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第2章 賢者の陥落、娯楽への渇望
名探偵は、匂いを嗅ぐ
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翌朝。
雨上がりの森に場違いなほど爽やかな香りが漂っていた。
「……おはよう、みんな」
藪の中から現れた神宮寺サオリを見て勇者ゴウたちは目を丸くした。
昨夜までの彼女は、泥にまみれ、顔色は土気色で、今にも倒れそうだったはずだ。
それがどうだ。
今の彼女はまるで高級エステから帰ってきたかのように肌が発光し、銀髪はサラサラと風に靡いている。 純白のローブには泥汚れ一つなく新品のように輝いていた。
「お、おいサオリ?お前、どこに行ってたんだ?心配したぞ?」
「ごめんなさいね。ちょっと一人で過ごしたかったの」
「そ、そうか…………。お前、なんか……すごく元気そうだな?」
「ええ。一晩ぐっすり休んだら体調が良くなったの」
サオリは聖女らしい微笑みを浮かべたが、その瞳が一瞬後ろに控える相田カイトへ向けられ艶っぽく潤んだのを私は見逃さなかった。
(……怪しい)
私、図書委員のユミ(クラスでのジョブは『賢者』)は分厚い眼鏡の奥で目を細めた。
鼻をひくつかせる。
(……この匂い。この世界特有の薬草や香油じゃない。これは、『フローラルブーケの香り』のシャンプーと『柔軟剤』の匂い)
そして彼女の歩き方。
一見普通に見えるが、股関節周りが少しぎこちない。
まるで、長い時間「何か」を受け入れ続けていた後のような独特の余韻を引きずっている。
私は視線をカイトに移した。
「荷物持ち」と蔑まれている彼はいつものように目立たない位置で愛想笑いをしている。
だが、その表情には以前のような卑屈さがない。
どこか余裕綽々の捕食者の笑み。
(……やったな。あの男、サオリちゃんと)
私は確信した。
カイトのスキル『万物配送』。
最初は「パシリ能力」だと笑われていたが現代日本の物資を取り寄せられるなら話は別だ。
食料、医薬品、そして生活用品。
この不潔で不便な異世界においてそれは聖剣エクスカリバーよりも強力な武器になる。
(……欲しい)
私の胸の内で強烈な渇望が渦巻いた。
それは性欲ではない。
いや、ある意味で性欲よりも根源的で切実な欲望。
「娯楽」への飢えだ。
スマホがない。
ネットがない。
本屋がない。
活字中毒でゲーマーの私にとってこの世界は退屈すぎて発狂しそうな監獄だった。
サオリちゃんが手に入れたのが「清潔さ」なら私がカイトから搾り取るべきは「エンタメ」だ。
私は無表情のまま杖を握り直した。
交渉の時間は近い。
ーーーーー
昼休憩。
ゴウたちは川辺で硬いパンと干し肉を齧りながら魔物討伐の作戦会議(という名の武勇伝語り)に花を咲かせていた。
カイトは一人、少し離れた木陰で休んでいる。
私は足音を忍ばせて彼に近づきその背後から声をかけた。
「……相田くん」
「うおっ!?びっくりした……なんだ、図書委員か」
カイトが過剰に驚いて振り返る。
その手には、見慣れないパッケージの何かが握られていたが素早くポケットに隠された。
「単刀直入に言う。……サオリちゃんに何をした?」
「何って……ただの休憩だよ」
「嘘。サオリちゃんから『パンテーン』の匂いがする。あと肌艶が良すぎる。あれは良質なタンパク質を摂取した女の顔」
私の指摘にカイトの目がスッと細められた。
人の良さそうな仮面が外れ冷徹な計算高い瞳が現れる。
「……へぇ。さすが賢者様、観察眼が鋭いね」
「誤魔化しても無駄。あなたのスキル、A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)の商品を呼べるんでしょう?」
私は彼に詰め寄った。
彼が座っている木の根元に手を突き顔を近づける。
