愛用の大剣が銀髪美少女になった元傭兵は魔獣を狩る

日諸 畔(ひもろ ほとり)

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第2章 魔獣狩り

第26話『さすが私のリュール様です』

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 リュールの腹から見えているのは、一般的な剣ほどの長さをした牙だった。魔獣のものにしては短い。単に貫かれただけでなく、強い衝撃も感じている。このままでは、上半身と下半身が分離してしまう。妙に冷静な気分で、リュールは状況を理解していた。痛みもさほど感じない。
 背後に見えるのは、小型の魔獣。小さいといっても、一般的な猪よりも一回り小さい程度だ。体格と牙を合わせれば、人を殺すなど簡単に思える。
 油断してしまった。魔獣はもう一体いたのだ。もしかしたら、他にもいるかもしれない。大きさというのは厄介なものだと、今更になって理解した。そちらに注目すれば、他を見失う。

『リュール様!』

 ブレイダの悲鳴が聞こえるが、今は相手をしている余裕がない。リュールは背中越しの魔獣に向けて、ブレイダを突き刺した。
 彼女は、硬い体毛と密度の高い筋肉を易々と貫いた。軽く腕を動かせば、その体内はズタズタになる。体勢を崩した魔獣は、リュールと共にその場で崩れ落ちた。
 その際、リュールはブレイダを取り落としてしまった。

『リュール様!』
「ぐぅっ」

 腹の傷が抉られる痛みに、リュールは呻いた。まだ体は繋がっている。小型の魔獣は、先程の一刺しで絶命しているようだった。リュールは這いずりながら、背中側から牙を引き抜いた。
 手元にブレイダがない。このままでは、巨大魔獣に踏み潰されて終わりだ。霞みつつある意識の中、リュールは彼女の名を呼んだ。

「ブレ……イダ……」
「はいっ!」

 銀髪の少女が駆け寄ってくる。細い指が頬に触れた時、リュールの思考は鮮明になった。腹の痛みも消えたような気がする。

「そういう、ことか……」
「はい?」

 どうやら、彼女に触れている間は怪我の痛みが収まるようだ。理由も理屈もわからない。しかし、そういうことなのだと思う。胸の傷のことを考えると、治りも早くなるのかもしれない。体に空いた大穴が治るのかはわからないが、とりあえずは戦える。
 リュールはブレイダの手を握った。

「まだやれるな? ブレイダ」
『はいっ! 使ってください!』

 リュールは相棒を手に、立ち上がった。腹からの流血は、あまりないようだった。

『また来ます!』
「ああ」

 当然、魔獣はリュールのことを待ってはくれない。長大な牙を前に、低い姿勢で突っ込んでくる。

「ふっ!」

 牙のない左側に避けながら、すれ違い様にブレイダを横に振った。鮮血がほとばしる。

『浅いです!』
「おう!」

 魔獣は急制動をかけた。すぐに振り向く動きをみせた。その時間は与えない。リュールは地面を蹴った。
 走りながら周囲に目を配る。また後ろから刺されたらたまったものではない。とりあえず伏兵はいないようだった。

「そこだ!」

 無防備な左後ろ足を切断する。巨体が尻もちをつくように倒れ込んだ。リュールは動きを止めず、魔獣の前方に移動した。

「終わりだ!」
『とどめだー!』

 叫びと共にブレイダを振り上げ、脳天に向けて真っ直ぐに下ろした。頭に縦一文字の亀裂が入った魔獣は、その場で力を失った。

「やったな……」
『はいっ! さすが私のリュール様です』

 肩で息をしながらリュールは呟いた。腹の傷は既に塞がっていた。
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