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第1章 泥濘(ぬかるみ)の森で、乙女は清潔に飢えて泣く
ノミだらけの宿屋と、精液を飲むアスリート
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「うわぁ……!ここが異世界の街……!」
「すごい、人がいっぱい!建物が石でできてる!」
丘を降り巨大な城壁の門をくぐった僕たちを待っていたのは、活気と喧騒、そして独特の臭気が入り混じる中世ファンタジー風の街並みだった。
莉央(りお)と歌恋(かれん)が修学旅行生のように目を輝かせてキョロキョロしている。
「あまり離れないでネ。スリがいるかもしれないアル」
美鈴(メイリン)が油断なく周囲を警戒し、一ノ瀬清花(いちのせ さやか)はおずおずと僕の背中に隠れるように歩いている。
「相田くん、みんなジロジロ見てくるわ……」
「仕方ないよ。みんなの服は綺麗すぎるし、容姿レベルが違いすぎる」
泥汚れを落とした彼女たちは、異世界の住人から見れば発光しているかのように美しかった。
道行く男たちが口を開けて彼女たちを目で追っている。
僕は彼女たちを庇うように先頭に立ち、まずは情報収集のために「冒険者ギルド」を目指した。
ギルドは酒場の奥に併設されていた。
昼間からエールを煽る荒くれ者たちの視線に晒されながらも、僕たちは受付で地図と基本情報を購入した。
わかったことは3つ。
1.ここは辺境の城塞都市「バルディア」。
魔王城がある北の大陸までは、馬車と船を乗り継いで最低でも三ヶ月はかかる。
2.この周辺の魔物は「ゴブリン」や「オーク」が主体。
僕たちのパーティなら問題なく倒せるレベルだ。
3.通貨の価値。
僕たちが持っている現代の装飾品(時計やアクセサリー)はかなりの高値で売れるらしい。
「三ヶ月か……。先は長いネ」
美鈴が腕を組み重々しく呟く。
「でも道筋は見えたわ。闇雲に歩くよりずっといい」
清花が安堵の表情を見せる。
とりあえずの資金を確保した僕たちは、次に物資の補給へと向かった。
だが、そこで最初の現実(洗礼)を受けることになった。
「いらっしゃい!新鮮な肉だよ!」
市場の親父が差し出したのは、色の悪い干し肉とハエがたかった謎の獣肉だった。
「……これ、食べるの?」
莉央が引きつった顔で後ずさる。
野菜もしなびており、果物は酸っぱい匂いを放っている。
現代日本のスーパーマーケットに慣れきった彼女たちにとってここの食材は「生ゴミ」一歩手前にしか見えなかった。
「……食材は、まだコンテナの備蓄がある。とりあえず保存食の硬パンと塩だけ買っておこう」
僕の判断に全員が激しく同意した。
一方で武器屋と防具屋は充実していた。
「おおっ!このナックル、手に馴染むアル!」
美鈴がミスリル製のナックルガードを装着して空を突く。
「このブーツ、軽い!バネが入ってるみたい!」
莉央もまた、疾風の刻印が施された革のブーツを履き、その場で軽くジャンプしてみせた。
装備を整え、戦力は確実にアップした。
問題はその後だ。
「ここが……一番高級な宿屋、ですか?」
清花が信じられないものを見る目で目の前の建物を凝視している。
街一番の高級宿「金の獅子亭」。
だが、その実態は酷いものだった。
案内された部屋に入った瞬間、ツンと鼻をつくカビの臭い。
ベッドのシーツは薄汚れた灰色で、よく見ると小さな黒い点々――ノミやダニが這い回っているのが見えた。
「ひっ……!」
歌恋が悲鳴を上げて飛び退く。
さらに最悪なのは水回りだ。
「トイレは廊下の突き当たりだ。風呂はないから裏の井戸で体を拭きな」
宿の主人が無愛想に言い放つ。
確認しに行った清花が青ざめた顔で戻ってきた。
「……無理。絶対に無理。ただの穴よ。囲いもないし、汚物が山盛りで……」
彼女は口元を押さえ今にも吐き出しそうだ。
「こんなところで寝たら病気になっちゃうよ!」
莉央が叫ぶ。
美鈴も眉をひそめ自分の肌をさすった。
「ここで寝るくらいなら野宿の方がマシかもしれないネ……」
全員の視線が僕に集まる。
その目は「お願い」と訴えていた。
あの清潔で、涼しくて、虫のいない「我が家」を。
「……わかった。街の外に出よう」
僕の言葉に全員の顔がパッと輝いた。
「やったぁ!相田くん大好き!」
「早く!早く行きましょ!」
僕たちは逃げるように宿を出て、門が閉まる直前に街の外へと出た。
人目につかない森の開けた場所まで移動し僕はスキルを発動した。
「【拠点設営】!」
ズズズンッ!