私の豊かな胸元がダボダボのローブから零れ落ちそうになるが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
「私にもよこせ」
「……はい?」
「私のスキル『賢者』の解析能力は魔王軍の動きも読める。もし私が『カイトがサオリちゃんをたぶらかして、聖女の純潔を奪った』ってゴウくんに報告したらどうなると思う?」
これは脅迫だ。
だが、カイトは動じるどころか面白そうに口角を上げた。
「ユミちゃんこそ、いいの?そんなことしたら、君の欲しい『現代の娯楽』は永遠に手に入らないよ」 「……ッ!」
読まれていた。
カイトはポケットから先ほど隠したものを半分だけ出した。
銀色のアルミの蓋。
赤と白のロゴ。
『カップヌードル(シーフード味)』だ。
ゴクリ。
私の喉が意地汚い音を立てた。
あの塩気。
あのジャンクな旨味。
この世界の薄味で泥臭いスープとは次元の違う、化学調味料の暴力的な美味しさ。
「……欲しい?」
「……ほしい」
「じゃあ、取引だ。俺の秘密を守ること。そして……」
カイトが私の胸元に視線を落とす。
「対価(LP)を払うこと」
「お金なら、王都に帰れば……」
「金はいらない。俺のスキルは持ち主への『好意』と『快感』をエネルギーにするんだ。……サオリみたいにね」
意味深な言葉。
サオリちゃんが何を支払ったのか想像がつかないほど私は子供じゃない。
現代の高校生だ。
彼が求めているのが「体」だということは理解できた。
(……でも、死ぬほど退屈なの。もう限界なの)
私は覚悟を決めた。
「……わかった。まずは前金。そのカップ麺と、あと……『週刊少年ジャンプ』の最新号。それくれたら、黙っててあげる」
「交渉成立だ」
カイトの手元が光り、湯気の立つカップ麺と馴染み深い紙の手触りの雑誌が現れた。
私はそれをひったくるように受け取ると、夢中で麺を啜り活字の海に溺れた。
久々に脳内でドーパミンが弾ける音がした。
ーーーーー
それから数日。
私はカイトとの「共犯関係」を楽しんでいた。
夜な夜なこっそりと彼から漫画やスナック菓子を受け取り、その対価として少しのスキンシップ――手を繋いだり膝枕をさせたり――を許容していた。
だが、問題が発生した。
私の体質だ。
「……はぁ、はぁ……っ、あつい……」
移動中の馬車(カイトが召喚した軽トラックの荷台を改造したもの)の中で私は荒い息を吐いていた。 全身が熱い。
特に下腹部の奥がドクドクと脈打って疼いている。
『魔力酔い』。
賢者としての強大な魔力を常に行使し続けている反動で体内の魔力回路がオーバーヒートを起こしている状態だ。
この世界の設定では魔力の奔流は生理的な興奮――つまり、性的な昂ぶりと似た神経回路を刺激するらしい。
「ユミ、顔が赤いぞ。大丈夫か?」
運転席からカイトが声をかけてくる。
現在、サオリちゃんは助手席でカイトとイチャイチャしており、荷台には私一人だ(ゴウたちは「修行だ!」と言って並走している。馬鹿だ)。
「……大丈夫じゃない。魔力が、溜まりすぎて……暴走しそう」
「マズいな。ここで爆発されたら困る」
車が止まりカイトが荷台に乗り込んできた。
私の額に手を当てる。
その手がひんやりとして気持ちよくて、私は思わず彼の手に頬を擦り寄せた。
「ん……つめたい、きもちいい……」
「すごい熱だ。……これ、発散させないと身体が壊れるよ」
カイトの目が心配そうに、けれど奥底で妖しく光った。
「ユミ。ここで結界を張ってテントを出す。……『治療』しよう」
ーーーーー
展開された『スイートルーム・テント』の中は相変わらず快適だった。
エアコンの冷気が火照った私の体を冷やしてくれる。
だが、体の芯の熱さまでは取れない。
「ふぅ……ん、ぁ……」
私はソファに横たわりローブの前をはだけていた。
汗でシャツが肌に張り付きGカップの胸が苦しげに上下している。
