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第7章 魔王ヘルヴィとの遭遇と楽園
魅惑のコンソメパンチと、魔王磨き
⚫︎黄金の袋と未知なる香気
「……ポテト、チップス……?」
魔王ヘルヴィはカイトの手にある黄金色に輝く袋――『ポテトチップス(コンソメパンチ・BIGサイズ)』を訝しげな目で見つめた。
魔界の王として数百年を生きてきた彼女だがこんな派手なパッケージの物体は見たことがない。
「なんだそれは。……爆弾か?」
「ある意味、爆弾だな。……味覚の」
カイトはニヤリと笑い袋の両端をつまんだ。
パァンッ!!
空気が弾ける乾いた音が静まり返った玉座の間に響く。
その瞬間。
袋の中から封印されていた「魔性の香り」が解き放たれた。
揚げたジャガイモの香ばしさ。
肉と野菜の凝縮された旨味スパイス。
それは干からびたトカゲと泥水しか知らないこの世界の住人にとって暴力的なまでの嗅覚刺激だった。
「ッ……!?」
ヘルヴィの猫のような瞳孔が極限まで見開かれた。
鼻がピクピクと痙攣する。
「な、なんじゃ!?なんじゃその……芳しい暴力的な香りは!?」
「ほら。……毒見してやるよ」
カイトは一枚取り出し自分の口に放り込んだ。
パリッ、サクッ。
軽快な咀嚼音が響く。
「……食ってみな」
カイトが袋を差し出す。
ヘルヴィは警戒しながらも、本能(食欲)に抗えず恐る恐るその華奢な指を袋の中に突っ込んだ。
指先に触れる薄くて脆い感触。
一枚つまみ出し唇へと運ぶ。
カリッ……。
その瞬間、魔王城に稲妻が走った(ような気がした)。
「……!!??」
ヘルヴィの動きが止まる。
舌の上に広がる複雑怪奇な旨味の爆発。
塩気、甘み、酸味、そして油のコク。
脳内の快楽物質が一気に分泌されシナプスが焼き切れるほどの衝撃。
「う、う、う……」
「美味いか?」
「う……うまいッ!!なんじゃこれはぁぁッ!?」
ヘルヴィが絶叫した。
彼女はもう一枚、いや、鷲掴みにして口に放り込んだ。
「パリッ、ボリッ、ザクザクッ!美味い、美味すぎる!トカゲとは違う!これは魔法の粉か!?舌が痺れるほど幸せじゃぁぁッ!」
止まらない。
カッパエビセン現象。
魔王の威厳などかなぐり捨て彼女は一心不乱にチップスを貪り食った。
口の周りにカスをつけ指先をオレンジ色に染めながら。
⚫︎炭酸の衝撃と完全なる敗北
「喉、乾くだろ?」
カイトは畳み掛けるように次のアイテムを取り出した。
キンキンに冷えて結露した銀色の缶。
『ストロング・レモンサワー(アルコール9%)』。
プシュッ!
小気味よい音と共に爽やかな柑橘の香りが広がる。
「ほら、これを流し込んでみろ」
「ぬ、ぬぅ……!よこせ!」
ヘルヴィは缶をひったくり豪快に呷(あお)った。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……!
