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第六部 銀河ぷにぷに議会! 届け、宇宙へのツッコミ!
光のぷにと闇のぷに――宇宙、最後の戦い
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「――我らは、宇宙の“ゼリーバランス”を、修正するために来た」
銀河議会の中央に降臨した、スリィの負の写し身、「ネガぷに」。
その存在が放つ、心を凍らせるような“絶望の波動”は、祝勝ムードに沸いていた議場を、一瞬にして、静寂と無気力の底へと叩き落とした。
千を超える異星の代表者たちが、まるで魂を抜かれたかのように、虚ろな目で椅子に座り込んでいる。希望も、喜びも、ぷにの温もりさえも、その黒いゼリーに吸い尽くされていく。
「くっ……! なんて、不快な……!」
私の前に、ライオネルとリムナが、盾を構えて立ちはだかる。だが、彼らの額にも、冷たい汗が浮かんでいた。
ネガぷには、その赤い瞳で、私とスリィを見据える。
「光のぷに……。その過剰な“癒し”こそが、宇宙に停滞を生む癌だ。進化とは、闘争の果てにある。貴様らの振りまく“安楽”は、生命から、生きるための“牙”を奪う、甘い毒にすぎない」
それは、ゼルガや、ドライ連盟が掲げた思想の、さらに先鋭化した、究極の虚無。
戦う相手は、もういない。目の前にいるのは、私たちの“ぷに”そのものが持つ、もう一つの可能性。光があれば、必ず生まれる、影だった。
「……面白いじゃない」
私は、恐怖に震える足を、ぐっと踏みしめた。
「あんたたちの言うことも、一理あるのかもしれないわね。でも、間違っていることが一つだけある」
「何?」
「“癒し”は、“停滞”じゃない。“次に進むための、エネルギー”よ!」
私は、スリィと、視線を交わす。
これは、物理的な戦いではない。思想と、哲学の、最終戦争だ。
「みんな、聞いて! 奴らの“絶望”に、私たちの“希望”をぶつけるのよ!」
私の号令一下、チームぷにの、最後の戦いが始まった。
「喰らいやがれ! これが、俺たちの“硬さ”だ!」
ライオネルが、鍛え上げた合金の槍を投擲する。だが、槍はネガぷにの黒い身体に、音もなく吸い込まれ、消えてしまった。
「物理攻撃は、無効ですの!?」
「いや、無駄じゃなかった!」
ルフ博士が、船からの遠隔分析で叫ぶ。
「今の一撃で、奴のエネルギー吸収量に、ほんの一瞬だけ、上限があることが分かった! 情報を、希望を、奴の許容量を超えるほど、叩き込み続ければ、勝機はある!」
その言葉を信じ、私たちは、それぞれの“ぷに”を、解き放った。
フォンとシャルロッテは、議会の放送システムをジャックし、全宇宙に向けて、ぷに文化の素晴らしさを説く、緊急放送を開始する。
ノエルは、気絶している議員たちの口に、栄養満点の「ぷにエナジーバー」を、そっと突っ込んで回っていた。ささやかだが、それは、絶望に抵抗する“生命力”そのものだった。
そして、私とスリィは、最後の賭けに出た。
『ティアナ様、シンクロを。私たちの全てを、奴にぶつけます』
「ええ、望むところよ!」
私とスリィの意識が、完全に一つになる。
そして、私たちは、ただの共感波動ではない、私たちの“記憶”そのものを、ネガぷにへと、叩きつけた。
悪役令嬢として、孤独だった日々。
スリィと出会い、初めて“温もり”を知った、あの森の夜。
仲間たちと、笑い、喧嘩し、温泉に入った、騒がしい毎日。
異世界で、魔王と“半熟たまご理論”を語り合った、湯けむりの記憶。
月面で、氷の女王と、温かい涙を流した、あの美しい夜明け。
喜びも、悲しみも、怒りも、愛も、羞恥も、絶望も、希望も……。
私たちの生きてきた、その、ぐちゃぐちゃで、不格好で、だけど、最高に愛おしい、全ての“感情”。
その、あまりにも膨大で、矛盾に満ちた“生命の情報”の奔流に、ただ“無”であることしか知らないネガぷには、耐えられなかった。