カイトが冷蔵庫からスポーツドリンクを持ってきて私に飲ませてくれた。
「少し落ち着いた?」
「……ううん。お腹の奥がムズムズする。魔法を撃ち放ちたいけど……こんな場所じゃ無理」
「そうだな。物理的に魔力を放出できないなら……『擬似的』に放出させて神経を鎮めるしかない」
カイトが奇妙な道具を取り出した。
手のひらサイズのピンク色の卵型の物体。
そこから伸びる細いコードとスイッチ。
私の動きが止まる。
見覚えがある。
日本の通販サイトや深夜のバラエティ番組で見たことがある。
「……ローター?」
「正解。さすが現代っ子」
カイトは悪びれもせずスイッチを入れた。
ブブブブブ……。
微細だが強力な振動音が静かな室内に響く。
「な、なんでそんなものを……」
「ユミのその状態、『魔力酔い』っていうより一種の『発情』に近いんだろ?システムがそう分析してる」
「っ!デリカシーない……!」
「魔法による神経の昂ぶりを科学的な振動で相殺するんだ。……一種の『中和実験』だよ」
カイトが近づいてくる。
振動するピンク色の卵を私の太ももに押し当てた。
「ひゃうっ!?」
服の上からでも伝わる振動に私の体がビクンと跳ねた。
魔力で敏感になっている神経に機械的な一定のリズムが突き刺さる。
それは魔法攻撃を受けた時の衝撃とは違う、もっと直接的で卑猥な刺激だった。
「ほら、力が抜けてきただろ?」
「や、やめて……そんなの、恥ずかしい……!」
「恥ずかしがる必要はないよ。これは医療行為だ。……それに、ユミだって興味あるだろ?『これ』がどれくらい気持ちいいのか」
図星だった。
賢者としての探究心、そしてムッツリスケベな私の好奇心。
ネットの知識でしか知らない「大人のオモチャ」。
それが実際にどんな快楽をもたらすのか、知りたいという欲求が羞恥心と拮抗する。
「……じっけん、だけ。……実験だけ、なんだから」
私は自分に言い訳をして抵抗する手を下ろした。
カイトが優しく笑う。
「ああ、いいデータを取らせてくれ」
ーーーーー
カイトの手が私のスカートの中に滑り込む。
下着はこの世界の粗末な綿パンツではなく、先日カイトから支給された『シルクの紐パン』だ。
「綺麗な足だ。……少し濡れてるね」
「うるさい……見ないで」
カイトは紐パンのクロッチ部分をずらし、直接私の秘部にローターをあてがった。
まだクリトリスには当てない。
太ももの内側、ビラの周辺を焦らすように這わせる。
「んっ、ぁ……!ぶぶって、すごい……音が、お腹に響く……」
ブブブブブブ……。
一定の振動が骨盤を通して内臓まで揺さぶってくる。
魔力酔いで熱を持った細胞の一つ一つがその振動に共鳴して歓喜の声を上げているようだった。
「ユミ、ここがいいのか?」
カイトが狙いを定め、充血して硬くなっているクリトリスにローターの先端を押し当てた。
「あッ!?ひギッ!!」
私の口から可愛げのない悲鳴が出た。
脳天を突き抜けるような強烈なスパーク。
思考回路が一瞬でショートする。
「あ、あ、あ、あ……!なに、これ、すごい、はやい……!」
「魔法にはない刺激だろ?毎分1万回の振動だ」
「わから、ないっ!計算、できないっ!あう、あうぅっ!」
私はソファの背もたれにしがみつきのけぞった。
眼鏡がずり落ちる。
カイトは冷静に私の反応を観察しながら強弱のダイヤルを回した。
振動が強くなる。
「イッ、イッ、いやぁぁっ!強すぎ、壊れるぅっ!」
「壊れないよ。ほら、魔力が抜けていくぞ」
「抜けるっ、ちがうの、抜けるぅっ!」
私の腰が勝手にガクガクと動き、カイトの手にあるローターに自ら擦り寄っていく。
恥ずかしい。
賢者である私が、こんな機械仕掛けのオモチャに翻弄されて涎を垂らして喘いでいるなんて。
でも、気持ちよすぎて止まれない。
「あっ、あ、あーっ!イく、イくっ!脳みそ溶けるぅぅッ!!」
「実験成功だな」
カイトがさらに強く押し込む。
