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第12章『完璧なわたしを、壊してくれますか』
『夜のホラーは、誰かと一緒に』
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LinkLive主催の大型コラボ企画《深夜の耐久ホラーバトン配信》は、SNSでも大きな話題を呼んでいた。
参加者は、事務所所属のVたち。
リレー形式で、順番にホラーゲームをプレイし、次のVにバトンを繋いでいく。
その最終盤──深夜1時から2時の“魔の時間帯”を担当するのが、天城コウ(V名:レイ)だった。
「さあ、それじゃあ……バトンは、次の方に託しましょう」
配信の締めトークを終えたコウは、モニターに映った次の担当を紹介する。
画面が切り替わり、画面いっぱいに、静かな和風の部屋が映し出された。
その中心に座るのは、白と赤の巫女衣装を身にまとった少女のアバター。
透き通った黒髪と、整った顔立ち。そして、画面越しに伝わってくる静けさ。
《こんばんは。《Inori∞Link》です。夜更かししている皆さん……お疲れさまです》
いのりの落ち着いた声が響く。
視聴者のコメント欄が、一斉に活気づいた。
「声がもう眠くなるレベルの癒し」「中学生ってマジ?」「この時間帯のプロすぎる」
などと、絶賛が飛び交う。
「深夜の配信、お疲れさま」
コウが声をかけると、いのりはゆっくりと笑う。
《いえ、こちらこそバトンありがとうございました。レイ先輩の実況、すごく面白かったです》
「ありがとう。なんかこう、“ホラーに慣れてる”って印象があるけど、実際どうなの?」
《怖いのは苦手ですよ。でも……一人で戦うのって、ちょっとワクワクします》
《自分の中の弱さと、ちゃんと向き合えるから》
「……それ、かっこよすぎない?」
「本当に14歳? 俺より精神年齢高いんじゃ……」
《よく言われます》と笑った後、彼女は少しだけ声を落とす。
《でも……本当の年齢って、どこで測るんでしょうね》
「え?」
《“恋って、どうなんでしょう”って、さっき先輩がおっしゃいましたよね》
《……恋って、年齢で測るものですか?》
その言葉は、静かに、けれど確実に空気を変えた。
コメント欄が一瞬で沸き上がる。
「名言来た」「惚れた」「年齢ってなんだっけ」「先輩どうするの?w」
《#年齢で測れない恋》というタグが即座に生成され、トレンド入りを果たす。
一方、コウはただ、虚を突かれたように黙っていた。
画面の中の彼女は、変わらず落ち着いた声で締める。
《それでは、ホラーゲーム、始めますね。……もしよかったら、最後まで一緒にいてください》
──その言葉が、どうしてこんなに胸に残るのだろう。
配信を切った後、控室でひよりがスマホを見ながら言った。
「トレンド入りしてるよ、《いのり名言》タグ」
「“恋って、年齢で測るものですか?”ってやつ。あれ、ガチで刺さったって視聴者絶賛してる」
「……すごい子だな」
とコウはまた同じことを呟いた。
ひよりが視線を向ける。
「ねえ、コウにい。もしかして、ちょっとドキッとした?」
「……あの子、“ああいう言葉”を自然に出すタイプだよ。けど、それってたぶん、計算じゃない」
「……じゃあ?」
「本心で喋ってるんだよ。むしろ無意識に」
「つまりね、あれが“地”のいのりちゃん。あの子の中には、ずっとそういう“本音”が隠れてるの」
その夜、ベッドに横になりながら、コウは思い出していた。
出会ったときの、いのりの静かな笑顔と、わずかに震えていた指先を。
──完璧な仮面の奥で、ずっと、何かを我慢している子。
そして、たった一言で空気を変える、あの言葉。
「恋って、年齢で測るものですか」
その声が、心にずっと、残っていた。
参加者は、事務所所属のVたち。
リレー形式で、順番にホラーゲームをプレイし、次のVにバトンを繋いでいく。
その最終盤──深夜1時から2時の“魔の時間帯”を担当するのが、天城コウ(V名:レイ)だった。
「さあ、それじゃあ……バトンは、次の方に託しましょう」
配信の締めトークを終えたコウは、モニターに映った次の担当を紹介する。
画面が切り替わり、画面いっぱいに、静かな和風の部屋が映し出された。
その中心に座るのは、白と赤の巫女衣装を身にまとった少女のアバター。
透き通った黒髪と、整った顔立ち。そして、画面越しに伝わってくる静けさ。
《こんばんは。《Inori∞Link》です。夜更かししている皆さん……お疲れさまです》
いのりの落ち着いた声が響く。
視聴者のコメント欄が、一斉に活気づいた。
「声がもう眠くなるレベルの癒し」「中学生ってマジ?」「この時間帯のプロすぎる」
などと、絶賛が飛び交う。
「深夜の配信、お疲れさま」
コウが声をかけると、いのりはゆっくりと笑う。
《いえ、こちらこそバトンありがとうございました。レイ先輩の実況、すごく面白かったです》
「ありがとう。なんかこう、“ホラーに慣れてる”って印象があるけど、実際どうなの?」
《怖いのは苦手ですよ。でも……一人で戦うのって、ちょっとワクワクします》
《自分の中の弱さと、ちゃんと向き合えるから》
「……それ、かっこよすぎない?」
「本当に14歳? 俺より精神年齢高いんじゃ……」
《よく言われます》と笑った後、彼女は少しだけ声を落とす。
《でも……本当の年齢って、どこで測るんでしょうね》
「え?」
《“恋って、どうなんでしょう”って、さっき先輩がおっしゃいましたよね》
《……恋って、年齢で測るものですか?》
その言葉は、静かに、けれど確実に空気を変えた。
コメント欄が一瞬で沸き上がる。
「名言来た」「惚れた」「年齢ってなんだっけ」「先輩どうするの?w」
《#年齢で測れない恋》というタグが即座に生成され、トレンド入りを果たす。
一方、コウはただ、虚を突かれたように黙っていた。
画面の中の彼女は、変わらず落ち着いた声で締める。
《それでは、ホラーゲーム、始めますね。……もしよかったら、最後まで一緒にいてください》
──その言葉が、どうしてこんなに胸に残るのだろう。
配信を切った後、控室でひよりがスマホを見ながら言った。
「トレンド入りしてるよ、《いのり名言》タグ」
「“恋って、年齢で測るものですか?”ってやつ。あれ、ガチで刺さったって視聴者絶賛してる」
「……すごい子だな」
とコウはまた同じことを呟いた。
ひよりが視線を向ける。
「ねえ、コウにい。もしかして、ちょっとドキッとした?」
「……あの子、“ああいう言葉”を自然に出すタイプだよ。けど、それってたぶん、計算じゃない」
「……じゃあ?」
「本心で喋ってるんだよ。むしろ無意識に」
「つまりね、あれが“地”のいのりちゃん。あの子の中には、ずっとそういう“本音”が隠れてるの」
その夜、ベッドに横になりながら、コウは思い出していた。
出会ったときの、いのりの静かな笑顔と、わずかに震えていた指先を。
──完璧な仮面の奥で、ずっと、何かを我慢している子。
そして、たった一言で空気を変える、あの言葉。
「恋って、年齢で測るものですか」
その声が、心にずっと、残っていた。
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