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第9章 魔大陸への上陸と最後の料理人 ~灼熱の将軍vsエプロンの聖女~
蘇れ、緑の巨木 ~魔導プラント要塞『ガイア・キッチン』起動~
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「燃えろ!燃えろぉ!世界樹など、ただの薪にすぎん!」
ハイエルフの隠れ里は焦熱地獄と化していた。
火魔将軍イグニス。
全身が溶岩と黒曜石で構成された巨人が両手から絶え間なく業火を放ち結界を焼き破ろうとしている。
「くっ……もう結界が持ちません!」
「熱い……空気が、燃えている……」
セレスティア姫とエルフの戦士たちが魔法で対抗するが、イグニスの圧倒的な火力を前には蝋燭の火も同然だった。
里の畑は干上がり残されたわずかな草木も灰になっていく。
「ハハハ!絶望しろ!貴様らが守ってきた命など俺の炎の前では無力だ!」
「いいえ。……命は、そんな簡単に消えたりしません!」
轟音と共に、イグニスの炎を切り裂いて、純白の巨体が広場の上空に現れた。
アーク・ロイヤルだ。
だが、その姿は先程までとは変わっていた。
船体各部から緑色のパイプラインが血管のように走り、甲板には巨大なガラスドームと、四本の多関節アームが展開されている。
そして船首に立つのは、僕、相田ミナトと――。
「……篠原真美!?」
「雰囲気が……違う?」
エルフたちが目を見張る。
そこに立つ真美は神々しいまでのオーラを纏っていた。
肌は内側から発光するように艶めき、豊満な肢体からは生命力の奔流が溢れ出している。
その手には、先程の「調理」で完成した黄金色に輝く小瓶が握られていた。
「イグニス!お前の暴食もそこまでだ!」
僕が叫ぶ。
「ここからは、僕たちの『調理(ターン)』だ!……いくぞ、真美!」
「はいっ!……世界樹さん、お腹いっぱい食べてください!」
真美が小瓶をコンソールの投入口にセットした。
カシュッ。
黄金の液体――『世界樹の霊薬(エリクサー)』が、アーク・ロイヤルの動力炉へと流し込まれる。
ドクンッ!!!
船全体がまるで巨大な心臓のように脈打った。
《エネルギー充填率、測定不能》 《『神の調合(マザーズ・レシピ)』を確認》 《環境改善型・魔導プラント要塞『ガイア・キッチン』、起動します》
「散布開始(サーブ・オン)!」
真美が両手を広げる。
シュバァァァァァァッ!!!
アーク・ロイヤルの船体下部に設置された無数のスプリンクラーから、霧状になった液体が一斉に噴射された。
それはただの水ではない。
真美の愛液と、僕の精気、そして各種レア素材が融合し、アーク・ロイヤルの魔力で増幅された超高濃度の生命エネルギーの雨だ。
「な、なんだこの甘い匂いは!?」
イグニスが怯む。
戦場に、蜂蜜とミルク、そして花の香りが混ざった芳醇な香りが充満する。
そして奇跡が起きた。
ジュワワワワッ……!
黄金の雨が大地に触れた瞬間、黒く炭化していた地面が瞬く間に緑色に染まった。
死んでいた土壌が蘇り草花が爆発的な速度で芽吹いていく。
「あ、あれを見てください!」
セレスティア姫が叫ぶ。
広場の中央、黒い墓標のようだった世界樹の巨木。
その幹に光る雨が染み込んでいく。
ズズズズズズズッ……!
地響きと共に枯れ木に色が戻った。
枝が伸び、瑞々しい緑の葉が茂り、たった数秒で里全体を覆うほどの巨大な樹冠が再生したのだ。
さらに、枝の先にはたわわに実った黄金の果実が輝いている。
「馬鹿な……!死んだ木が一瞬で蘇っただと!?」
イグニスが後ずさる。
世界樹から放たれる清浄な魔力が彼の瘴気と炎を押し返していく。
「これが『食』の力です!」
真美が凛とした声で宣言する。
「栄養を与えれば命は何度だって立ち上がれる!……貴方の破壊だけの炎なんてこの『命のスープ』の前では無力です!」
「お、おのれぇぇぇ!小娘がぁぁぁ!」
激昂したイグニスが全身の炎を膨れ上がらせた。
「俺の料理(ハカイ)を否定するな!ならば、その船ごと丸焼きにしてくれるわ!」
ゴォォォォォォッ!
