助けなきゃよかった

助けなきゃよかった

私は1人行動が好きでよく1人でいる。
特に優れている部分もないし、性格も普通。
そんな私だが、周りの人からよく言われることがある。

親切

確かにそうかもしれない。
誰かが困っていたら助けたくなるし、守りたくなる。
でも私には至ってそんなことは当たり前だと思っていた。
そんな時、私はある現場を目撃した。
それはある女子がある男子の足に必死で捕まっているところだった。
私はその2人が気になり、しばらく様子を見ることにした。
すると、いきなりその男子が足に捕まっていた女子に蹴りを入れたのだ。
私は目を疑った。
その後も、その女子を蹴ったり、殴ったり、髪を引っ張ったりなどをしていた。
周りの人も振り向いたりはしていたが、助けようとする人は誰もいなかった。
私はそんな状況を見ていられず、2人の元に近づいていった。
そんな中、周りの人は私を何度も引き止めながら、こう言った。

「あいつを助けたら一生辛い思いをすることになるよ！」

だけど、私はその手を振り払った。
そして怒りも込み上げてきた。

(人が殴られたりしているのに、どうして助けようとしないで、私の心配をするのよ！)

だけどそれと同時に私を引き止めた女子の言葉に少し突っかかった。

(そういえば、さっきの女子はあの子を助けたら一生辛い思いをすることになるって言ってたな…。どういうことなんだろ…学校を卒業してしまえば、虐められることもないし、もし、あの男子がお金持ちか何かだったら海外で暮らせばいいし)

なんて思いながら私は2人の元にどんどん近づいていった。
すると会話が徐々に聞こえてきた。

「離せよ！気持ち悪いんだよ！」
「嫌だ…離さない！」

そんな会話がずっとだ。
でもよく見るとその男子は少し怯えていた。
きっと先生が来るかもしれないから怯えているのだと思った。
それもそうだ。
こんな状況を先生に見られたら最低でも停学になってしまう。
 
そして私は2人の元に辿り着き、2人を引き離し、その男子を睨みつけた。

何か言い返して来るのかと思ったが、その男子はほっとした顔で「ありがとうな」と言うと、その場から立ち去って行った。
どういう意味か分からなかったが、とりあえず殴られていた女子が助かり、ほっとした。
すると後ろからその女子が私に抱きついてきた。
そして私は
「もう大丈夫だよ。」
と声をかけた。
しかし、その女子はずっと私に抱きついたままだった。
大丈夫かなと思い、少しその女子の顔を覗いた。
するとその女子は満面の笑みを浮かべて、こう言った。

「今度こそ離さない」