「……やめ……ろ……。理解、できない……。こんな、こんな……温かいものは……なんだ……これは……?」
ネガぷにの黒い身体に、亀裂が走る。
そして、光と共に、塵となって、消えていった。
その、最後の瞬間に、まるで初めて言葉を覚えた子供のように、か細い声が、響いた気がした。
「……あった……かい……」
◆
【宇宙編エピローグ:そして、宇宙はぷにに包まれた】
ネガぷにとの死闘から、数週間後。
首都惑星ネウロポリスの外港区には、かつてないほどの長蛇の列ができていた。
その先にあるのは、虹色の光を放つ、巨大なドーム型施設。
看板には、こう書かれている。
【ぷるぷる共存国直営・銀河温泉施設《スパ・オブ・ゼリー》本日グランドオープン!】
「整理券番号、9875番のお客様! あと、三時間ほどでご案内可能でございまーす!」
浴衣姿の私が、メガホン片手に叫んでいる。
そう、私たちは、戦いの後始末と、銀河へのぷに文化普及、そして、ちゃっかりとした商売を兼ねて、この地に、巨大な温泉施設をオープンさせたのだ。
施設内は、人種も言語もごちゃ混ぜのカオス状態だった。
「タコ、足が十一本、足湯一杯では足りない! 追加ぷに、希望!」
「そこの火星人のお客様! 足湯を鍋代わりに、お肉を煮込むのはおやめください!」
「我らの文化では、全ての液体がスープなのだ!」
「食文化と入浴文化の融合ですわ!」
そんな大混乱のさなか、一人の、派手なスーツを着た男が、スリィの前に、跪いた。
「君だッ! この透明感、このミステリアスな存在感! 我が銀河芸能事務所“スター&グミ”から、君を、宇宙初の“スライムアイドル”として、デビューさせたい!」
『歌は波動、ダンスは振動。おそらく、可能です』
「ちょっと待ちなさい! うちの宰相を、勝手にスカウトしないで!」
VIPルームでは、あのゼルガ・ハイロウが、毎日のように足湯に浸かっている姿が目撃されていた。
「ふ、ふん! 別に、ハマったわけではない……。ただ、ぷにの脆弱性を、研究しているだけだ……」
「そうですか。ちなみに、今日の滞在時間は、観測史上最長の、十時間五分を記録しておりましたわよ?」
私の指摘に、彼は、茹でダコのように、顔を真っ赤にした。
故郷の星からは、ぷに農法が大成功を収め、「歯がなくても食べられる、ぷにトウモロコシ」や「飲むだけで肌が潤う、ぷに牛乳」が、大豊作だという、嬉しいニュースも届いていた。
◆
その日の夜。
私たちは、閉店後の、静かになった大浴槽で、ぷかぷかと、お湯に浮いていた。
天井には、本物の星空が投影され、まるで、銀河そのものに、浸かっているかのようだった。
「思えば、追放されてから、本当に、色々なことがあったわね……」
「ティアナ師匠の物語は、銀河で一番面白いですわ!」
「日誌が、もはや、叙事詩のような分量になりましたぞ……」
仲間たちと、この長い旅路を振り返る。
その、穏やかな静寂の中で、中央に浮かんでいたスリィが、ぽつりと、呟いた。
『……もしかしたら、この、あまりにも都合が良すぎる物語は……全て、私が見ている、“やわらかい夢”なのかもしれませんね』
全員が、一瞬、ぴたりと動きを止めた。
「……ちょっと待って、スリィ。ここで、夢オチとかいう、メタ発言はやめてちょうだい! 全ての感動が台無しになるわ!」
「そうだぞ! 夢なら、もっと短くまとめろ!」(by ゼルガ)
「メタ発言は、我々書き手が、一番困りますのよ!」(by シャルロッテ)
仲間たちの、総ツッコミ。
スリィは、ぷにっと、笑うように、身体を揺らした。
『ですが、夢か、現かは、些細な問題です。
誰かが、どこかで、“あったかい”と感じてくれた、その瞬間──そこが、ぷにの、本当の故郷なのですから』
その、あまりにも、スリィらしい言葉に、私は、全ての力が抜けていくのを感じた。
私は、お湯の中に、大の字になって、ぷかぷかと浮かんだ。
天井の星空が、ゼリーのように、優しく、滲んでいた。
「……まあ、いっか。おやすみなさい――宇宙」