イグニスの口から太陽のような極大の火球が吐き出された。
アーク・ロイヤルを飲み込むほどのサイズだ。
「危ない!」
「相田くん!」
ヒロインたちが悲鳴を上げる。
だが、真美は動じなかった。
彼女はコンソールのレバーをまるでフライパンの柄を握るようにガシリと掴んだ。
「その火力じゃ……表面を焦がすことすらできません!」
真美がレバーを捌く。
ギュイィィィン!
アーク・ロイヤルの甲板から伸びていた多関節アームの一つが高速で動いた。
その先端にはミスリル合金製の巨大な円盤――どう見ても「中華鍋」の形をしたシールドが装着されていた。
「【強火返し(ハイヒート・フリップ)】!」
カァァァァァァンッ!!!!!
心地よい金属音が響き渡る。
アームが操る巨大中華鍋がイグニスの火球を真正面から受け止め、そして手首のスナップを利かせて弾き返したのだ。
「なっ、何ィッ!?」
弾き返された火球はそのままイグニスの顔面に直撃した。
ドゴォォォォン!
「ぐギャアアアアッ!あ、熱ッ!自分の炎がッ!?」
「料理の基本です。……火加減を見誤れば、自分を焼くことになるんですよ」
真美が冷ややかに言い放つ。
「く、くそォォォ!ならば物理で潰す!」
イグニスが溶岩の剣を生成し跳躍した。
「美鈴、莉央、迎撃だ!」
「任せるアル!真美ちゃんが作った足場なら百人力ネ!」
蘇った緑の大地を蹴り、王美鈴(ワン・メイリン)と日向莉央(ひなた りお)が飛び出す
「【森羅万象脚】!」
「【崩拳】!」
ドカッ!バキッ!
二人の攻撃がイグニスの体勢を崩す。
「ののか、援護を!」
「了解!【必中・種子弾(シード・ショット)】!」
滝川ののか(たきがわ ののか)が放った矢はイグニスの関節に突き刺さり、そこから急速に蔦(ツタ)が伸びて動きを拘束した。
世界樹の加護を受けた植物は、火魔将軍の体表でも燃え尽きることなく鋼鉄のように締め上げる。
「ぐ、動けん……!なんだこの植物は!?」
「みんなの力が世界樹と共鳴してるんだ」
僕、相田ミナトは真美の肩に手を置いた。
「真美、トドメだ。……君の最高の『調理』で彼を終わらせてあげよう」
「はい、相田さん!」
真美がメインコンソールに手をかざす。
ガイア・キッチンの全エネルギーがアームの先端に集束する。
「貴方は食材としても失格です。……これ以上、誰の口にも入らないように」
アームが変形し、巨大なプレス機のような形状になる。
そこには【圧力(プレッシャー)】の魔力紋が輝いていた。
「返品(廃棄処分)させていただきます!」
「【超高圧・廃棄プレス(ダスト・シュート)】ッ!!!」
ズドォォォォォォォォンッ!!!
アーク・ロイヤルのアームがイグニスの頭上から全力で叩きつけられた。
世界樹の根がイグニスの足を固定し逃げ場はない。
「や、やめろぉぉぉ!俺は、四天王最後のォォォッ……!」
グシャッ。
断末魔は一瞬で途切れた。
圧倒的な圧力と浄化の魔力によって、火魔将軍の巨体は粉々に粉砕された。
黒い破片となった彼はさらに降り注ぐ霊薬ミストによって浄化されただの土塊へと還っていった。
「……ごちそうさまでした」
真美が静かに手を合わせる。
炎が消え瘴気が晴れていく。
空を覆っていた紫色の雲が割れ、久しぶりに澄んだ青空と太陽が顔を出した。
蘇った世界樹は太陽の光を浴びてキラキラと輝き、その足元には色とりどりの花が咲き乱れている。
「勝った……」
「イグニスを、倒したぞーっ!」
エルフたちが歓声を上げる。
「すごい……。本当に世界が変わったみたい」
牧野樹里(まきの じゅり)が緑に覆われた大地を見て目を輝かせる。
「見て見て!そこら中にレアな薬草が生えてるよ!」
アーク・ロイヤルから降りた僕たちをセレスティア姫が涙を流して迎えた。
「ありがとうございます……!あなた方は、私たちの救世主です!」
彼女は真美の手を取り深く頭を下げた。
「特に篠原様。……あなたの愛と料理がこの枯れた大地に命を吹き込んでくれました。このご恩は一生忘れません」