炭酸の刺激が、乾燥した喉を直撃する。
強烈な酸味とガツンとくるアルコール。
そして脂っこくなった口の中を洗い流す爽快感。
「――ッぷはぁぁぁぁぁッ!!!」
ヘルヴィは空になった缶を握り潰し恍惚の表情で天井を仰いだ。
「かぁぁぁッ!喉が、喉が弾けるぅッ!なんじゃこの水は!?痛いのに、気持ちいい!そして酔いが回るのが早すぎる!」
彼女の白い肌が一瞬でほんのりと桜色に染まる。
トロンとした目つきでカイトを見つめる。
そこにはもう敵意など微塵もない。
あるのは、餌付けされた野良犬のような「もっとくれ」という懇願だけだ。
「……人間。カイトと言ったか」
「ああ」
「……もっとないのか? その、ポテチと、シュワシュワする酒は」
ヘルヴィが玉座から降りてきてカイトの服の裾を掴んだ。
上目遣い。
口元にはポテチの粉がついているがその仕草は反則級に可愛い。
カイトは勝負あったと確信し悪魔の笑みを浮かべた。
「あるよ。……ここにはないけどな」
「どこじゃ!?宝物庫か!?」
「俺の『城』だ。……そこに行けばポテチだけじゃない。
もっと凄いものがあるぞ」
カイトは広間の隅に展開した『キャンピングカー』を指差した。
⚫︎文明の利器への招待
「……馬車か?鉄でできておるが……」
「入ればわかる」
カイトに促されヘルヴィは恐る恐るキャンピングカーの中へと足を踏み入れた。
その瞬間彼女は再び絶句した。
「……な、なんじゃここは……?」
完璧にコントロールされた室温(エアコン)。
ふかふかの絨毯。
座り心地の良さそうな革張りのソファ。
そして、テーブルの上に山のように積まれた『お菓子の山』と『世界各国の銘酒』。
だが、何よりも彼女の目を釘付けにしたのは――。
大型モニターに映し出されたカラフルな映像と、その前に置かれた『最新携帯ゲーム機』だった。
「……こ、これは……動く絵……?」
「ゲームだ。……お前が一人でやってたチェスとは次元が違うぞ」
カイトがコントローラーを握らせ操作方法を教える。
画面の中のキャラクターが自分の指の動きに合わせて剣を振るう。
圧倒的なグラフィック。
没入感。
「……す、すごい……!余が動かしておる……!」
ヘルヴィの手が震える。
退屈で死にそうだった数百年。
その空白を埋める無限の娯楽がここにある。
「……カイト。これは全部そちの持ち物か?」
「ああ。俺と一緒にいればこれらは使い放題だ。……ポテチも、コーラも、ゲームも、死ぬまで補充してやる」
カイトの提案にヘルヴィは一瞬たりとも迷わなかった。
彼女はその場で平伏(ジャンピング土下座)した。
「……契約成立じゃ!!」
「え?」
「余は、これを待っておったのじゃ!これさえあれば永遠に部屋から出なくて済む!世界征服など部下が勝手に言っておるだけじゃ!余は今日限りで魔王を引退する!」
ヘルヴィはカイトの足に抱きつき頬ずりをした。
「カイトよ!そちを魔王軍最高幹部……いや、『夫』に任命する!ゆえに一生余を養え!飼ってくれぇぇッ!」
プライドゼロ。
即落ち。
勇者ゴウがポカンと口を開けて見ている前で、最強の魔王は「ポテチとゲーム」にあっさりと魂を売ったのだった。
⚫︎魔王磨き(ポリッシュ):ビフォーアフター
「……まあ、いいけどさ」
カイトは苦笑しながら足元にまとわりつく美少女(汚部屋仕様)を見下ろした。
確かに可愛い。
素材は最高だ。
だが、近くで見るとやはり……汚い。
髪は脂でベタつきドレスは食べカスだらけ。
爪の間には泥が詰まり獣のような饐えた臭いがする。
このままでは清潔なキャンピングカーが汚染されてしまう。
「ヘルヴィ。……その前にやることがあるだろ」
「やること?ゲームか?」
「『お風呂』だ。……そんな汚い手でコントローラーを触るな」
カイトがパチンと指を鳴らすと待機していた4人のヒロインたちが獲物を見つけた肉食獣のような目で近づいてきた。
「……あらあら。随分と汚れてますわね、魔王様。(サオリ)」
「……不潔。菌の温床。洗浄が必要。(ユミ)」
「……髪が死んでおる。エルフとしてこのキューティクルの死滅は見過ごせぬ(セラフィナ)」
「……グルーミングしてあげるにゃ。覚悟するにゃ(ショコラ)」
「な、なんじゃお主ら!?余は風呂など入らんぞ!面倒くさい!水は嫌いじゃ!」
ヘルヴィが逃げようとするが時すでに遅し。
ショコラが素早い動きで背後に回り込み羽交い締めにする。