見慣れた白いコンテナハウスが出現する。
「ただいまーっ!!」
彼女たちは歓声を上げて文明の城へと雪崩れ込んだ。
「はぁ……生き返る……」
「やっぱりここが一番……」
エアコンの涼しい風、ふかふかのソファ、そして何より清潔なトイレ。
彼女たちは心底安堵し、今日の疲れを癒やした。
だが、僕は一人眉を寄せていた。
システム画面に表示された拠点のステータスが変化していたからだ。
《拠点レベルアップ:居住スペース拡張》
《個室追加:1部屋》
昨夜の歌恋へのオーラルセックスによるLP大量供給の結果、コンテナの奥に新たな扉が出現していた。 中は6畳ほどのプライベートルーム。
シングルベッドとデスクがあり完全に一人になれる空間だ。
(これはいい。僕の作業部屋にもなるし、誰かを連れ込むのにも使える)
しかし代償もあった。
《LP消費量増加:ハイグレードモード》
《維持限界まで:あと4時間》
(消費が激しい……!一晩どころか日付が変わる前に消滅するぞ)
宿屋のストレスから逃れた反動で今の彼女たちは快適さを貪っている。
その分、消費も早まっているのだ。
補充が必要だ。
それも、急いで。
僕はリビングでくつろぐ歌恋と目が合った。
彼女は察したように頬を染め、小さく頷いた。
「歌恋。……今日も、いいかい?」
小声で尋ねると、彼女は周囲を気にしながらも「うん……」と唇を動かした。
「じゃあ、新しくできたあの個室で待ってる。みんなが落ち着いたら来てくれ」
「わかった」
僕は一人新設された個室へと入った。
ドアを閉めると完全な静寂が訪れる。
防音性は完璧だ。
ベッドに腰掛け、待つこと数分。
コンコン、と控えめなノックの音がした。
「どうぞ」
ガチャリとドアが開く。
入ってきた人物を見て僕は少しだけ目を見開いた。
そこに立っていたのは歌恋ではなく――日向莉央だったからだ。
「すごい、人がいっぱい!建物が石でできてる!」
丘を降り巨大な城壁の門をくぐった僕たちを待っていたのは、活気と喧騒、そして独特の臭気が入り混じる中世ファンタジー風の街並みだった。
莉央(りお)と歌恋(かれん)が修学旅行生のように目を輝かせてキョロキョロしている。
「あまり離れないでネ。スリがいるかもしれないアル」
美鈴(メイリン)が油断なく周囲を警戒し、一ノ瀬清花(いちのせ さやか)はおずおずと僕の背中に隠れるように歩いている。
「相田くん、みんなジロジロ見てくるわ……」
「仕方ないよ。みんなの服は綺麗すぎるし、容姿レベルが違いすぎる」
泥汚れを落とした彼女たちは、異世界の住人から見れば発光しているかのように美しかった。
道行く男たちが口を開けて彼女たちを目で追っている。
僕は彼女たちを庇うように先頭に立ち、まずは情報収集のために「冒険者ギルド」を目指した。
ギルドは酒場の奥に併設されていた。
昼間からエールを煽る荒くれ者たちの視線に晒されながらも、僕たちは受付で地図と基本情報を購入した。
わかったことは3つ。
1.ここは辺境の城塞都市「バルディア」。
魔王城がある北の大陸までは、馬車と船を乗り継いで最低でも三ヶ月はかかる。
2.この周辺の魔物は「ゴブリン」や「オーク」が主体。
僕たちのパーティなら問題なく倒せるレベルだ。
3.通貨の価値。
僕たちが持っている現代の装飾品(時計やアクセサリー)はかなりの高値で売れるらしい。
「三ヶ月か……。先は長いネ」
美鈴が腕を組み重々しく呟く。
「でも道筋は見えたわ。闇雲に歩くよりずっといい」
清花が安堵の表情を見せる。
とりあえずの資金を確保した僕たちは、次に物資の補給へと向かった。
だが、そこで最初の現実(洗礼)を受けることになった。
「いらっしゃい!新鮮な肉だよ!」
市場の親父が差し出したのは、色の悪い干し肉とハエがたかった謎の獣肉だった。
「……これ、食べるの?」
莉央が引きつった顔で後ずさる。
野菜もしなびており、果物は酸っぱい匂いを放っている。
現代日本のスーパーマーケットに慣れきった彼女たちにとってここの食材は「生ゴミ」一歩手前にしか見えなかった。
