【R18】【拠点設営】で守る乙女達の尊厳 〜世界を救うのは聖剣じゃなくて、清潔なお風呂と愛し合う夜〜

のびすけ。

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第8章 洋上の楽園と人魚の秘宝 ~感度良好な探知係と、幻魔将軍の霧~

霧散する悪夢、輝く真実 ~牧野樹里はもう迷わない~

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「……聞こえる。今度は、はっきりと」

深海500メートル。 
不気味な乳白色の霧に包まれた「幻影の迷宮」の入り口で牧野樹里(まきの じゅり)は静かに呟いた。 アーク・ロイヤル(潜水艦モード)のソナー席。 

つい先ほどまで、ノイズの奔流に苦しみ泣き叫んでいた少女の姿はもうない。 
今の彼女の瞳は深海のエメラルドのように澄み渡り、力強い光を宿していた。 

肌は血色良く艶めき、全身から満ち足りた魔力のオーラが立ち上っている。 
ミナトによる濃厚な「チューニング」を経た彼女の五感は完全に最適化されていたのだ。

「樹里、調子はどうだ?」

キャプテンシートから相田ミナトが声をかける。

「最高だよ、相田くん」

樹里はヘッドホンを片耳に当て振り返ってニッコリと微笑んだ。

「雑音(ノイズ)なんて一つもない。……聞こえるのは、海流のメロディと敵の汚い足音だけ」

彼女はコンソールのキーを軽やかに叩いた。

「行くよ、みんな!私が案内する!」

ズズズン……! 

アーク・ロイヤルが再発進する。 
船体が霧に触れた瞬間、再び幻魔将軍ミラージュの念話が響いてきた。

『ククク……愚かな。一度逃げ帰った分際でまた我が迷宮に挑むか』

霧が渦巻き船の周囲に無数の幻影を作り出す。 
巨大な海竜、沈没船の亡霊、そして壁のように立ちはだかる岩盤。

『貴様らの目は節穴だ。恐怖と欲望に溺れ、永遠に彷徨うがいい!』

「……ううん、節穴なのはあんたの方だよ」

樹里が冷たく言い放つ。
モニターには巨大な岩壁が迫っていた。

衝突すれば大破は免れない。 
操舵手のののかが息を呑む。

「樹里、壁よ!避けなきゃ!」
「ううん、そのまま直進!」

樹里が即座に指示を出す。

「ええっ!?」
「あれは偽物(フェイク)!ただの魔力の靄(もや)だよ!」

樹里の目には見えていた。 
その岩壁からは「質量」の音がしない。
スカスカの空洞音が響いているだけだ。

「信じてののかちゃん!フルスピードで!」
「……わかった!信じる!」

ののかが覚悟を決めスロットルを押し込む。 
アーク・ロイヤルは減速することなく岩壁へと突っ込んだ。

シュッ……。 
衝撃はなかった。 
船体は岩をすり抜け、その向こう側に広がっていた広い海路へと躍り出た。

「抜けた!本当に幻影だった!」
「すごいネ!樹里には全部お見通しアルか!」

王美鈴(ワン・メイリン)が歓声を上げる。

「次は右舷40度!そこにいる巨大イカは無視していいよ、ただの映像だから!」
「了解!」
「左舷、下から来る魚雷みたいな影……あれは本物!迎撃して!」
「任せて!」

樹里のナビゲートは神懸かっていた。 
彼女の【超感覚探知(クリア・センサー)】は、ミラージュの作り出す精巧な幻影と実体のある攻撃を音と魔力波形の違いで瞬時に聞き分けていたのだ。

「ふふっ、わかる……全部わかるよぉ♡相田くんが『繋がって』くれたおかげだね……」

彼女は恍惚とした表情で自分の下腹部をさすった。 
そこにはまだ、ミナトから注がれた熱い楔の感覚が残っている。
それが彼女のアンカーとなり、決して狂わない羅針盤となっていた。

『な、なぜだ……!?なぜ我が幻影が見破られる!?』

ミラージュの声に焦りが混じり始める。

『ええい、ならば数で押し潰してくれる!』

霧が濃くなり視界が完全に閉ざされた。 
全方位から殺気を含んだ気配が迫る。

「……ここだね」

樹里は慌てなかった。

「相田くん、新兵器の出番だよ!」
「ああ、わかってる!」

僕はコンソールの赤いスイッチを入れた。

「オプション装備、展開!行け、『ジュエル・シーカー』!」

船体上部のハッチが開き数機の小型ドローンが射出された。 
それらは魚のように水中を高速で泳ぎ回り、先端のレンズから特殊な波動を放つ。 
これは樹里の探知能力を拡張し、リンクさせるための端末だ。

「リンク完了……。見つけた!」

樹里がモニターの一点を指差した。

「あそこの神殿の屋根……あの飾りの宝石の中に本物の『真実の宝玉』が隠されてる!」
「よし!美鈴、回収を!」
「アイヨッ!」

船外に出た美鈴が水流を纏って突撃する。 
ダミーの宝箱や偽の宝石の山には目もくれず、一直線に屋根の飾りへ。 

ガシィッ!