サオリとユミが両脇を抱えセラフィナが退路を断つ。
「連行しますわよ」
「離せぇぇッ!余は魔王ぞ!不敬であるぞぉぉッ!」
悲鳴虚しくヘルヴィはバスルームへと引きずり込まれていった。
◇
「ひゃうッ!?そ、そこは羽の付け根!敏感なんじゃ!洗うな!」
「大人しくしてください。……ここ垢が溜まってますわよ」
バスルームから賑やかな(そして少しエッチな)声が響いてくる。
カイトはリビングで、新しい服をA_ma_zon(アー・マ・ゾーン)で注文しながら待っていた。
「……んあぁッ!尻尾!尻尾を引っ張るなぁッ!変な感じになるぅッ!」
「……ここも洗わないと。……ふふ、可愛いハート型」
「髪が絡まっておるな。……特製のトリートメントを浸透させるぞ」
数十分後。
バスルームのドアが開き湯気と共に「新生・魔王ヘルヴィ」が現れた。
「……うぅ。酷い目にあったのじゃ……」
ふてくされた顔で出てきた彼女を見てカイトは息を呑んだ。
ボサボサだった銀髪は絹糸のようにサラサラになり、天使の輪が輝いている。
薄汚れていた肌は一皮剥けたように白く透き通り、血色の良い薔薇色に輝いている。
そして身につけているのは、ユミがセレクトした『最新作・ゴシックロリータドレス(露出多めver)』。 黒いフリルと赤いリボンが彼女の白い肌と深紅の瞳を完璧に引き立てていた。
「……どうじゃ?変ではないか?」
ヘルヴィがモジモジとスカートの裾を摘む。
その仕草は、さっきまでの「おっさん臭い干物女」とは別人の深窓の令嬢そのものだった。
後光が差しているようにすら見える。
「……最高だ」
カイトは素直に称賛した。
素材の良さが文明の利器(シャンプー・リンス・化粧水)によって極限まで引き出されている。
これぞダイヤの原石を磨き上げた瞬間だ。
「そ、そうか?……えへへ。カイトが喜ぶならまあ、風呂も悪くないかのぅ」
ヘルヴィは頬を赤らめ嬉しそうにはにかんだ。
その笑顔の破壊力は世界征服級だった。
⚫︎対価の支払いと初体験へのプロローグ
「さて、綺麗になったところで……」
カイトは居住まいを正した。
ヘルヴィはソワソワとゲーム機の方を見ている。
「ヘルヴィ。この生活を続けるには一つだけ条件がある」
「条件?なんじゃ、金か?宝物庫の鍵ならやるぞ」
「金はいらない。……俺のシステムは『ラブポイント』で動いているんだ」
カイトはヒロインたちと目配せをした。
全員がニヤリと笑みを浮かべて頷く。
「また一人、増えましたわね」
「……魔王まで籠絡するとは。カイトの性欲、底なし」
カイトはヘルヴィに向き直り宣告した。
「つまり……魔王様も『ポイント還元(支払い)』をしてもらえますか?」
「ぽいんと……かんげん?」
ヘルヴィがキョトンと首を傾げる。
カイトは彼女の手を取り優しく引き寄せた。
「元のトカゲを齧る生活に戻るか。……それとも、俺と一緒に快楽(ゲームとセックス)に溺れるか」
選択肢などないに等しい究極の二択。
ヘルヴィはテーブルの上のポテチとカイトの顔を交互に見た。
そして、彼女の本能(サキュバスの血)がカイトから漂う強烈な「雄の匂い」に反応しトクンと胸を高鳴らせた。
「……愚問じゃな」
ヘルヴィはカイトの手を握り返し決然と言い放った。
「脱ぐ。……今すぐ脱ぐからポテチとゲームを取り上げるな!」
あまりにも潔い欲望への忠誠。
カイトは満足げに頷き彼女を抱き上げた。
「取引成立だ。……寝室へ行こうか」
「え?な、なにをするのじゃ?ゲームはここで……」
「ベッドの上でする『もっと楽しいこと』だよ」
戸惑う魔王を抱えカイトは寝室へと向かう。
リビングに残されたヒロインたちは、新たな「妹」の誕生を予感し紅茶を飲みながら優雅に見送った。
「……お手並み拝見ね」
「……魔王の初体験。データ収集しなきゃ」
扉が閉まる。
最強にして最弱の未経験サキュバス魔王。
彼女が本当の「快楽」を知り堕ちていくまでのカウントダウンが始まった。
「……ポテト、チップス……?」
魔王ヘルヴィはカイトの手にある黄金色に輝く袋――『ポテトチップス(コンソメパンチ・BIGサイズ)』を訝しげな目で見つめた。
魔界の王として数百年を生きてきた彼女だがこんな派手なパッケージの物体は見たことがない。
「なんだそれは。……爆弾か?」
「ある意味、爆弾だな。……味覚の」
カイトはニヤリと笑い袋の両端をつまんだ。
パァンッ!!