「い、いえ!私はただ、みんなにお腹いっぱい食べてほしかっただけで……」
真美は照れくさそうに頬を掻いた。
「それに……一人じゃ無理でした。相田さんが私に『力』をくれたから……」
彼女は僕を見てはにかんだ。
その笑顔は勝利の女神のように美しく、そしてどこか艶っぽかった。
「さあ、皆さん!」
真美がパンと手を叩く。
「湿っぽいのはおしまいです!世界樹さんも元気になったし、食材もたくさん実りました!」
彼女は蘇った畑の野菜や世界樹の果実を指差した。
「今日は祝勝会です!私のフルコースで、お腹がはち切れるまでおもてなししますからね!」
「わーい!真美ちゃんのご飯!」
「お肉!お肉もあるアルか!?」
「ありますよ! ……あ、相田さんは夜、別の『デザート』がありますから空けておいてくださいね?♡」
耳元で囁かれた甘い誘惑に僕は思わず生唾を飲み込んだ。
その夜。
世界樹の根本で盛大な宴が開かれた。
エルフたちの楽器が奏でる音楽と、真美の絶品料理。
笑顔と笑い声が夜空に響き渡る。
魔王城への道はまだ続くが、今夜だけはこの奇跡の緑の中で平和な時を噛み締めていた。
宴の最中、少し顔を赤くしたセレスティア姫が僕とヒロインたちの元へやってきた。
「……ミナト様。そして皆様」
彼女は恥ずかしそうにしかし意味深な瞳で告げた。
「皆様には、特別なお礼をさせていただきたいと思います」
「お礼?」
「はい。……我が里の最奥、世界樹の根元に湧き出した『秘密の泉』へご招待いたします」
「泉?」
「王族のみが入ることを許された奇跡の温泉です。……そこには、疲労回復だけでなく、女性の肌を永遠に輝かせ……そして」
彼女は声を潜めた。
「愛し合う男女が入れば、その絆を深め……新たな命を宿しやすくする『子宝の効能』もあると言われています」
「「「!!!」」」
その言葉にヒロインたちの目の色が変わった。
「び、美肌効果!?」
「子宝……つまり、種付けプレスし放題ってコト!?」
「行く!絶対行く!」
「相田くん、行きましょ!今すぐ!」
宴そっちのけで盛り上がる女性陣に僕は連行される未来を悟った。
戦いの後は癒やし。
そして、癒やしの先には――またしても激しい夜が待っているようだ。
ハイエルフの隠れ里は焦熱地獄と化していた。
火魔将軍イグニス。
全身が溶岩と黒曜石で構成された巨人が両手から絶え間なく業火を放ち結界を焼き破ろうとしている。
「くっ……もう結界が持ちません!」
「熱い……空気が、燃えている……」
セレスティア姫とエルフの戦士たちが魔法で対抗するが、イグニスの圧倒的な火力を前には蝋燭の火も同然だった。
里の畑は干上がり残されたわずかな草木も灰になっていく。
「ハハハ!絶望しろ!貴様らが守ってきた命など俺の炎の前では無力だ!」
「いいえ。……命は、そんな簡単に消えたりしません!」
轟音と共に、イグニスの炎を切り裂いて、純白の巨体が広場の上空に現れた。
アーク・ロイヤルだ。
だが、その姿は先程までとは変わっていた。
船体各部から緑色のパイプラインが血管のように走り、甲板には巨大なガラスドームと、四本の多関節アームが展開されている。
そして船首に立つのは、僕、相田ミナトと――。
「……篠原真美!?」
「雰囲気が……違う?」
エルフたちが目を見張る。
そこに立つ真美は神々しいまでのオーラを纏っていた。
肌は内側から発光するように艶めき、豊満な肢体からは生命力の奔流が溢れ出している。
その手には、先程の「調理」で完成した黄金色に輝く小瓶が握られていた。
「イグニス!お前の暴食もそこまでだ!」
僕が叫ぶ。
「ここからは、僕たちの『調理(ターン)』だ!……いくぞ、真美!」
「はいっ!……世界樹さん、お腹いっぱい食べてください!」
真美が小瓶をコンソールの投入口にセットした。
カシュッ。
黄金の液体――『世界樹の霊薬(エリクサー)』が、アーク・ロイヤルの動力炉へと流し込まれる。
ドクンッ!!!
