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第10章『“妹”ポジは、誰にも渡さない。』
エピローグ『この気持ちは、秘密じゃない。』
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「――ひより、起きろー。朝だぞー」
「……んぅ……あと五分ぅ……」
夢のなかで見ていた、お兄ちゃんの声と、
現実のお兄ちゃんの声が混ざり合って、私はふにゃふにゃと布団にくるまる。
「だーめ。今日はお前が早番だろ? 朝ごはん作るって言ってたじゃないか」
「……あー、言った……気がする……」
「じゃあ起きろ」
「でも起きない」
「……じゃあ、こっちも本気で起こすか」
……え?
言うが早いか、私はごそごそと布団をめくられて、
そのまま、お兄ちゃんの手が腰に伸びて――
「ちょ、ちょ、まっ……! こ、こらくすぐらないでええええええ!!」
「起きたな」
「うぅぅぅ……お兄ちゃんのバカぁ……!」
顔を真っ赤にしながら起き上がると、
お兄ちゃんはいつもの調子でくすくす笑っていた。
……ほんと、油断も隙もないんだから。
でも、こうして笑ってくれるだけで、私はなんだか、すごく安心する。
「……おはよう、お兄ちゃん」
「おう。おはよう、ひより」
それだけのやりとりなのに、
朝の空気がこんなにあったかく感じるのは、
たぶん――昨夜、あの言葉を伝えたから。
朝食を並べながら、ふと思い出す。
「ねぇ、お兄ちゃん。昨日の配信……どうだった?」
「うん。いい感じだったな。コメントも好意的だったし、トレンド入りもしたし」
「……そういうことじゃなくてさ」
私は、卵焼きをテーブルに置きながら、
そっと、お兄ちゃんの横顔を盗み見る。
「“ひよりだけを見ててね”って言ったの、聞こえてた?」
お兄ちゃんは、一瞬箸の動きを止めて――
それから、静かにうなずいた。
「……ああ。ちゃんと聞こえてた」
「そっか……じゃあ、もう“秘密”じゃないね」
「ん?」
「ううん、なんでもないっ」
私はわざとごまかすように笑って、
トーストにいちごジャムをたっぷり塗った。
“好き”って言葉は、まだ口にしてない。
でも、もう“バレてる”んだと思う。
この気持ちが、いつかちゃんと届く日が来ると信じて――
いまはまだ、“妹”という立場に甘えながら、
だけど一歩ずつ、“私”として近づいていきたい。
その日の午後。
外は晴れていて、窓の外に見える空は、
昨日より少しだけ、澄んで見えた。
私は自室の机に座って、
あの“作戦ノート”を開いた。
表紙に、ひとつだけハートのシールを貼る。
「これはね、“宣戦布告”した日っていう証♡」
声に出して言ってみると、
ちょっとだけ恥ずかしくて、でもちょっとだけ誇らしかった。
夕方、廊下でお兄ちゃんとすれ違ったとき。
私はなんでもないふうに彼の腕をつかんで、くいっと引き止めた。
「……どうした?」
「んーん、なんでもないよ。
ちょっとだけ、触れていたかっただけ」
「……そっか」
お兄ちゃんは、何も言わずに、でも振りほどかずに、
そのまま数秒だけ立ち止まってくれた。
私の胸の中に広がる、このぽかぽかした気持ち。
もう、隠すつもりはない。
――この気持ちは、秘密じゃない。
いつかちゃんと、“答え”をもらえるその日まで。
私は“妹”として、
そして“女の子”として、
あなたの隣で、笑っていたい。
それが、いまの私の、
いちばん大事な――恋のかたち。
「じゃあ、またあとでね、コウお兄ちゃん♪」
私は笑顔で、ほんの少し背伸びをして。
お兄ちゃんの頬に、ちいさな“キスのまね”をした。
その顔が、少しだけ驚いて、
ほんのちょっと赤くなるのを見て――
私は、世界で一番幸せな気持ちになった。
――だから、私はもう迷わない。
“妹”ポジションは、
わたしのものだって、胸を張って言えるから。
そして、いつか――
その先の、もっと“特別な関係”へ。
「……んぅ……あと五分ぅ……」
夢のなかで見ていた、お兄ちゃんの声と、
現実のお兄ちゃんの声が混ざり合って、私はふにゃふにゃと布団にくるまる。
「だーめ。今日はお前が早番だろ? 朝ごはん作るって言ってたじゃないか」
「……あー、言った……気がする……」
「じゃあ起きろ」
「でも起きない」
「……じゃあ、こっちも本気で起こすか」
……え?