空気が弾ける乾いた音が静まり返った玉座の間に響く。
その瞬間。
袋の中から封印されていた「魔性の香り」が解き放たれた。
揚げたジャガイモの香ばしさ。
肉と野菜の凝縮された旨味スパイス。
それは干からびたトカゲと泥水しか知らないこの世界の住人にとって暴力的なまでの嗅覚刺激だった。
「ッ……!?」
ヘルヴィの猫のような瞳孔が極限まで見開かれた。
鼻がピクピクと痙攣する。
「な、なんじゃ!?なんじゃその……芳しい暴力的な香りは!?」
「ほら。……毒見してやるよ」
カイトは一枚取り出し自分の口に放り込んだ。
パリッ、サクッ。
軽快な咀嚼音が響く。
「……食ってみな」
カイトが袋を差し出す。
ヘルヴィは警戒しながらも、本能(食欲)に抗えず恐る恐るその華奢な指を袋の中に突っ込んだ。
指先に触れる薄くて脆い感触。
一枚つまみ出し唇へと運ぶ。
カリッ……。
その瞬間、魔王城に稲妻が走った(ような気がした)。
「……!!??」
ヘルヴィの動きが止まる。
舌の上に広がる複雑怪奇な旨味の爆発。
塩気、甘み、酸味、そして油のコク。
脳内の快楽物質が一気に分泌されシナプスが焼き切れるほどの衝撃。
「う、う、う……」
「美味いか?」
「う……うまいッ!!なんじゃこれはぁぁッ!?」
ヘルヴィが絶叫した。
彼女はもう一枚、いや、鷲掴みにして口に放り込んだ。
「パリッ、ボリッ、ザクザクッ!美味い、美味すぎる!トカゲとは違う!これは魔法の粉か!?舌が痺れるほど幸せじゃぁぁッ!」
止まらない。
カッパエビセン現象。
魔王の威厳などかなぐり捨て彼女は一心不乱にチップスを貪り食った。
口の周りにカスをつけ指先をオレンジ色に染めながら。
⚫︎炭酸の衝撃と完全なる敗北
「喉、乾くだろ?」
カイトは畳み掛けるように次のアイテムを取り出した。
キンキンに冷えて結露した銀色の缶。
『ストロング・レモンサワー(アルコール9%)』。
プシュッ!
小気味よい音と共に爽やかな柑橘の香りが広がる。
「ほら、これを流し込んでみろ」
「ぬ、ぬぅ……!よこせ!」
ヘルヴィは缶をひったくり豪快に呷(あお)った。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……!
