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5話 汚れたコンクール

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そんなある日のことだった。
私はヴァイオリンの毎年ある国際大会に出場する為に久々に隣国を訪れていた。
今年はアルフレッドさんも応援に駆け付けてくれている。
去年は優勝した大会だし、絶対に連覇したかった。
だから私はいつも以上に張り切っている。
 そして今年はアルフレッドさんの妹のクリスティーナさんもエントリーをしている。
そして私を振った正直会いたく無かったイギータさんも今年は何とエントリーしているのだ。
何だか嫌な感じがする。私は今までの人生で何度か感じたことがあるがこういう予感が外れたことがない。
今回も何か良くない事が起こる気がした。
そうこうしている間に演奏が始まる。
私は全力で演奏した。
結果は一位。
何とか優勝することができた。
私はほっと胸を撫で下ろす。
しかし、表彰式が始まると意外なことがあった。
 それは何と3位にイギータさんが入っていたのだ。
クリスティーナさんの2位は当然だが彼の演奏で3位なんてありえないことだった。
会場中が騒然となる。
一体どういうことだ? 
 しかしその場は予定通り式が終わっていく。
私はどうしても気になったので式が終わるとこっそりとイギータさんの元に近づいた。

「イギータさん」

私が声をかけると彼は振り向いてくれた。

「おおエマか。どうだ。俺もやればできるんだぞ」
「イギータさん、一体どうされたんですか?」
「ん、ああ。俺が3位でそんなに驚いたか」
「ええ、驚きましたよ。イギータさん。貴方の演奏は昔と変わっていません。貴方……何をしたんですか?」
「何もしていないさ。ただ今年の審査員は俺の家の息がかかった連中は数人入っていただけさ」
「え?」
「つまり俺の表彰台は予定されていたというだけだ」

そう言うと彼は下品な笑いを浮かべて去っていった。
私は呆然としてしまった。
まさかこんなことになるとは思わなかった。
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