虐待され続けた少女は何を願う

みな

文字の大きさ
20 / 36
1章

19話

しおりを挟む


なぁアナ、俺たち本当は小さい頃に出会ってるんだ。覚えてねぇか?もしかしたら俺のことなんて忘れたかったのかも知れねぇな。けど俺はお前を忘れたことなんて一度もなかった。アナは忘れてるかもしれねでけど俺は一度お前に助けてもらったことがあるんだ。


「お前なんかが王宮騎士団なんかに入れるわけねぇだろ!貧しい農民のくせに夢みてんじゃねぇよ!」


俺は農民の子どもだった。けれど親父とお袋と妹に囲まれて過ごす日々は大好きだった。贅沢なんてできなかったけど、笑いの絶えない家族だったと思う。そんな俺はいつか王宮騎士団に入って家族を養ってやりたいって思ったんだ。剣なんて持ったことなかったし魔法なんてものも使ったことはなかった。そんな俺が木の棒を持って素振りをしていたら貴族の子どもにバカにされるのも少なくない。
それでも俺はその頃プライドが高かったから、売られた喧嘩は全て買ってたんだ。その喧嘩で勝ったことなんてなかったけどな。


いつも通り喧嘩をふっかけられ、またボコボコにされてそのまま家に帰る気にもなれなくて、適当に街を歩いてたら見たことのない細い路地に来ていた。
(しまった、道に迷った...)
全然道も分かんねぇし、ボコボコにされたのも悔しくて、本当に今日はついてねぇなって思いながら歩いていた。やっぱり俺が騎士になるなんて夢のまた夢なのかもしれないと柄にもなく涙が止まらなかった。両親にも相談できなくて、愛想の悪い俺に相談できる友達なんているはずもなくてずっと孤独だった俺。
そんな俺に2才ぐらいの真っ白い仮面をつけた子が話しかけてきたんだ。


「おにいちゃないない?」
「お前迷子になったのか?親はどこにいるんだ?」
「おにいちゃないない!」
そう言ってその少女は俺の涙を拭ってくれた。
「っ!!お前は優しいんだな、名前言えるか?」
「あにゃ!」
「アナって言うのか、いい名前だ。俺の名前はサルヴァトーレって言うんだ」
「おにいちゃルバ!」
「ははっ!そうだルバだぞ?」
「ルバルバ!」


こんな風に家族以外から笑いかけられたのは初めてで、こいつに相談しても意味はねぇって分かってた。けど意味がわからないならなおさら都合がいいじゃねぇかと思って俺は聞いたんだ。こいつならなんて言ってくれるかなって


「なぁ俺は騎士になれると思うか?弱くて人を気遣うこともできない貧しい農民がみんなが憧れる騎士になれると思うか?」
「ルバはきし?おにあい!ルバいいこ!ルバきれいきれい、ルバきし!!」


全然答えになんかなってねぇし、何言ってるか全然わからなかったけど俺は初めて騎士になれるとそう言ってもらった気がした。
「ありがとなアナ!また俺と会ってくれるか?」
「うん!ここ、あにゃ、まってる!」
「わかった!ここで集合な?その前にお前の両親のとこまで送っていくか」
「ううん、ルバ、ここで、ばいばい」
「はぁ?こんなところでお前を1人で置いてけるわけないだろ?ほらいくぞ」
「めっ!ばいばい!」
「あっおい!」
そう言ってアナは壁にできてた小さな穴の中に入っていった。


毎日俺はあそこへ行った、あそこにいけば必ずアナに会えたから。お互いプライベートなことを話すことはなかったけれど、今日はこれができるようになったとか、しょうもない話をした。あの事件が起こるまでは...


なぁアナお前はいつも俺を救ってくれるんだ。お前がいるから今ここに俺はいるんだ、俺のことを忘れててもいい。だからこれからも一緒に居させてくれねぇか?きっとお前は俺を思い出せば離れていくだろ?だから思い出さないでくれ。この思い出は俺だけが覚えていればいいから。


闇に飲まれた俺を綺麗だと、光を持っていると言ってくれた。こうして幼い頃に抱いていた淡いきれいな気持ちがアナと過ごす時間が増えれば増えるほど重い愛に変わっていく。


もう俺はお前から離れられそうにねぇわ。お前だけをずっと愛してる。だからずっとお前だけを守ると何があってもそばにいるとここで俺は誓うよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

処理中です...