も自由に生きていきます

1話 世界一酷い理由の婚約破棄

　私はエマ・ジョリー。16歳。
王立音楽学でヴァイオリンを専攻している学生だ。
そして私は今日、人生で最大級に大きな人生のターニングポイントに差し掛かっていた。

「エマ！　俺はお前と婚約破棄をさせてもらうぞ！」
「……はい？」

　何と婚約者から婚約破棄を受けた。
相手はイギータ・パブリシェンコ。
私と同じヴァイオリンを専攻している同い年の学生だ。

「えー……理由は何です？」

　私は落ち着いた口調で話す。
だが彼の次の言葉に私は唖然とさせられた。

「理由なんて決まっている！　エマ、お前は俺と同じヴァイオリン選考であり、将来は俺とお前の二人で世界の音楽界で名を馳せるだろう」
「まあ……ええ」
「だが、そこでお前が俺より優秀というのが許せんのだ。このままお前と夫婦になり夫婦ヴァイオリニストになったら、俺はお前の引き立て役に落ちぶれてしまう。そんなのは許せんのだ。だからエマ、お前と婚約破棄をさせてもらう」
「……そうですか」

　私は少々呆れてしまう。
そもそも二人で世界で名を馳せるといっても、私がいなければ彼は泡沫のプロにすらなれないだろう。
　私はヴァイオリンの世界選手権で3年連続表彰台に乗り、去年は優勝までするほどの腕前だが、彼は世界どころか学内でも下から数えて10位以内に入る程度の腕前なのだ。
　つまり夫婦でデュオをすること自体無理がある。
私は彼がプロのヴァイオリニストになるつもりだったことにも少々呆れてしまう。

「つまり自分より優秀な妻なら要らない。そういうことですか？」
「まあわかりやすく言えばそうだな」
「はあ、分かりましたよ。承知です。それじゃ」

　私は彼の家を出る。
もう彼に未練はなかった。