「捕ったドォォォ!」

美鈴が拳大の青い宝玉を引っぺがし船内へと持ち帰った。

「これが……わたくしたちの守り神……」

人魚姫マリンが涙ぐみながら宝玉を受け取る。

「マリン、お願いできるか?」
「はい! この光で奴の悪しき霧を払います!」

マリンが宝玉を掲げ祈りを捧げる。 
同時に、僕もアーク・ロイヤルのシステムを起動させた。

「解析(アナライズ)・サーチライト、照射ッ!」

カッ!!!! 

アーク・ロイヤルの船首から強烈な光の束が放たれた。 
同時に『真実の宝玉』からも清浄な青い波動が広がる。 
科学と魔法、二つの「真実の光」が深海の闇を切り裂いた。

ジュワワワワッ……!

光が当たると濃密だった白い霧が悲鳴を上げて蒸発していく

 『グオォォォッ!?やめろ、照らすな!我が結界が……!』

霧が晴れた先にその姿はあった。
それまでは空間に溶け込んでいた半透明の影が光によって強制的に実体化させられ、黒いゼリー状の醜い怪物の姿を露呈した。

「見えた!あれが本体だ!」

ののかが叫ぶ。

「樹里、核(コア)は!?」
「胸の真ん中! ……あそこだけすごく嫌な音がする!」

樹里が座標を指定する。 
ミラージュは実体化させられ逃げ場を失っていた。

『ば、馬鹿な……我は幻魔将軍……実体などないはず……!』
「残念だったな。……僕の可愛い探知係(スカウト)からはもう逃げられないよ」

僕は魚雷発射管のトリガーに指をかけた。

「樹里を泣かせた罪……その身で償え!」

「全門、斉射ッ!!!」

ズドドドドドドドッ!!! 

アーク・ロイヤルの側面から、無数の魔法魚雷とあらかじめ装填されていた美鈴の気弾が発射された。 それらは樹里の誘導により、複雑な機動を描いてミラージュへと殺到する。

『ひぃぃぃッ!?や、やめ……!』

ドカァァァァァァァン!!!!! 

深海で巨大な爆発が起きた。 
衝撃波が海水を揺らす。

『ギャアアアアアアア……ッ!見え……すぎる……ッ!』

断末魔と共に黒いゼリー状の巨体は四散し、光の粒子となって海に溶けていった。

振動が収まるとそこには元の静寂が戻っていた。 
ただし不気味な霧はない。 
サーチライトに照らされた海底には珊瑚や真珠で飾られた美しい「人魚の里」の全貌が広がっていた。 

「……倒した?」

くるみが恐る恐る尋ねる。

「うん。……嫌なノイズ、全部消えたよ」

樹里がヘッドホンを外し晴れやかな笑顔でVサインを作った。

「反応なし!完全勝利だよ!」

「やったぁぁぁぁっ!
 「ざまぁみろネ!」

船内が歓喜に包まれる。
人魚姫マリンは、モニターに映る解放された故郷を見てその場に泣き崩れた。

「ありがとうございます……!本当に、ありがとうございます……!」
「よかったな、マリン」
「はい……!これで、父上や母上も解放されます……!」

その後、僕たちは人魚の里に招かれ熱烈な歓迎を受けた。 
霧から解放された人魚たちが、美しい尾ひれを揺らしてアーク・ロイヤルの周りを泳ぎ回り、感謝の歌を歌ってくれる。 
それは樹里にとっても最高の癒やしとなる美しい音色だった。

「……ねえ、相田くん」

祝宴の最中樹里が僕の袖を引いた。 
彼女は少し顔を赤らめ上目遣いで僕を見ている。

「ん? どうした?」
「あのね……耳、治ったみたい」
「そうか。よかった」
「うん。……でもね」

彼女はモジモジしながら僕の耳元に口を寄せた。

「治ったけど……相田くんの声だけは特別に聞こえるの」
「特別?」
「うん。……相田くんの声を聞くと、体の奥がキュンってして……また『チューニング』してほしくなっちゃうの……♡」

彼女の吐息が耳にかかり僕の背筋がゾクリとする。

「だから……また、してね?……私のセンサー、相田くん専用になっちゃったみたいだから♡」

彼女のエメラルドグリーンの瞳は、どんな宝石よりも美しく、愛欲と信頼で輝いていた。 
幻影を打ち破った僕たちは、また一つ強い絆(と性癖)を手に入れたのだ。 
深海の冒険は最高の大団円(ハッピーエンド)で幕を閉じた。
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