船全体がまるで巨大な心臓のように脈打った。
《エネルギー充填率、測定不能》 《『神の調合(マザーズ・レシピ)』を確認》 《環境改善型・魔導プラント要塞『ガイア・キッチン』、起動します》
「散布開始(サーブ・オン)!」
真美が両手を広げる。
シュバァァァァァァッ!!!
アーク・ロイヤルの船体下部に設置された無数のスプリンクラーから、霧状になった液体が一斉に噴射された。
それはただの水ではない。
真美の愛液と、僕の精気、そして各種レア素材が融合し、アーク・ロイヤルの魔力で増幅された超高濃度の生命エネルギーの雨だ。
「な、なんだこの甘い匂いは!?」
イグニスが怯む。
戦場に、蜂蜜とミルク、そして花の香りが混ざった芳醇な香りが充満する。
そして奇跡が起きた。
ジュワワワワッ……!
黄金の雨が大地に触れた瞬間、黒く炭化していた地面が瞬く間に緑色に染まった。
死んでいた土壌が蘇り草花が爆発的な速度で芽吹いていく。
「あ、あれを見てください!」
セレスティア姫が叫ぶ。
広場の中央、黒い墓標のようだった世界樹の巨木。
その幹に光る雨が染み込んでいく。
ズズズズズズズッ……!
地響きと共に枯れ木に色が戻った。
枝が伸び、瑞々しい緑の葉が茂り、たった数秒で里全体を覆うほどの巨大な樹冠が再生したのだ。
さらに、枝の先にはたわわに実った黄金の果実が輝いている。
「馬鹿な……!死んだ木が一瞬で蘇っただと!?」
イグニスが後ずさる。
世界樹から放たれる清浄な魔力が彼の瘴気と炎を押し返していく。
「これが『食』の力です!」
真美が凛とした声で宣言する。
「栄養を与えれば命は何度だって立ち上がれる!……貴方の破壊だけの炎なんてこの『命のスープ』の前では無力です!」
「お、おのれぇぇぇ!小娘がぁぁぁ!」
激昂したイグニスが全身の炎を膨れ上がらせた。
「俺の料理(ハカイ)を否定するな!ならば、その船ごと丸焼きにしてくれるわ!」
ゴォォォォォォッ!
イグニスの口から太陽のような極大の火球が吐き出された。
アーク・ロイヤルを飲み込むほどのサイズだ。
「危ない!」
「相田くん!」
ヒロインたちが悲鳴を上げる。
だが、真美は動じなかった。
彼女はコンソールのレバーをまるでフライパンの柄を握るようにガシリと掴んだ。
「その火力じゃ……表面を焦がすことすらできません!」
真美がレバーを捌く。
ギュイィィィン!
アーク・ロイヤルの甲板から伸びていた多関節アームの一つが高速で動いた。
その先端にはミスリル合金製の巨大な円盤――どう見ても「中華鍋」の形をしたシールドが装着されていた。
「【強火返し(ハイヒート・フリップ)】!」
カァァァァァァンッ!!!!!
心地よい金属音が響き渡る。
アームが操る巨大中華鍋がイグニスの火球を真正面から受け止め、そして手首のスナップを利かせて弾き返したのだ。
「なっ、何ィッ!?」
弾き返された火球はそのままイグニスの顔面に直撃した。
ドゴォォォォン!
「ぐギャアアアアッ!あ、熱ッ!自分の炎がッ!?」
「料理の基本です。……火加減を見誤れば、自分を焼くことになるんですよ」
真美が冷ややかに言い放つ。
「く、くそォォォ!ならば物理で潰す!」
イグニスが溶岩の剣を生成し跳躍した。
「美鈴、莉央、迎撃だ!」
「任せるアル!真美ちゃんが作った足場なら百人力ネ!」
蘇った緑の大地を蹴り、王美鈴(ワン・メイリン)と日向莉央(ひなた りお)が飛び出す
「【森羅万象脚】!」
「【崩拳】!」
ドカッ!バキッ!