言うが早いか、私はごそごそと布団をめくられて、
そのまま、お兄ちゃんの手が腰に伸びて――
「ちょ、ちょ、まっ……! こ、こらくすぐらないでええええええ!!」
「起きたな」
「うぅぅぅ……お兄ちゃんのバカぁ……!」
顔を真っ赤にしながら起き上がると、
お兄ちゃんはいつもの調子でくすくす笑っていた。
……ほんと、油断も隙もないんだから。
でも、こうして笑ってくれるだけで、私はなんだか、すごく安心する。
「……おはよう、お兄ちゃん」
「おう。おはよう、ひより」
それだけのやりとりなのに、
朝の空気がこんなにあったかく感じるのは、
たぶん――昨夜、あの言葉を伝えたから。
朝食を並べながら、ふと思い出す。
「ねぇ、お兄ちゃん。昨日の配信……どうだった?」
「うん。いい感じだったな。コメントも好意的だったし、トレンド入りもしたし」
「……そういうことじゃなくてさ」
私は、卵焼きをテーブルに置きながら、
そっと、お兄ちゃんの横顔を盗み見る。
「“ひよりだけを見ててね”って言ったの、聞こえてた?」
お兄ちゃんは、一瞬箸の動きを止めて――
それから、静かにうなずいた。
「……ああ。ちゃんと聞こえてた」
「そっか……じゃあ、もう“秘密”じゃないね」
「ん?」
「ううん、なんでもないっ」
私はわざとごまかすように笑って、
トーストにいちごジャムをたっぷり塗った。
“好き”って言葉は、まだ口にしてない。
でも、もう“バレてる”んだと思う。
この気持ちが、いつかちゃんと届く日が来ると信じて――
いまはまだ、“妹”という立場に甘えながら、
だけど一歩ずつ、“私”として近づいていきたい。
その日の午後。
外は晴れていて、窓の外に見える空は、
昨日より少しだけ、澄んで見えた。
私は自室の机に座って、
あの“作戦ノート”を開いた。
表紙に、ひとつだけハートのシールを貼る。
「これはね、“宣戦布告”した日っていう証♡」
声に出して言ってみると、
ちょっとだけ恥ずかしくて、でもちょっとだけ誇らしかった。
夕方、廊下でお兄ちゃんとすれ違ったとき。
私はなんでもないふうに彼の腕をつかんで、くいっと引き止めた。
「……どうした?」
「んーん、なんでもないよ。
ちょっとだけ、触れていたかっただけ」
「……そっか」
お兄ちゃんは、何も言わずに、でも振りほどかずに、
そのまま数秒だけ立ち止まってくれた。
私の胸の中に広がる、このぽかぽかした気持ち。
もう、隠すつもりはない。
――この気持ちは、秘密じゃない。
いつかちゃんと、“答え”をもらえるその日まで。
私は“妹”として、
そして“女の子”として、
あなたの隣で、笑っていたい。
それが、いまの私の、
いちばん大事な――恋のかたち。
「じゃあ、またあとでね、コウお兄ちゃん♪」
私は笑顔で、ほんの少し背伸びをして。
お兄ちゃんの頬に、ちいさな“キスのまね”をした。
その顔が、少しだけ驚いて、
ほんのちょっと赤くなるのを見て――
私は、世界で一番幸せな気持ちになった。
――だから、私はもう迷わない。
“妹”ポジションは、
わたしのものだって、胸を張って言えるから。
そして、いつか――
その先の、もっと“特別な関係”へ。
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