侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。

文字の大きさ
13 / 214
第一章 覚醒編

飛竜と叫びと、少年の決断

しおりを挟む
王都から南へ三日。風の音すら鋭く感じる辺境の村フェンリーナに、僕たちは到着した。



「飛竜の影を見た、っていうのは確かですか?」



ギルドの依頼状を見せると、出迎えた村長が疲れ切った顔で頷いた。



「三日前からです。夜になると、空に巨大な影と咆哮が……家畜も失踪し、皆おびえておりまして……」



「ご安心ください。これより僕たちが対応します」



真っ直ぐにそう言うと、背後から剣の師匠・セリナが小さく笑った。



「ほう。もう『僕たちが』なんて言えるようになったんだ?」



「頼もしくなったよねぇ、イッセイくん」

魔法の師匠・メルティも、にこにこと頷いている。







夜。空に、唸るような風音が走る。



「来た!」



飛竜が夜空を裂いて現れた。畑地に向かって急降下。



「フィーナ、警報を! ミュリルは左翼から! セリア、詠唱開始!」



「はいウサ!」「主、任されたにゃん!」「了解よっ!」



僕は即座に魔法巻物《氷棘の牢獄》を展開し、飛竜の翼を凍てつかせる。



「ギャアアァッ!」



片翼を失った飛竜が、木立に激突して体勢を崩す。



「セリナさん、メルティさん! 一気に畳みかけてください!」



「了解!」

「行くわよ、イッセイ!」







セリナの剣が火花を散らしながら飛竜の爪を受け止める。



「重たい! けどこれくらい、慣れたもんよ!」



その背後から、メルティが詠唱を終えた大規模魔法サンダーレインを空中に展開。雷が雨のように飛竜を打ちすえる。



その間にも仲間たちが奔走する。



ミュリルは俊敏な動きで足元をかき乱し、

フィーナは耳で飛竜の動きを先読みして回避と回復を担当、

セリアは詠唱完了とともに《スカーレット・スピア》を心臓に向けて正確に放つ。



「今だッ!」



僕はチュートリアルソードに魔力を集中し、胸元へ一直線に跳躍した。



――バシュッ!



飛竜が、巨大な体を引きずるようにして、ついに崩れ落ちた。







「やったウサー!」「討伐完了にゃん♪」「ふ、ふん。指示がマトモだったから助けてあげただけよ!」



皆の声が、戦場に暖かさを戻していく。



「……イッセイ」



メルティが、まっすぐ僕を見た。



「初めて“戦場の中心”に立った気分、どうだった?」



「……重たかったです。でも、皆が動いてくれたから……僕はただ、皆を信じただけです」



「それが“指揮”ってやつだ。上出来よ」

セリナが肩をぽんと叩いた。







辺境の村を守った一夜。

僕は初めて、本当の意味で“仲間と戦った”と感じた。



この先、まだまだ試練は続くだろう。

でも、きっと――



「この仲間たちとなら、どこへでも行ける気がする」



その確信が、静かに胸を熱くしていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

処理中です...