炭酸の刺激が、乾燥した喉を直撃する。
強烈な酸味とガツンとくるアルコール。
そして脂っこくなった口の中を洗い流す爽快感。
「――ッぷはぁぁぁぁぁッ!!!」
ヘルヴィは空になった缶を握り潰し恍惚の表情で天井を仰いだ。
「かぁぁぁッ!喉が、喉が弾けるぅッ!なんじゃこの水は!?痛いのに、気持ちいい!そして酔いが回るのが早すぎる!」
彼女の白い肌が一瞬でほんのりと桜色に染まる。
トロンとした目つきでカイトを見つめる。
そこにはもう敵意など微塵もない。
あるのは、餌付けされた野良犬のような「もっとくれ」という懇願だけだ。
「……人間。カイトと言ったか」
「ああ」
「……もっとないのか? その、ポテチと、シュワシュワする酒は」
ヘルヴィが玉座から降りてきてカイトの服の裾を掴んだ。
上目遣い。
口元にはポテチの粉がついているがその仕草は反則級に可愛い。
カイトは勝負あったと確信し悪魔の笑みを浮かべた。
「あるよ。……ここにはないけどな」
「どこじゃ!?宝物庫か!?」
「俺の『城』だ。……そこに行けばポテチだけじゃない。
もっと凄いものがあるぞ」
カイトは広間の隅に展開した『キャンピングカー』を指差した。
⚫︎文明の利器への招待
「……馬車か?鉄でできておるが……」
「入ればわかる」
カイトに促されヘルヴィは恐る恐るキャンピングカーの中へと足を踏み入れた。
その瞬間彼女は再び絶句した。
「……な、なんじゃここは……?」
完璧にコントロールされた室温(エアコン)。
ふかふかの絨毯。
座り心地の良さそうな革張りのソファ。
そして、テーブルの上に山のように積まれた『お菓子の山』と『世界各国の銘酒』。
だが、何よりも彼女の目を釘付けにしたのは――。
大型モニターに映し出されたカラフルな映像と、その前に置かれた『最新携帯ゲーム機』だった。
「……こ、これは……動く絵……?」
「ゲームだ。……お前が一人でやってたチェスとは次元が違うぞ」
カイトがコントローラーを握らせ操作方法を教える。
画面の中のキャラクターが自分の指の動きに合わせて剣を振るう。
圧倒的なグラフィック。
没入感。
「……す、すごい……!余が動かしておる……!」
ヘルヴィの手が震える。
退屈で死にそうだった数百年。
その空白を埋める無限の娯楽がここにある。
「……カイト。これは全部そちの持ち物か?」
「ああ。俺と一緒にいればこれらは使い放題だ。……ポテチも、コーラも、ゲームも、死ぬまで補充してやる」
カイトの提案にヘルヴィは一瞬たりとも迷わなかった。
彼女はその場で平伏(ジャンピング土下座)した。
「……契約成立じゃ!!」
「え?」
「余は、これを待っておったのじゃ!これさえあれば永遠に部屋から出なくて済む!世界征服など部下が勝手に言っておるだけじゃ!余は今日限りで魔王を引退する!」
ヘルヴィはカイトの足に抱きつき頬ずりをした。
「カイトよ!そちを魔王軍最高幹部……いや、『夫』に任命する!ゆえに一生余を養え!飼ってくれぇぇッ!」
プライドゼロ。
即落ち。
勇者ゴウがポカンと口を開けて見ている前で、最強の魔王は「ポテチとゲーム」にあっさりと魂を売ったのだった。
⚫︎魔王磨き(ポリッシュ):ビフォーアフター
「……まあ、いいけどさ」
カイトは苦笑しながら足元にまとわりつく美少女(汚部屋仕様)を見下ろした。
確かに可愛い。
素材は最高だ。
だが、近くで見るとやはり……汚い。
髪は脂でベタつきドレスは食べカスだらけ。
爪の間には泥が詰まり獣のような饐えた臭いがする。
このままでは清潔なキャンピングカーが汚染されてしまう。
「ヘルヴィ。……その前にやることがあるだろ」
「やること?ゲームか?」
「『お風呂』だ。……そんな汚い手でコントローラーを触るな」
カイトがパチンと指を鳴らすと待機していた4人のヒロインたちが獲物を見つけた肉食獣のような目で近づいてきた。
「……あらあら。随分と汚れてますわね、魔王様。(サオリ)」
「……不潔。菌の温床。洗浄が必要。(ユミ)」
「……髪が死んでおる。エルフとしてこのキューティクルの死滅は見過ごせぬ(セラフィナ)」
「……グルーミングしてあげるにゃ。覚悟するにゃ(ショコラ)」
