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第14章 魅惑のポーションは誰のため? どきどき☆恋愛サバイバル!
エピローグ 舞台裏の脚本家
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戦いは、終わった。
工房には、以前よりも、少しだけ甘く、そして、遥かに温かい空気が流れていた。
床に散らばっていた残骸は、皆で協力して片付けた。
割れたティーカップの代わりに、エミリアさんが持ってきた、素朴な焼き物のカップが並んでいる。
僕の、不器用な告白の後、僕たちは、誰からともなく、互いの想いを、少しだけ、語り合ったのだ。
それは、まだ、恋人たちの甘い囁きとは、ほど遠いものだったかもしれない。
だが、僕たちの心は、確かに、あのピンク色の霧が晴れた後の、雨上がりの空のように、澄み渡っていた。
その夜。
ルージュは、一人、自室で、忌まわしき魔導書『サキュバスの口づけ』を、処分しようとしていた。
暖炉の炎の中に、この、全ての元凶を投げ込み、灰にしてしまおう、と。
もう、こんな、小手先の術に頼るのは、やめだ。
アタシは、アタシ自身の力で、あの朴念仁の心を、必ず、射止めてみせる。
そう、固く、決意して。
彼女が、古びた革の表紙に、その手をかけた、まさに、その時だった。
「待ってくれ、ルージュ君」
静かな、しかし、有無を言わさぬ声が、背後からかけられた。
振り返ると、そこに立っていたのは、いつの間にか、音もなく入室していた、アルトだった。
「…な、何よ。ノックくらいしなさいよね、この朴念仁」
ルージュが、心臓の跳ね上がりを隠すように、憎まれ口を叩く。
だがアルトはそんな彼女の言葉には答えず、ただ真っ直ぐに、彼女の手の中にある魔導書を見つめていた。
「その本を少し見せてもらえないだろうか」
「い、嫌よ!これは、その…アタシのプライベートな…!」
「頼む」
僕のあまりにも真剣な眼差しに彼女はぐっと言葉を詰まらせた。
しぶしぶといった体で彼女が差し出した魔導書を僕は慎重に受け取る。
そしてその背表紙に極小の、しかし僕の目には決して見逃すことのできない一つの紋章が刻まれていることにアルトが気づく。
それは歪んだ仮面と薔薇を組み合わせた禍々しいデザイン。
かつてカミヤが使っていたものと同じ「虚構の楽園」の紋章だった。
工房の空気が一瞬にして凍り付いた。
僕のただならぬ気配を察して、他の四人の少女たちも部屋の入り口に集まってきていた。
「アルト…?どうしたの、その本…」
リゼットが不安そうな声を上げる。
僕は何も言わず、その紋章を皆に見えるように指し示した。
その瞬間、少女たちの顔から血の気が引いていくのがわかった。
あの偽りの英雄、ゴールデン・ジャスティス。
僕たちの心を一度は完全に砕いた、あの悪辣な演出家の記憶。
「…そうか。これもまた奴らの『脚本』だったというわけか」
僕の地を這うような低い声が静かな工房に響き渡る。
僕たちの恋心すらも掌の上で転がし、エンターテインメントとして消費する悪辣な演出家たち。
僕たちが本気で悩み、苦しみ、そして、ようやく見つけ出したこの温かい絆すらも。
全てが奴らの描いた茶番劇の一部だったというのか。
その事実は僕たちの心に、新たな、そして決して消えることのない怒りの炎を灯した。
「…ふざけるな」
最初に怒りを爆発させたのはリゼットだった。
「人の本気の気持ちを…!恋心をおもちゃにするなんて…!絶対に許さない…!」
彼女の身体から紅蓮のオーラが燃え上がる。
「…最低ですわ。人の心を弄ぶなど、騎士の誇り以前に人として許される行為ではありません」
クラウディアがその碧眼に絶対零度の怒りを宿す。
「ひどいです…人の心は、そんな簡単に書き換えられるものではないはずなのに…」
エミリアが涙を浮かべ、その小さな拳を固く握りしめていた。
「…斬る。次こそは、必ず、斬る。そのふざけた仮面ごと微塵切りにしてくれるでござる」
菖蒲のその静かな声には底知れない殺気が込められていた。
そしてルージュは。
全ての元凶となってしまった彼女は、わなわなとその豊満な身体を震わせていた。
「…アタシの、初恋を…アタシの、この、本気のどきどきを…!よくも利用してくれたわね…!世界征服よりも先にあんたたちをこの世から消し去ってあげる…!」
彼女の身体から紫電がバチバチと激しく迸っていた。
五人分の純粋な、そして聖なる怒り。
その中心で僕は静かに、そして冷たく笑った。
「…面白いじゃないか」
そのあまりにも不気味な笑みに、五人の少女たちがはっとしたように僕の顔を見つめる。
「次の舞台では、観客ではなく役者としてど真ん中に引きずり出してやる。そして教えてやろう。ヒーローたちの本気の恋路を邪魔するとどうなるのかをな」
僕たちの次なる戦いの目標が確かに定まった瞬間だった。
僕たちの、甘く騒がしいラブコメディは、今、悪辣な脚本家への復讐劇という新たな章へとその幕を開けたのだ。
