『転生悪役令嬢、スライムで世界を変える』 ~追放先で見つけたヌルヌルが産業革命を巻き起こしました~

のびすけ。

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終章:ぷるぷるの果てで、あなたと

ぷるぷるパニック! スライム女王、爆誕す

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王都での華々しい勝利と、元婚約者への痛快な“ざまぁ返し”。
私はようやく辺境の村での平穏な日々を取り戻し、その日はのんびりと紅茶をすすりながら、朝刊(スライム商会発行・試作版)を読んでいた。

「ふふん、今日も平和ね~。商会の売上も順調だし、工房も絶好調。スリィも膝の上で静かに……」

私の独り言を遮るように、工房の扉が勢いよく開いた。

『ティアナ様、たいへんです。工房の裏が、ぷるぷるしています』

スリィ(本体)が、普段の冷静さはどこへやら、ゼリーの身体をわなわなと震わせながら報告してきた。

「……ぷるぷる?」

いつものことじゃない、と呑気に返した私だったが、窓の外を覗き込んで、飲んでいた紅茶を盛大に噴き出した。

「──え、ちょっ、何これ!? スライム畑が、ぷるぷるの大洪水になってるじゃないの!!」

そこには、信じがたい光景が広がっていた。
ぷるぷる、ぷるぷる、ぷるぷるぷるぷる──。
視界の限り、青いゼリーの海。工房裏の畑という畑が、限界突破したスライムたちで埋め尽くされ、巨大な青い絨毯のように波打っている。

スライム発生数: 目測で100体以上。いや、もっといる。

スライム密度: 限界突破。

ぷにぷに指数: 災害レベル2.0(ただし、極めて癒し系)。

「な、なんでこんなことに!? 原因は何よ!?」
『……昨晩、私が開発していた“超・活力促進スライムジェル”の試作液が、保管タンクから漏れ、畑の土壌に染み込んだようです』
「あれ、肥料にしちゃ一番ダメなやつじゃないッ!!」

私の悲鳴と時を同じくして、村中にパニックの叫び声が響き渡った。

「おかーさーん! 井戸の中が、スライム温泉になってるよぉ!」
「うちの庭が、ぷるぷるに押し出されて隣の家と地続きになったぞォ!」
「大変だ! 教会の鐘がスライムに飲み込まれて、鳴らすと『ぷにょーん』って音しかしない!」

「ごめんなさい! 皆さん、本当にごめんなさい!!!」

私は村中を駆け回り、頭を下げて謝罪行脚をする羽目になった。
だが、ここでさらに奇妙な問題が発生する。

『ティアナ様。どうやら、このスライムたち、貴女にだけ異常に懐いているようです』
「どういうこと!?」

スリィの言う通りだった。私が村の広場に立った瞬間、溢れかえっていたスライムたちが、一斉に私の方を向く。そして、まるで女王に謁見する臣下のように、ぷるぷるぷると押し寄せてきて、私の足元に群がってくるのだ。

「や、やめて! 私はそんなに包容力ないから! このままだとスライムに埋もれて圧死しちゃうから!」

私が困惑していると、村人たちが遠巻きにひそひそと噂を始める。
「見ろ……スライムたちが、姫様に従っている……」
「まるで、女王アリに群がる働きアリのようだ……」

「何それ怖ッ!? 私、いつから女王様になったのよ!?」
『それはそれで、面白い国ができそうですね。ぷるぷる王国とか』
「やめて! 国、作らないで!!」

このままでは村がスライムに占拠されてしまう。
私は覚悟を決め、広場の中央に立ち、大きく息を吸い込んだ。

「スライムの皆さん! 聞いてちょうだい!」

私の声に、すべてのスライムがぴたりと動きを止める。

「あなたたちの新しいお家を用意します! だから、どうか、私についてきてくれませんか!」

すると、スライムたちはまるで統率の取れた軍隊のように、一斉にぷるんと一つ頷き、私の周りに整然と列を作り始めた。その光景を見て、ノエルが目を輝かせる。

「すごいッス、ティアナさん! まるで、伝説の女王様みたいッス!」
「だから女王じゃないって言ってるでしょ!」

こうして、私は意図せずして、スライム軍団を率いて隣の谷にある第2牧場へと向かう「ぷにぷに大行進」を指揮することになった。
私が木の枝にスリィを巻き付けた即席の「スライム旗」を振ると、スライムたちは楽しそうに「ぷに!ぷに!」と声を合わせながら、整然と後をついてくる。

そのあまりにもシュールで、どこか感動的な光景に、村人たちはいつしかパニックを忘れ、沿道から声援を送っていた。

「がんばれー! ぷにぷにー!」
「姫様、いってらっしゃーい!」

『群れの統率力、さすがスライムです。そして、それを率いるティアナ様は、やはり女王の器』
「すごいけど、なんか色々違う気がするのよ!!」

◆ ◆ ◆

数時間後、“スライム大増殖事件”は無事(?)収束した。
スライムたちは第2牧場で元気に暮らし始め、村は元の静けさを取り戻した。

……はずだった。
村の入口に、村長が善意で建ててくれたらしい、真新しい看板が立つまでは。

《祝・スライム王国建国 初代女王 ティアナ・ルクレール様》

「誰が建てたのおおおおおおおおおおおおッ!!!」

私の絶叫が、夕焼け空に虚しく響く。
膝の上で、スリィが『もちろん私です』と得意げに念波を送ってきたのは、言うまでもない。

こうして、私のスライムにおける、ぷるぷるな伝説は、また一つ、この地に刻まれてしまったのだった。
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