私の体の中で、溜め込んだ魔力と性欲が核融合を起こし爆発した。
「アへェェェッ!!」
白目を剥き、足の指先までピンと伸ばして絶頂に達する。
秘部からは大量の愛液が噴き出しソファのレザーを汚した。
それは魔法の暴走よりも激しく、そして甘美な「解放」だった。
ーーーーー
「はぁ、はぁ……っ、んぅ……」
振動が止まった後も私の体はピクピクと痙攣していた。
カイトがティッシュで私の汚れを拭き取ってくれている。
その甲斐甲斐しい手つきを見ながら私は呆然としていた。
熱が引いている。
あれほど苦しかった魔力酔いの火照りが消え、代わりに信じられないほどの爽快感と深いリラックス感が全身を包んでいた。
「……どうだった?日本の科学力は」
カイトがニヤリと笑う。
私はずれた眼鏡を直しながら、彼を睨んだ。
いや、睨もうとしたがとろんとした目つきにしかならなかった。
「……悔しいけど。魔法よりすごかった」
「そりゃよかった。これでまた旅が続けられるな」
カイトは片付けを始めようとしたが、私はとっさに彼の袖を掴んだ。
まだ足りない。
一度知ってしまった「未知の快感」。
賢者の探究心は一度火がつくと止まらないのだ。
「……まだ、実験は終わりじゃない」
「え?」
「振動(ローター)のデータは取れた。でも……」
私はカイトの股間を見る。
そこには、私の絶頂シーンを見せつけられて元気になった彼の「イチモツ」がズボン越しに主張していた。
サオリちゃんがあれほど夢中になり肌を綺麗にした「本物の男根」。
「……『生体間結合』のデータが取れてない」
私は顔を真っ赤にしながら精一杯の理屈を捏ねた。
「振動だけでこれなら……本物はどうなのか。比較実験が必要だと思わない?」
カイトが驚いたように目を瞬かせ、そして深く深く微笑んだ。
「……研究熱心な賢者様だこと」
彼は私の足の間に体を滑り込ませた。
オモチャではなく熱く脈打つ彼自身の肉体を携えて。
「いいよ、ユミ。朝まで徹底的に『検証』しようか」
私はゴクリと唾を飲み込み、自らローブを脱ぎ捨てた。
私の知的好奇心がただの性欲へと変わる瞬間だった。
雨上がりの森に場違いなほど爽やかな香りが漂っていた。
「……おはよう、みんな」
藪の中から現れた神宮寺サオリを見て勇者ゴウたちは目を丸くした。
昨夜までの彼女は、泥にまみれ、顔色は土気色で、今にも倒れそうだったはずだ。
それがどうだ。
今の彼女はまるで高級エステから帰ってきたかのように肌が発光し、銀髪はサラサラと風に靡いている。 純白のローブには泥汚れ一つなく新品のように輝いていた。
「お、おいサオリ?お前、どこに行ってたんだ?心配したぞ?」
「ごめんなさいね。ちょっと一人で過ごしたかったの」
「そ、そうか…………。お前、なんか……すごく元気そうだな?」
「ええ。一晩ぐっすり休んだら体調が良くなったの」
サオリは聖女らしい微笑みを浮かべたが、その瞳が一瞬後ろに控える相田カイトへ向けられ艶っぽく潤んだのを私は見逃さなかった。
(……怪しい)
私、図書委員のユミ(クラスでのジョブは『賢者』)は分厚い眼鏡の奥で目を細めた。
鼻をひくつかせる。
(……この匂い。この世界特有の薬草や香油じゃない。これは、『フローラルブーケの香り』のシャンプーと『柔軟剤』の匂い)
そして彼女の歩き方。
一見普通に見えるが、股関節周りが少しぎこちない。
まるで、長い時間「何か」を受け入れ続けていた後のような独特の余韻を引きずっている。
私は視線をカイトに移した。
「荷物持ち」と蔑まれている彼はいつものように目立たない位置で愛想笑いをしている。
だが、その表情には以前のような卑屈さがない。
どこか余裕綽々の捕食者の笑み。
(……やったな。あの男、サオリちゃんと)
私は確信した。
カイトのスキル『万物配送』。
最初は「パシリ能力」だと笑われていたが現代日本の物資を取り寄せられるなら話は別だ。
