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1章
20話
しおりを挟むベロニカ様に出会ったあの日から結局私は騎士団を辞めることもなくルヴァと特別任務という名の冒険をしている。日帰りではあるのでそんなに遠くに行けるわけではないが、今まで暗闇のあの狭い世界にいた私にとってはどれも新しいことばかりだった。あれから特に変わったとこはないけれど唯一変わったことは
「アナ!どこにいたんだよ!すっげぇ探したんだからな!ほんとに心臓が止まるかと思った...」
そう言って私を抱きしめ、額にキスの雨を降らせているルヴァ。そう、ルヴァがすごい甘くなってしまった。私への過保護が増して、私が街でいなくなるとそれはもう長いお説教が待っている。どこでもくっついて離れないし1日に何回キスされるかもう数えるのも億劫になってくるほどしてくる。まぁ口にはしてこないし、前に拒否した時にこの世の終わりのような絶望した顔をされてからは好きにさせるようにした。
「おい人間さっさとアナから離れろ。」
「嫌だ」
「なぁアナ俺にもはやく構えよ」
「ルヴァ交代よ、ほらおいでルナ」
「っ!アナ!!」
嬉しそうに目を細めてじゃれてきたルナを撫でていると
「なぁアナ騎士団から緊急任務が入ったみたいだ。今日の午後からそっちの任務に着いて欲しいって連絡が来てた」
「分かったわ、ルヴァもう心の整理はついた?あの時から彼らと会うのを避けてたでしょう?」
「いや避けてないぞ?でも前みたいにあいつらを羨むことをなくなった。アナがいてくれれば俺は俺でいられるって思えたから」
「っ///そっか...ならよかった!ルナも今から仕事が始まるけど頑張ろうね」
「おう!」
「久しぶりだな!アナ、サルヴァトーレ!」
「お久しぶりです、ロベルトさん、ステファノさん。それで緊急任務というのは?」
「それが俺もまだ聞かされてなくてな。国王直々にお前たちの指名が入ったんだよ。だから今から俺たちに着いてきてもらうことになる」
「そうですか...極秘任務というやつですかね?」
「よく来てくれた、我はシューベルト・カナトリア。今回は極秘任務についてもらう。」
「カナトリア国王、お目にかかれて光栄です私はアナと申します」
「私はサルヴァトーレ・ダミアーノと申します」
「うむ、今回の任務というのはアナ君に遂行してもらう」
「私だけ...ですか?」
「そうだ。何も君はその仮面を取らないというではないか、その特性を生かし隣国を長期スパイとして潜入してもらおうと考えている」
「お言葉ですがカナトリア国王。私たちはまだ王宮騎士団に入って1週間も経ちません、そんな大役を仮面が理由というだけで任せても良いのでしょうか?」
「何もそれだけが理由ではない、王宮騎士団に入ってから1週間ということは内部の事情もあまり把握しておらず、相手にも顔が割れにくい。適任ではないか?」
「もしその理由でしたら私サルヴァトーレでも遂行できますが?」
「うるさい!我の命令は絶対だ、口答えは許さぬ。期間は半年、その間に隣国のシュリウス王国の内部に潜入せよ。それができなければそこで死ぬがいい」
「っ!わかりました、それならば王宮騎士団を抜けさせていただきましょう。国民を守るための命令ならばどんな命令でもお聞きするつもりでした。しかし今なされた命令は個人のもの。そのような命令をこなすぐらいなら抜けさせていただきましょう」
「ほぅあくまでも口答えをするか...ならばお前のその仮面ここで引き剥がしても良いのだぞ?ここにはお前の大切な人たちもおるのにその仮面を剥がす意味、お前にわからぬわけがなかろう?昔の二の舞になりたくなければうだうだ言わずにさっさと命令をこなせ」
「っ!!どこでそれをっ!」
「我に二言はないぞ」
「っ...わかりました...」
「クソっおいロベルトなんかんだあのクソ国王は!!お前たちも隣国の恐ろしさを知らぬわけでもないだろ!そんな国にアナ1人で潜入してこいだと?ふざけてるのか!!」
「サルヴァトーレなんか性格変わったね...戻ったと言った方がいいの?」
「おいステファノ俺はそんなことを言ってるんじゃねぇんだよ、どう考えてもこの作戦は無謀だって言ってるんだ。アナは潜入捜査なんてしたことないんだぞ?プロが行う普通の潜入捜査でも内部に入るには最低でも2年は必要だ。それを素人のアナに半年でやってこいなんてふざけてんのか?」
「サルヴァトーレの言う通りだな。この任務はおかしすぎる。今まで隣国を制圧しようなんて話は出だことがなかった、隣国を制圧したところで得るものも少なすぎる。」
「私の存在が邪魔なのでしょう、潜入捜査で存在がバレればトカゲの尻尾切り。私の存在を認知しなければあちらが勝手に私を殺してくれる、もし潜入捜査がうまくいったとしても向こうの信用を勝ち取ったところで私を売って殺させるつもりなのでしょう。潜入捜査が成功すれば情報代も手に入り私の存在も消せる一石二鳥ですね」
「そもそもなんでこんな任務受けたの...そんなに自分の素顔を隠すことが大事?」
「おいステファノ誰にも聞かれたくねぇこともある、無闇に人のプライベートに入ってんじゃねぇよ」
「ルヴァにもそんな思いやりの心があったのね」
「アナには思いやりの心しかねぇだろ!えっまさか伝わってなかったのか...?こんなに愛を伝えていたのに...」
「おい話が変わってきてるぞ」
「はぁ...ここまで来て何も話さないわけにはいきませんね、少しだけお話ししましょうか。そんな難しい話ではありません、私の顔は不幸を呼ぶ顔なんですよ。」
「どういうことだ?」
「その言葉の通り私の顔を見た人は不幸になる、それだけです。私はこの顔のせいで傷つく人を見たくない、だからこの仮面を外すことはできません」
「そんなこと絶対ねぇよ」
「ルヴァ...?」
「アナが顔を見せたくねぇっていうなら俺は無理に顔を見ようとは思わねぇ。けどアナは誰かを不幸にするやつじゃねぇってのだけは俺が保証してやる」
そう言って笑うルヴァ顔は私は小さい頃殺してしまったあの少年の顔に似ていた。
(ごめんなさい、私があなたを殺してしまった...)
「分かったようなこと言わないで。出会ってたった1週間のあなたに何がわかるの⁉︎貴方は本当の私の恐ろしさを知らないからそんなこと言えるの!貴方なんかにわかるわけない...!私の顔を見たことないくせに...」
八つ当たりだって分かってる。私をなぐさめようとしてルヴァは言ってくれただけなのに、ルヴァがあの男の子とかぶるたびにあの罪悪感に襲われる。あの時仮面を外さなければあの子は死ななかったのに。どうしてなの?どうしてルヴァと一緒にいるだけで私はこんなに心が乱されるの?暗闇の世界にいた時には私の心が動いたことなんてなかった。でもルヴァやルナといればいるほど心が痛くなったり、心が満たされた気分になる。どうしてなの?こんな苦しい思い知りたくなかった...!誰か助けてよ...
(っ!今抱きしめられてるの?こんな八つ当たりした私を許してくれるの?)
「アナごめんな、ほんとにごめん俺がアナに嫌われたくなくて一つ隠し事してたんだ。俺はアナの顔を見たことあるんだよ...小さい頃一緒に遊んでたの覚えてないか?ルバって読んでくれてたじゃねぇか」
(ル...バ...?っ!思い出した...あの男の子の名前はルバだったじゃない、ルバくんって呼んでた...どうして?どうしてルバくんがここにいるの?)
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