二人の攻撃がイグニスの体勢を崩す。
「ののか、援護を!」
「了解!【必中・種子弾(シード・ショット)】!」
滝川ののか(たきがわ ののか)が放った矢はイグニスの関節に突き刺さり、そこから急速に蔦(ツタ)が伸びて動きを拘束した。
世界樹の加護を受けた植物は、火魔将軍の体表でも燃え尽きることなく鋼鉄のように締め上げる。
「ぐ、動けん……!なんだこの植物は!?」
「みんなの力が世界樹と共鳴してるんだ」
僕、相田ミナトは真美の肩に手を置いた。
「真美、トドメだ。……君の最高の『調理』で彼を終わらせてあげよう」
「はい、相田さん!」
真美がメインコンソールに手をかざす。
ガイア・キッチンの全エネルギーがアームの先端に集束する。
「貴方は食材としても失格です。……これ以上、誰の口にも入らないように」
アームが変形し、巨大なプレス機のような形状になる。
そこには【圧力(プレッシャー)】の魔力紋が輝いていた。
「返品(廃棄処分)させていただきます!」
「【超高圧・廃棄プレス(ダスト・シュート)】ッ!!!」
ズドォォォォォォォォンッ!!!
アーク・ロイヤルのアームがイグニスの頭上から全力で叩きつけられた。
世界樹の根がイグニスの足を固定し逃げ場はない。
「や、やめろぉぉぉ!俺は、四天王最後のォォォッ……!」
グシャッ。
断末魔は一瞬で途切れた。
圧倒的な圧力と浄化の魔力によって、火魔将軍の巨体は粉々に粉砕された。
黒い破片となった彼はさらに降り注ぐ霊薬ミストによって浄化されただの土塊へと還っていった。
「……ごちそうさまでした」
真美が静かに手を合わせる。
炎が消え瘴気が晴れていく。
空を覆っていた紫色の雲が割れ、久しぶりに澄んだ青空と太陽が顔を出した。
蘇った世界樹は太陽の光を浴びてキラキラと輝き、その足元には色とりどりの花が咲き乱れている。
「勝った……」
「イグニスを、倒したぞーっ!」
エルフたちが歓声を上げる。
「すごい……。本当に世界が変わったみたい」
牧野樹里(まきの じゅり)が緑に覆われた大地を見て目を輝かせる。
「見て見て!そこら中にレアな薬草が生えてるよ!」
アーク・ロイヤルから降りた僕たちをセレスティア姫が涙を流して迎えた。
「ありがとうございます……!あなた方は、私たちの救世主です!」
彼女は真美の手を取り深く頭を下げた。
「特に篠原様。……あなたの愛と料理がこの枯れた大地に命を吹き込んでくれました。このご恩は一生忘れません」
「い、いえ!私はただ、みんなにお腹いっぱい食べてほしかっただけで……」
真美は照れくさそうに頬を掻いた。
「それに……一人じゃ無理でした。相田さんが私に『力』をくれたから……」
彼女は僕を見てはにかんだ。
その笑顔は勝利の女神のように美しく、そしてどこか艶っぽかった。
「さあ、皆さん!」
真美がパンと手を叩く。
「湿っぽいのはおしまいです!世界樹さんも元気になったし、食材もたくさん実りました!」
彼女は蘇った畑の野菜や世界樹の果実を指差した。
「今日は祝勝会です!私のフルコースで、お腹がはち切れるまでおもてなししますからね!」
「わーい!真美ちゃんのご飯!」
「お肉!お肉もあるアルか!?」
「ありますよ! ……あ、相田さんは夜、別の『デザート』がありますから空けておいてくださいね?♡」
耳元で囁かれた甘い誘惑に僕は思わず生唾を飲み込んだ。
その夜。
世界樹の根本で盛大な宴が開かれた。
エルフたちの楽器が奏でる音楽と、真美の絶品料理。
笑顔と笑い声が夜空に響き渡る。
魔王城への道はまだ続くが、今夜だけはこの奇跡の緑の中で平和な時を噛み締めていた。
宴の最中、少し顔を赤くしたセレスティア姫が僕とヒロインたちの元へやってきた。
「……ミナト様。そして皆様」
彼女は恥ずかしそうにしかし意味深な瞳で告げた。
「皆様には、特別なお礼をさせていただきたいと思います」
「お礼?」
「はい。……我が里の最奥、世界樹の根元に湧き出した『秘密の泉』へご招待いたします」
「泉?」
「王族のみが入ることを許された奇跡の温泉です。……そこには、疲労回復だけでなく、女性の肌を永遠に輝かせ……そして」
彼女は声を潜めた。
「愛し合う男女が入れば、その絆を深め……新たな命を宿しやすくする『子宝の効能』もあると言われています」
「「「!!!」」」
その言葉にヒロインたちの目の色が変わった。
「び、美肌効果!?」
「子宝……つまり、種付けプレスし放題ってコト!?」
「行く!絶対行く!」
「相田くん、行きましょ!今すぐ!」
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