この温かい絆を踏みにじった罪。
その代償は高くつくぞ、虚構の楽園。
僕の、そして僕の愛するヒーローたちの本気の怒りをその身で味わうがいい。
工房には、以前よりも、少しだけ甘く、そして、遥かに温かい空気が流れていた。
床に散らばっていた残骸は、皆で協力して片付けた。
割れたティーカップの代わりに、エミリアさんが持ってきた、素朴な焼き物のカップが並んでいる。
僕の、不器用な告白の後、僕たちは、誰からともなく、互いの想いを、少しだけ、語り合ったのだ。
それは、まだ、恋人たちの甘い囁きとは、ほど遠いものだったかもしれない。
だが、僕たちの心は、確かに、あのピンク色の霧が晴れた後の、雨上がりの空のように、澄み渡っていた。
その夜。
ルージュは、一人、自室で、忌まわしき魔導書『サキュバスの口づけ』を、処分しようとしていた。
暖炉の炎の中に、この、全ての元凶を投げ込み、灰にしてしまおう、と。
もう、こんな、小手先の術に頼るのは、やめだ。
アタシは、アタシ自身の力で、あの朴念仁の心を、必ず、射止めてみせる。
そう、固く、決意して。
彼女が、古びた革の表紙に、その手をかけた、まさに、その時だった。
「待ってくれ、ルージュ君」
静かな、しかし、有無を言わさぬ声が、背後からかけられた。
振り返ると、そこに立っていたのは、いつの間にか、音もなく入室していた、アルトだった。
「…な、何よ。ノックくらいしなさいよね、この朴念仁」
ルージュが、心臓の跳ね上がりを隠すように、憎まれ口を叩く。
だがアルトはそんな彼女の言葉には答えず、ただ真っ直ぐに、彼女の手の中にある魔導書を見つめていた。
「その本を少し見せてもらえないだろうか」
「い、嫌よ!これは、その…アタシのプライベートな…!」
「頼む」
僕のあまりにも真剣な眼差しに彼女はぐっと言葉を詰まらせた。
しぶしぶといった体で彼女が差し出した魔導書を僕は慎重に受け取る。
そしてその背表紙に極小の、しかし僕の目には決して見逃すことのできない一つの紋章が刻まれていることにアルトが気づく。
それは歪んだ仮面と薔薇を組み合わせた禍々しいデザイン。
かつてカミヤが使っていたものと同じ「虚構の楽園」の紋章だった。
工房の空気が一瞬にして凍り付いた。
僕のただならぬ気配を察して、他の四人の少女たちも部屋の入り口に集まってきていた。
「アルト…?どうしたの、その本…」
リゼットが不安そうな声を上げる。
僕は何も言わず、その紋章を皆に見えるように指し示した。
その瞬間、少女たちの顔から血の気が引いていくのがわかった。
あの偽りの英雄、ゴールデン・ジャスティス。
僕たちの心を一度は完全に砕いた、あの悪辣な演出家の記憶。
「…そうか。これもまた奴らの『脚本』だったというわけか」
僕の地を這うような低い声が静かな工房に響き渡る。
僕たちの恋心すらも掌の上で転がし、エンターテインメントとして消費する悪辣な演出家たち。
僕たちが本気で悩み、苦しみ、そして、ようやく見つけ出したこの温かい絆すらも。
全てが奴らの描いた茶番劇の一部だったというのか。
その事実は僕たちの心に、新たな、そして決して消えることのない怒りの炎を灯した。
「…ふざけるな」
最初に怒りを爆発させたのはリゼットだった。
「人の本気の気持ちを…!恋心をおもちゃにするなんて…!絶対に許さない…!」
彼女の身体から紅蓮のオーラが燃え上がる。
「…最低ですわ。人の心を弄ぶなど、騎士の誇り以前に人として許される行為ではありません」
クラウディアがその碧眼に絶対零度の怒りを宿す。
「ひどいです…人の心は、そんな簡単に書き換えられるものではないはずなのに…」
エミリアが涙を浮かべ、その小さな拳を固く握りしめていた。
「…斬る。次こそは、必ず、斬る。そのふざけた仮面ごと微塵切りにしてくれるでござる」
菖蒲のその静かな声には底知れない殺気が込められていた。
そしてルージュは。
全ての元凶となってしまった彼女は、わなわなとその豊満な身体を震わせていた。
「…アタシの、初恋を…アタシの、この、本気のどきどきを…!よくも利用してくれたわね…!世界征服よりも先にあんたたちをこの世から消し去ってあげる…!」
彼女の身体から紫電がバチバチと激しく迸っていた。
五人分の純粋な、そして聖なる怒り。
その中心で僕は静かに、そして冷たく笑った。
「…面白いじゃないか」
そのあまりにも不気味な笑みに、五人の少女たちがはっとしたように僕の顔を見つめる。
「次の舞台では、観客ではなく役者としてど真ん中に引きずり出してやる。そして教えてやろう。ヒーローたちの本気の恋路を邪魔するとどうなるのかをな」
僕たちの次なる戦いの目標が確かに定まった瞬間だった。
僕たちの、甘く騒がしいラブコメディは、今、悪辣な脚本家への復讐劇という新たな章へとその幕を開けたのだ。
この温かい絆を踏みにじった罪。
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