「な、なんじゃお主ら!?余は風呂など入らんぞ!面倒くさい!水は嫌いじゃ!」
ヘルヴィが逃げようとするが時すでに遅し。
ショコラが素早い動きで背後に回り込み羽交い締めにする。
サオリとユミが両脇を抱えセラフィナが退路を断つ。
「連行しますわよ」
「離せぇぇッ!余は魔王ぞ!不敬であるぞぉぉッ!」
悲鳴虚しくヘルヴィはバスルームへと引きずり込まれていった。
◇
「ひゃうッ!?そ、そこは羽の付け根!敏感なんじゃ!洗うな!」
「大人しくしてください。……ここ垢が溜まってますわよ」
バスルームから賑やかな(そして少しエッチな)声が響いてくる。
カイトはリビングで、新しい服をA_ma_zon(アー・マ・ゾーン)で注文しながら待っていた。
「……んあぁッ!尻尾!尻尾を引っ張るなぁッ!変な感じになるぅッ!」
「……ここも洗わないと。……ふふ、可愛いハート型」
「髪が絡まっておるな。……特製のトリートメントを浸透させるぞ」
数十分後。
バスルームのドアが開き湯気と共に「新生・魔王ヘルヴィ」が現れた。
「……うぅ。酷い目にあったのじゃ……」
ふてくされた顔で出てきた彼女を見てカイトは息を呑んだ。
ボサボサだった銀髪は絹糸のようにサラサラになり、天使の輪が輝いている。
薄汚れていた肌は一皮剥けたように白く透き通り、血色の良い薔薇色に輝いている。
そして身につけているのは、ユミがセレクトした『最新作・ゴシックロリータドレス(露出多めver)』。 黒いフリルと赤いリボンが彼女の白い肌と深紅の瞳を完璧に引き立てていた。
「……どうじゃ?変ではないか?」
ヘルヴィがモジモジとスカートの裾を摘む。
その仕草は、さっきまでの「おっさん臭い干物女」とは別人の深窓の令嬢そのものだった。
後光が差しているようにすら見える。
「……最高だ」
カイトは素直に称賛した。
素材の良さが文明の利器(シャンプー・リンス・化粧水)によって極限まで引き出されている。
これぞダイヤの原石を磨き上げた瞬間だ。
「そ、そうか?……えへへ。カイトが喜ぶならまあ、風呂も悪くないかのぅ」
ヘルヴィは頬を赤らめ嬉しそうにはにかんだ。
その笑顔の破壊力は世界征服級だった。
⚫︎対価の支払いと初体験へのプロローグ
「さて、綺麗になったところで……」
カイトは居住まいを正した。
ヘルヴィはソワソワとゲーム機の方を見ている。
「ヘルヴィ。この生活を続けるには一つだけ条件がある」
「条件?なんじゃ、金か?宝物庫の鍵ならやるぞ」
「金はいらない。……俺のシステムは『ラブポイント』で動いているんだ」
カイトはヒロインたちと目配せをした。
全員がニヤリと笑みを浮かべて頷く。
「また一人、増えましたわね」
「……魔王まで籠絡するとは。カイトの性欲、底なし」
カイトはヘルヴィに向き直り宣告した。
「つまり……魔王様も『ポイント還元(支払い)』をしてもらえますか?」
「ぽいんと……かんげん?」
ヘルヴィがキョトンと首を傾げる。
カイトは彼女の手を取り優しく引き寄せた。
「元のトカゲを齧る生活に戻るか。……それとも、俺と一緒に快楽(ゲームとセックス)に溺れるか」
選択肢などないに等しい究極の二択。
ヘルヴィはテーブルの上のポテチとカイトの顔を交互に見た。
そして、彼女の本能(サキュバスの血)がカイトから漂う強烈な「雄の匂い」に反応しトクンと胸を高鳴らせた。
「……愚問じゃな」
ヘルヴィはカイトの手を握り返し決然と言い放った。
「脱ぐ。……今すぐ脱ぐからポテチとゲームを取り上げるな!」
あまりにも潔い欲望への忠誠。
カイトは満足げに頷き彼女を抱き上げた。
「取引成立だ。……寝室へ行こうか」
「え?な、なにをするのじゃ?ゲームはここで……」
「ベッドの上でする『もっと楽しいこと』だよ」
戸惑う魔王を抱えカイトは寝室へと向かう。
リビングに残されたヒロインたちは、新たな「妹」の誕生を予感し紅茶を飲みながら優雅に見送った。
「……お手並み拝見ね」
「……魔王の初体験。データ収集しなきゃ」
扉が閉まる。
最強にして最弱の未経験サキュバス魔王。
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