私たちの、長くて、騒がしくて、最高にぷるぷるだった、銀河の旅は、こうして、温かい湯けむりの中に、そっと、幕を下ろしたのだった。
銀河議会の中央に降臨した、スリィの負の写し身、「ネガぷに」。
その存在が放つ、心を凍らせるような“絶望の波動”は、祝勝ムードに沸いていた議場を、一瞬にして、静寂と無気力の底へと叩き落とした。
千を超える異星の代表者たちが、まるで魂を抜かれたかのように、虚ろな目で椅子に座り込んでいる。希望も、喜びも、ぷにの温もりさえも、その黒いゼリーに吸い尽くされていく。
「くっ……! なんて、不快な……!」
私の前に、ライオネルとリムナが、盾を構えて立ちはだかる。だが、彼らの額にも、冷たい汗が浮かんでいた。
ネガぷには、その赤い瞳で、私とスリィを見据える。
「光のぷに……。その過剰な“癒し”こそが、宇宙に停滞を生む癌だ。進化とは、闘争の果てにある。貴様らの振りまく“安楽”は、生命から、生きるための“牙”を奪う、甘い毒にすぎない」
それは、ゼルガや、ドライ連盟が掲げた思想の、さらに先鋭化した、究極の虚無。
戦う相手は、もういない。目の前にいるのは、私たちの“ぷに”そのものが持つ、もう一つの可能性。光があれば、必ず生まれる、影だった。
「……面白いじゃない」
私は、恐怖に震える足を、ぐっと踏みしめた。
「あんたたちの言うことも、一理あるのかもしれないわね。でも、間違っていることが一つだけある」
「何?」
「“癒し”は、“停滞”じゃない。“次に進むための、エネルギー”よ!」
私は、スリィと、視線を交わす。
これは、物理的な戦いではない。思想と、哲学の、最終戦争だ。
「みんな、聞いて! 奴らの“絶望”に、私たちの“希望”をぶつけるのよ!」
私の号令一下、チームぷにの、最後の戦いが始まった。
「喰らいやがれ! これが、俺たちの“硬さ”だ!」
ライオネルが、鍛え上げた合金の槍を投擲する。だが、槍はネガぷにの黒い身体に、音もなく吸い込まれ、消えてしまった。
「物理攻撃は、無効ですの!?」
「いや、無駄じゃなかった!」
ルフ博士が、船からの遠隔分析で叫ぶ。
「今の一撃で、奴のエネルギー吸収量に、ほんの一瞬だけ、上限があることが分かった! 情報を、希望を、奴の許容量を超えるほど、叩き込み続ければ、勝機はある!」
その言葉を信じ、私たちは、それぞれの“ぷに”を、解き放った。
フォンとシャルロッテは、議会の放送システムをジャックし、全宇宙に向けて、ぷに文化の素晴らしさを説く、緊急放送を開始する。
ノエルは、気絶している議員たちの口に、栄養満点の「ぷにエナジーバー」を、そっと突っ込んで回っていた。ささやかだが、それは、絶望に抵抗する“生命力”そのものだった。
そして、私とスリィは、最後の賭けに出た。
『ティアナ様、シンクロを。私たちの全てを、奴にぶつけます』
「ええ、望むところよ!」
私とスリィの意識が、完全に一つになる。
そして、私たちは、ただの共感波動ではない、私たちの“記憶”そのものを、ネガぷにへと、叩きつけた。
悪役令嬢として、孤独だった日々。
スリィと出会い、初めて“温もり”を知った、あの森の夜。
仲間たちと、笑い、喧嘩し、温泉に入った、騒がしい毎日。
異世界で、魔王と“半熟たまご理論”を語り合った、湯けむりの記憶。
月面で、氷の女王と、温かい涙を流した、あの美しい夜明け。
喜びも、悲しみも、怒りも、愛も、羞恥も、絶望も、希望も……。
私たちの生きてきた、その、ぐちゃぐちゃで、不格好で、だけど、最高に愛おしい、全ての“感情”。
その、あまりにも膨大で、矛盾に満ちた“生命の情報”の奔流に、ただ“無”であることしか知らないネガぷには、耐えられなかった。
「……やめ……ろ……。理解、できない……。こんな、こんな……温かいものは……なんだ……これは……?」
ネガぷにの黒い身体に、亀裂が走る。
そして、光と共に、塵となって、消えていった。
その、最後の瞬間に、まるで初めて言葉を覚えた子供のように、か細い声が、響いた気がした。