食料、医薬品、そして生活用品。
この不潔で不便な異世界においてそれは聖剣エクスカリバーよりも強力な武器になる。
(……欲しい)
私の胸の内で強烈な渇望が渦巻いた。
それは性欲ではない。
いや、ある意味で性欲よりも根源的で切実な欲望。
「娯楽」への飢えだ。
スマホがない。
ネットがない。
本屋がない。
活字中毒でゲーマーの私にとってこの世界は退屈すぎて発狂しそうな監獄だった。
サオリちゃんが手に入れたのが「清潔さ」なら私がカイトから搾り取るべきは「エンタメ」だ。
私は無表情のまま杖を握り直した。
交渉の時間は近い。
ーーーーー
昼休憩。
ゴウたちは川辺で硬いパンと干し肉を齧りながら魔物討伐の作戦会議(という名の武勇伝語り)に花を咲かせていた。
カイトは一人、少し離れた木陰で休んでいる。
私は足音を忍ばせて彼に近づきその背後から声をかけた。
「……相田くん」
「うおっ!?びっくりした……なんだ、図書委員か」
カイトが過剰に驚いて振り返る。
その手には、見慣れないパッケージの何かが握られていたが素早くポケットに隠された。
「単刀直入に言う。……サオリちゃんに何をした?」
「何って……ただの休憩だよ」
「嘘。サオリちゃんから『パンテーン』の匂いがする。あと肌艶が良すぎる。あれは良質なタンパク質を摂取した女の顔」
私の指摘にカイトの目がスッと細められた。
人の良さそうな仮面が外れ冷徹な計算高い瞳が現れる。
「……へぇ。さすが賢者様、観察眼が鋭いね」
「誤魔化しても無駄。あなたのスキル、A_ma_zon(アー・マ・ゾーン)の商品を呼べるんでしょう?」
私は彼に詰め寄った。
彼が座っている木の根元に手を突き顔を近づける。
私の豊かな胸元がダボダボのローブから零れ落ちそうになるが、今はそんなことを気にしている場合ではない。
「私にもよこせ」
「……はい?」
「私のスキル『賢者』の解析能力は魔王軍の動きも読める。もし私が『カイトがサオリちゃんをたぶらかして、聖女の純潔を奪った』ってゴウくんに報告したらどうなると思う?」
これは脅迫だ。
だが、カイトは動じるどころか面白そうに口角を上げた。
「ユミちゃんこそ、いいの?そんなことしたら、君の欲しい『現代の娯楽』は永遠に手に入らないよ」 「……ッ!」
読まれていた。
カイトはポケットから先ほど隠したものを半分だけ出した。
銀色のアルミの蓋。
赤と白のロゴ。
『カップヌードル(シーフード味)』だ。
ゴクリ。
私の喉が意地汚い音を立てた。
あの塩気。
あのジャンクな旨味。
この世界の薄味で泥臭いスープとは次元の違う、化学調味料の暴力的な美味しさ。
「……欲しい?」
「……ほしい」
「じゃあ、取引だ。俺の秘密を守ること。そして……」
カイトが私の胸元に視線を落とす。
「対価(LP)を払うこと」
「お金なら、王都に帰れば……」
「金はいらない。俺のスキルは持ち主への『好意』と『快感』をエネルギーにするんだ。……サオリみたいにね」
意味深な言葉。
サオリちゃんが何を支払ったのか想像がつかないほど私は子供じゃない。
現代の高校生だ。
彼が求めているのが「体」だということは理解できた。
(……でも、死ぬほど退屈なの。もう限界なの)
私は覚悟を決めた。
「……わかった。まずは前金。そのカップ麺と、あと……『週刊少年ジャンプ』の最新号。それくれたら、黙っててあげる」
「交渉成立だ」
カイトの手元が光り、湯気の立つカップ麺と馴染み深い紙の手触りの雑誌が現れた。
私はそれをひったくるように受け取ると、夢中で麺を啜り活字の海に溺れた。
久々に脳内でドーパミンが弾ける音がした。
ーーーーー
それから数日。
私はカイトとの「共犯関係」を楽しんでいた。
夜な夜なこっそりと彼から漫画やスナック菓子を受け取り、その対価として少しのスキンシップ――手を繋いだり膝枕をさせたり――を許容していた。
だが、問題が発生した。
