わんこ騎士団長は伝えたい!〜2度目の異世界転移、助けた子犬が大型犬に成長してました〜

佐藤 あまり

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12 初ダンジョン、エリクサー?!

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 「こっちの小瓶だがな……これは、エリクサーだ」

 エリクサー?ゲームの回復アイテムっぽいネーミングだが……

 「「「「「エリクサーだとおおおお!?」」」」」

 な、なんだなんだ……そんなにすごいものなのか?

 「上級ポーションは知ってるか?」

 病院に駆け込んだ時にコハクに使ってもらったやつか、ポーションにも上中下で効果がだいぶ変わり、特に上級は効果が高く、お値段も高い。

 「その上級ポーションですら治せない病や、目や耳、身体の欠損なんかも治せる、伝説級のアイテムだぞ……この国でも数本しか保有していない、どうやって手に入れた?!」

 「いや、ドラゴンの口から出たビームみたいなやつを切ったら称号と一緒にもらっただけだが……」

 「……ドラゴンブレスを切ったってことだな?」

 「ああ、多分特定の行動でGETできるアイテムだったんだろう、運が良かったな」

 「普通は切れんぞあんなもの……」

 「やっぱすげえ……」

 「分かっててもできねえよ……」

 「というかさっき目を治せるっていったか?」

 「ああ、万能薬に等しいからな」

 「……っなら!コハクの目も治るのか!?」

 もし、もしも治るなら…それは…っ

 くい…っ

 それまで静かに話を聞いていたコハクが俺の袖を引っ張った。

 「コハク…!」

 「あのね、レイ……レイの気持ちはすごく嬉しいんだけど、そんな貴重なもの、俺なんかに使わないでも…」

 そっと俯くコハク、負担になってしまうのは本意では無い……俺にとっては1番の使い方だが、コハクの気持ちが何よりも優先だ。でも……

 「俺なんか、なんて……俺はね、コハクが大好きだよ、1番大事な俺の宝物。…ちょっとこっちおいで?」

 そっと近づいてきたコハクをぎゅうっと強く抱きしめる。

 「いちばん、だいじ……」

 それに、と続ける。

 「騎士に、なりたいんだろ?」

 「っ……どうしてそれを」

 「分かるよ、1番大事だから、俺はコハクが見たい未来を、一緒に見に行きたい」

 背中に回された手に力が入った。

 「……俺、ずっとレイを見たかったの、優しい声のレイ、笑った顔どんなのだろうって、手で触らせてくれた、笑った顔が見たいなって」

 「コハク……」

 「俺はレイの1番大事……!レイと見たいもの、俺もいっぱいある……!だから…っだから!」

 肩口に埋めていた顔を上げ、俺の手を強く握って、

 「見えるようになりたい……!」

 「っ……ああ!もちろん…!」

 ずっと、首輪が外れてからもなおコハクを縛っていたもの、俺と一緒に少しづつ解いてきた、自分を否定しがんじがらめにする心の軛が外れた気がした。

 「レイ……」

 ふわふわな笑顔を見せてくれるコハクに涙が止まらない。今泣いてる場合じゃないのに……っ

 「あーあー、ごほん!レイ、コハク、ちょっといいか?まずエリクサーのことはここだけの秘密にしよう。基本的に冒険者がダンジョンで受け取ったアイテムの権利は本人に帰属するが、これほどのアイテムだ。よからぬ輩も出てくるだろう……まぁ使ってしまえばこっちのものだ。というわけで、とりあえずこれはマジックバックに入れとけ、使用者登録済んだか?よし、流石にここじゃあれだからな、家がいいだろ?送ってやるから、明日くらいには顔見せに来いよ」

 あれよあれよという間に話が進み、涙も引っ込んでいく。

 「ギルマスぅ……そういうのなんて言うか知ってます?ノンデr「ばっか!やめとけって!ああ遅かった…」

 「ああ?大事な事だろ、お前ら絶対漏らすなよ」

 「「「「「はい!」」」」」


 

 家に戻ると、コハクはそわそわと落ち着かない様子で俺を見上げていた。

 「レイ……」

 「大丈夫。俺がついてる」

 優しく微笑みかけると、コハクはぎゅっと俺の袖を掴んだ。

 「俺、レイを……ちゃんと見たい……!」

 その言葉に心が熱いもので満たされていく。

 「コハク、準備はいい?」

 「うん……!」

 エリクサーの瓶の蓋を、ゆっくりと開けた──。






 
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