「……あった……かい……」
◆
【宇宙編エピローグ:そして、宇宙はぷにに包まれた】
ネガぷにとの死闘から、数週間後。
首都惑星ネウロポリスの外港区には、かつてないほどの長蛇の列ができていた。
その先にあるのは、虹色の光を放つ、巨大なドーム型施設。
看板には、こう書かれている。
【ぷるぷる共存国直営・銀河温泉施設《スパ・オブ・ゼリー》本日グランドオープン!】
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浴衣姿の私が、メガホン片手に叫んでいる。
そう、私たちは、戦いの後始末と、銀河へのぷに文化普及、そして、ちゃっかりとした商売を兼ねて、この地に、巨大な温泉施設をオープンさせたのだ。
施設内は、人種も言語もごちゃ混ぜのカオス状態だった。
「タコ、足が十一本、足湯一杯では足りない! 追加ぷに、希望!」
「そこの火星人のお客様! 足湯を鍋代わりに、お肉を煮込むのはおやめください!」
「我らの文化では、全ての液体がスープなのだ!」
「食文化と入浴文化の融合ですわ!」
そんな大混乱のさなか、一人の、派手なスーツを着た男が、スリィの前に、跪いた。
「君だッ! この透明感、このミステリアスな存在感! 我が銀河芸能事務所“スター&グミ”から、君を、宇宙初の“スライムアイドル”として、デビューさせたい!」
『歌は波動、ダンスは振動。おそらく、可能です』
「ちょっと待ちなさい! うちの宰相を、勝手にスカウトしないで!」
VIPルームでは、あのゼルガ・ハイロウが、毎日のように足湯に浸かっている姿が目撃されていた。
「ふ、ふん! 別に、ハマったわけではない……。ただ、ぷにの脆弱性を、研究しているだけだ……」
「そうですか。ちなみに、今日の滞在時間は、観測史上最長の、十時間五分を記録しておりましたわよ?」
私の指摘に、彼は、茹でダコのように、顔を真っ赤にした。
故郷の星からは、ぷに農法が大成功を収め、「歯がなくても食べられる、ぷにトウモロコシ」や「飲むだけで肌が潤う、ぷに牛乳」が、大豊作だという、嬉しいニュースも届いていた。
◆
その日の夜。
私たちは、閉店後の、静かになった大浴槽で、ぷかぷかと、お湯に浮いていた。
天井には、本物の星空が投影され、まるで、銀河そのものに、浸かっているかのようだった。
「思えば、追放されてから、本当に、色々なことがあったわね……」
「ティアナ師匠の物語は、銀河で一番面白いですわ!」
「日誌が、もはや、叙事詩のような分量になりましたぞ……」
仲間たちと、この長い旅路を振り返る。
その、穏やかな静寂の中で、中央に浮かんでいたスリィが、ぽつりと、呟いた。
『……もしかしたら、この、あまりにも都合が良すぎる物語は……全て、私が見ている、“やわらかい夢”なのかもしれませんね』
全員が、一瞬、ぴたりと動きを止めた。
「……ちょっと待って、スリィ。ここで、夢オチとかいう、メタ発言はやめてちょうだい! 全ての感動が台無しになるわ!」
「そうだぞ! 夢なら、もっと短くまとめろ!」(by ゼルガ)
「メタ発言は、我々書き手が、一番困りますのよ!」(by シャルロッテ)
仲間たちの、総ツッコミ。
スリィは、ぷにっと、笑うように、身体を揺らした。
『ですが、夢か、現かは、些細な問題です。
誰かが、どこかで、“あったかい”と感じてくれた、その瞬間──そこが、ぷにの、本当の故郷なのですから』
その、あまりにも、スリィらしい言葉に、私は、全ての力が抜けていくのを感じた。
私は、お湯の中に、大の字になって、ぷかぷかと浮かんだ。
天井の星空が、ゼリーのように、優しく、滲んでいた。
「……まあ、いっか。おやすみなさい――宇宙」
私たちの、長くて、騒がしくて、最高にぷるぷるだった、銀河の旅は、こうして、温かい湯けむりの中に、そっと、幕を下ろしたのだった。
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