私の体質だ。
「……はぁ、はぁ……っ、あつい……」
移動中の馬車(カイトが召喚した軽トラックの荷台を改造したもの)の中で私は荒い息を吐いていた。 全身が熱い。
特に下腹部の奥がドクドクと脈打って疼いている。
『魔力酔い』。
賢者としての強大な魔力を常に行使し続けている反動で体内の魔力回路がオーバーヒートを起こしている状態だ。
この世界の設定では魔力の奔流は生理的な興奮――つまり、性的な昂ぶりと似た神経回路を刺激するらしい。
「ユミ、顔が赤いぞ。大丈夫か?」
運転席からカイトが声をかけてくる。
現在、サオリちゃんは助手席でカイトとイチャイチャしており、荷台には私一人だ(ゴウたちは「修行だ!」と言って並走している。馬鹿だ)。
「……大丈夫じゃない。魔力が、溜まりすぎて……暴走しそう」
「マズいな。ここで爆発されたら困る」
車が止まりカイトが荷台に乗り込んできた。
私の額に手を当てる。
その手がひんやりとして気持ちよくて、私は思わず彼の手に頬を擦り寄せた。
「ん……つめたい、きもちいい……」
「すごい熱だ。……これ、発散させないと身体が壊れるよ」
カイトの目が心配そうに、けれど奥底で妖しく光った。
「ユミ。ここで結界を張ってテントを出す。……『治療』しよう」
ーーーーー
展開された『スイートルーム・テント』の中は相変わらず快適だった。
エアコンの冷気が火照った私の体を冷やしてくれる。
だが、体の芯の熱さまでは取れない。
「ふぅ……ん、ぁ……」
私はソファに横たわりローブの前をはだけていた。
汗でシャツが肌に張り付きGカップの胸が苦しげに上下している。
カイトが冷蔵庫からスポーツドリンクを持ってきて私に飲ませてくれた。
「少し落ち着いた?」
「……ううん。お腹の奥がムズムズする。魔法を撃ち放ちたいけど……こんな場所じゃ無理」
「そうだな。物理的に魔力を放出できないなら……『擬似的』に放出させて神経を鎮めるしかない」
カイトが奇妙な道具を取り出した。
手のひらサイズのピンク色の卵型の物体。
そこから伸びる細いコードとスイッチ。
私の動きが止まる。
見覚えがある。
日本の通販サイトや深夜のバラエティ番組で見たことがある。
「……ローター?」
「正解。さすが現代っ子」
カイトは悪びれもせずスイッチを入れた。
ブブブブブ……。
微細だが強力な振動音が静かな室内に響く。
「な、なんでそんなものを……」
「ユミのその状態、『魔力酔い』っていうより一種の『発情』に近いんだろ?システムがそう分析してる」
「っ!デリカシーない……!」
「魔法による神経の昂ぶりを科学的な振動で相殺するんだ。……一種の『中和実験』だよ」
カイトが近づいてくる。
振動するピンク色の卵を私の太ももに押し当てた。
「ひゃうっ!?」
服の上からでも伝わる振動に私の体がビクンと跳ねた。
魔力で敏感になっている神経に機械的な一定のリズムが突き刺さる。
それは魔法攻撃を受けた時の衝撃とは違う、もっと直接的で卑猥な刺激だった。
「ほら、力が抜けてきただろ?」
「や、やめて……そんなの、恥ずかしい……!」
「恥ずかしがる必要はないよ。これは医療行為だ。……それに、ユミだって興味あるだろ?『これ』がどれくらい気持ちいいのか」
図星だった。
賢者としての探究心、そしてムッツリスケベな私の好奇心。
ネットの知識でしか知らない「大人のオモチャ」。
それが実際にどんな快楽をもたらすのか、知りたいという欲求が羞恥心と拮抗する。
「……じっけん、だけ。……実験だけ、なんだから」
私は自分に言い訳をして抵抗する手を下ろした。
カイトが優しく笑う。
「ああ、いいデータを取らせてくれ」
ーーーーー
カイトの手が私のスカートの中に滑り込む。
下着はこの世界の粗末な綿パンツではなく、先日カイトから支給された『シルクの紐パン』だ。
「綺麗な足だ。……少し濡れてるね」
「うるさい……見ないで」