「……食材は、まだコンテナの備蓄がある。とりあえず保存食の硬パンと塩だけ買っておこう」
僕の判断に全員が激しく同意した。
一方で武器屋と防具屋は充実していた。
「おおっ!このナックル、手に馴染むアル!」
美鈴がミスリル製のナックルガードを装着して空を突く。
「このブーツ、軽い!バネが入ってるみたい!」
莉央もまた、疾風の刻印が施された革のブーツを履き、その場で軽くジャンプしてみせた。
装備を整え、戦力は確実にアップした。
問題はその後だ。
「ここが……一番高級な宿屋、ですか?」
清花が信じられないものを見る目で目の前の建物を凝視している。
街一番の高級宿「金の獅子亭」。
だが、その実態は酷いものだった。
案内された部屋に入った瞬間、ツンと鼻をつくカビの臭い。
ベッドのシーツは薄汚れた灰色で、よく見ると小さな黒い点々――ノミやダニが這い回っているのが見えた。
「ひっ……!」
歌恋が悲鳴を上げて飛び退く。
さらに最悪なのは水回りだ。
「トイレは廊下の突き当たりだ。風呂はないから裏の井戸で体を拭きな」
宿の主人が無愛想に言い放つ。
確認しに行った清花が青ざめた顔で戻ってきた。
「……無理。絶対に無理。ただの穴よ。囲いもないし、汚物が山盛りで……」
彼女は口元を押さえ今にも吐き出しそうだ。
「こんなところで寝たら病気になっちゃうよ!」
莉央が叫ぶ。
美鈴も眉をひそめ自分の肌をさすった。
「ここで寝るくらいなら野宿の方がマシかもしれないネ……」
全員の視線が僕に集まる。
その目は「お願い」と訴えていた。
あの清潔で、涼しくて、虫のいない「我が家」を。
「……わかった。街の外に出よう」
僕の言葉に全員の顔がパッと輝いた。
「やったぁ!相田くん大好き!」
「早く!早く行きましょ!」
僕たちは逃げるように宿を出て、門が閉まる直前に街の外へと出た。
人目につかない森の開けた場所まで移動し僕はスキルを発動した。
「【拠点設営】!」
ズズズンッ!
見慣れた白いコンテナハウスが出現する。
「ただいまーっ!!」
彼女たちは歓声を上げて文明の城へと雪崩れ込んだ。
「はぁ……生き返る……」
「やっぱりここが一番……」
エアコンの涼しい風、ふかふかのソファ、そして何より清潔なトイレ。
彼女たちは心底安堵し、今日の疲れを癒やした。
だが、僕は一人眉を寄せていた。
システム画面に表示された拠点のステータスが変化していたからだ。
《拠点レベルアップ:居住スペース拡張》
《個室追加:1部屋》
昨夜の歌恋へのオーラルセックスによるLP大量供給の結果、コンテナの奥に新たな扉が出現していた。 中は6畳ほどのプライベートルーム。
シングルベッドとデスクがあり完全に一人になれる空間だ。
(これはいい。僕の作業部屋にもなるし、誰かを連れ込むのにも使える)
しかし代償もあった。
《LP消費量増加:ハイグレードモード》
《維持限界まで:あと4時間》
(消費が激しい……!一晩どころか日付が変わる前に消滅するぞ)
宿屋のストレスから逃れた反動で今の彼女たちは快適さを貪っている。
その分、消費も早まっているのだ。
補充が必要だ。
それも、急いで。
僕はリビングでくつろぐ歌恋と目が合った。
彼女は察したように頬を染め、小さく頷いた。
「歌恋。……今日も、いいかい?」
小声で尋ねると、彼女は周囲を気にしながらも「うん……」と唇を動かした。
「じゃあ、新しくできたあの個室で待ってる。みんなが落ち着いたら来てくれ」
「わかった」
僕は一人新設された個室へと入った。
ドアを閉めると完全な静寂が訪れる。
防音性は完璧だ。
ベッドに腰掛け、待つこと数分。
コンコン、と控えめなノックの音がした。
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ガチャリとドアが開く。
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