カイトは紐パンのクロッチ部分をずらし、直接私の秘部にローターをあてがった。
まだクリトリスには当てない。
太ももの内側、ビラの周辺を焦らすように這わせる。
「んっ、ぁ……!ぶぶって、すごい……音が、お腹に響く……」
ブブブブブブ……。
一定の振動が骨盤を通して内臓まで揺さぶってくる。
魔力酔いで熱を持った細胞の一つ一つがその振動に共鳴して歓喜の声を上げているようだった。
「ユミ、ここがいいのか?」
カイトが狙いを定め、充血して硬くなっているクリトリスにローターの先端を押し当てた。
「あッ!?ひギッ!!」
私の口から可愛げのない悲鳴が出た。
脳天を突き抜けるような強烈なスパーク。
思考回路が一瞬でショートする。
「あ、あ、あ、あ……!なに、これ、すごい、はやい……!」
「魔法にはない刺激だろ?毎分1万回の振動だ」
「わから、ないっ!計算、できないっ!あう、あうぅっ!」
私はソファの背もたれにしがみつきのけぞった。
眼鏡がずり落ちる。
カイトは冷静に私の反応を観察しながら強弱のダイヤルを回した。
振動が強くなる。
「イッ、イッ、いやぁぁっ!強すぎ、壊れるぅっ!」
「壊れないよ。ほら、魔力が抜けていくぞ」
「抜けるっ、ちがうの、抜けるぅっ!」
私の腰が勝手にガクガクと動き、カイトの手にあるローターに自ら擦り寄っていく。
恥ずかしい。
賢者である私が、こんな機械仕掛けのオモチャに翻弄されて涎を垂らして喘いでいるなんて。
でも、気持ちよすぎて止まれない。
「あっ、あ、あーっ!イく、イくっ!脳みそ溶けるぅぅッ!!」
「実験成功だな」
カイトがさらに強く押し込む。
私の体の中で、溜め込んだ魔力と性欲が核融合を起こし爆発した。
「アへェェェッ!!」
白目を剥き、足の指先までピンと伸ばして絶頂に達する。
秘部からは大量の愛液が噴き出しソファのレザーを汚した。
それは魔法の暴走よりも激しく、そして甘美な「解放」だった。
ーーーーー
「はぁ、はぁ……っ、んぅ……」
振動が止まった後も私の体はピクピクと痙攣していた。
カイトがティッシュで私の汚れを拭き取ってくれている。
その甲斐甲斐しい手つきを見ながら私は呆然としていた。
熱が引いている。
あれほど苦しかった魔力酔いの火照りが消え、代わりに信じられないほどの爽快感と深いリラックス感が全身を包んでいた。
「……どうだった?日本の科学力は」
カイトがニヤリと笑う。
私はずれた眼鏡を直しながら、彼を睨んだ。
いや、睨もうとしたがとろんとした目つきにしかならなかった。
「……悔しいけど。魔法よりすごかった」
「そりゃよかった。これでまた旅が続けられるな」
カイトは片付けを始めようとしたが、私はとっさに彼の袖を掴んだ。
まだ足りない。
一度知ってしまった「未知の快感」。
賢者の探究心は一度火がつくと止まらないのだ。
「……まだ、実験は終わりじゃない」
「え?」
「振動(ローター)のデータは取れた。でも……」
私はカイトの股間を見る。
そこには、私の絶頂シーンを見せつけられて元気になった彼の「イチモツ」がズボン越しに主張していた。
サオリちゃんがあれほど夢中になり肌を綺麗にした「本物の男根」。
「……『生体間結合』のデータが取れてない」
私は顔を真っ赤にしながら精一杯の理屈を捏ねた。
「振動だけでこれなら……本物はどうなのか。比較実験が必要だと思わない?」
カイトが驚いたように目を瞬かせ、そして深く深く微笑んだ。
「……研究熱心な賢者様だこと」
彼は私の足の間に体を滑り込ませた。
オモチャではなく熱く脈打つ彼自身の肉体を携えて。
「いいよ、ユミ。朝まで徹底的に『検証』しようか」
私はゴクリと唾を飲み込み、自らローブを脱ぎ捨てた。
私の知的好奇心がただの性欲へと変わる瞬間だった。
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