好きになった女子が愛人にしかなる気がないと言っていたので、形だけの彼女を作って愛人として付き合ってもらった。

無自信

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第33話

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 日曜日、俺は朝から市立図書館に行くために出かけていた。

バスに乗って4つ先の停留所まで行き、そこから歩いて10分ほどの距離に市立図書館はあった。行ったことがなかったので迷わず行けるか少し不安だったが、前日の夜に調べておいたので迷わず行くことができた。

思っていたよりも広くて蔵書も結構ありそうだった。図書館に来たのはいいものの、カジワラとの共通の話題を作るために推理小説を借りに来たのだが、カジワラの好みを知らないので何を借りようか迷い出してしまった。直接カジワラに好みの推理小説を聞けばすぐに解決するのだが、直接聞くのは話題作りをしようとしているのがばれて恥ずかしいので無理だった。

う~ん?どうしよう?カジワラの好みは知らないが俺が知ってるような「コ〇ン・ドイル」や「ア〇サ・クリスティー」、「江戸川〇歩」などの作家の作品はどこか違う気がするな。カジワラはどちらかと言うと、そういう昔の作家の作品より現代の作家の作品を呼んでいる気がする。あれ?こんなこと前も悩んだ気がするな?え~と?いつだったかな?

10分ほど悩んで、そういえば、まだカジワラとちゃんとした形で付き合おうとしていた時にキョウヘイに言われて学校の図書室に行ったことを思い出した。つい最近のことだが、随分前のことのようにも感じられた。その時にハナザワさんと出会い、「ガ〇レオシリーズ」を薦められたことも思い出した。

そうだ!「東〇圭吾」なら現代の作家だし、学校の図書室で「探偵ガ〇レオ」を借りた時のカジワラの反応を見ると読んだことがあるみたいだから、話題作りには良いかもしれない。よし!「探偵ガ〇レオ」の続きを借りよう!

借りる本が決まったので、図書館のパソコンで「ガ〇レオシリーズ」が蔵書にあるか調べた。運よく「ガ〇レオシリーズ」が蔵書にあり、誰かに借りられてもいなかったので、すぐにどこの本棚にあるか調べて、陳列されている本棚へと向かった。

陳列されている本棚まで来たが、そこには誰もいなかったのですんなりと目的の本を確保することができた。せっかく図書館に来たのだから、すぐに帰るのではなく静かな空間で本を読もうかな。と思い、空いてる席を探し始めた。空いてる席はすぐに見つかったのだが、その席の近くに見覚えのある三つ編みの女子を見つけた。

ヤバい!あれは絶対にハナザワさんだ!ハナザワさんとはもう会ったらダメだとナツキに約束させられてるから、気付かれない内に別な席を探した方がいいな。

……待てよ、ハナザワさんがこのままあの席にずっといるとも限らないんじゃないか?俺がハナザワさんから離れた席に座っても、ハナザワさんが本を探して俺が座る席の近くにやってくるかもしれない。やっぱりここはハナザワさんと出会わないために本を借りてすぐに帰った方がいいかもしれない。うん!その方がいい!

すぐに俺は図書館のカウンターに行き、「探偵ガ〇レオ」の続きを2冊ほど借りて図書館を出た。

よし!ハナザワさんに会うことなく図書館を出られたぞ!とホッとしていたら、「トツカ先輩!」と俺を呼ぶ聞き覚えのある声が聞こえてきた。

パッと後ろを振り向くとハナザワさんがいた。おそらく俺を見かけて走って追いかけてきたのだろう。ハナザワさんは息を切らしていた。

俺がどうしよう?と考えていると、ハナザワさんは、「良かった。ハァハァやっぱりトツカ先輩だった。ハァハァさっきチラッとお見かけしたので急いで追いかけてきたんです。」と笑顔で話しかけてきた。

打開策が思いつかなかったので、とりあえず、「そうなんだ?ごめん。俺は気が付かなかったよ。」と答えた。

「そんな。全然大丈夫ですよ。あの……トツカ先輩!もし良かったらお話しできませんか?」とハナザワさんが聞いてきたので、俺は、「ハナザワさん、ごめん!俺、彼女ができたんだ!それでその彼女があまり他の女子と話したりするのをやめてくれって言ってるから、もうハナザワさんと話すことはできないんだ!ホントにごめん!」と正直に答えた。

ハナザワさんの顔を見ると少しショックを受けてる表情をしたが、すぐに笑顔で、「そう……ですか。それならしょうがないですね。そうですか……おめでとうございます。」とお祝いの言葉をくれた。

せっかくできた話し友だちを失うのは俺もつらかったが、これもカジワラと付き合っていくためだ!と覚悟を決めた。

「それじゃあ、俺は帰るから。」と言ってすぐにその場から離れた。

ハナザワさんに冷たい対応をして、こんな冷たい奴とはかかわらない方がいいな。と思わせようとした。
覚悟は決めたがハナザワさんがどんな表情をしているかは、申し訳なくて見られなかった。


 帰宅する間はずっと後悔してばかりいた。

ハナザワさんに冷たくし過ぎたかな?ちょっと話すくらいだったら大丈夫だったんじゃないかな?学校内でハナザワさんと話すわけではないし、ナツキは今日も部活中だからハナザワさんと一緒にいるところに出くわすことはないだろうしな。

……いや、でもそういう甘い考えは良くないかもしれない。ナツキは俺なんかと比べて交友関係が広いから、どこでナツキの知り合いにハナザワさんと話しているところを見られるか分かったものではない。やっぱり、ハナザワさんには悪いがあの対応がベストとは言わないがベターではあったと思う。もうこのことを考えるのはやめよう!後悔しても時間は戻らないんだからな!

なんとか自分を納得させる理由を考えているうちに家に着いてしまった。家に着くとすぐに自室へ向かい、市立図書館で借りてきた推理小説を読み始めた。読み始めた時は、まだハナザワさんのことが頭にちらついたが、読み進めていくうちに小説の内容を理解しようとすることに集中していき、ハナザワさんのことは頭の隅に追いやられていった。

しばらくすると母さんがお昼ご飯ができたと俺を呼びに来たので、リビングへ行ってお昼ご飯を食べた。お昼ご飯を食べている時にリビングの時計を見て、家に帰ってきてから1時間以上経っていることを知った。お昼ご飯を食べ終えるとまた自室へ行って推理小説を読み始めた。

実際にどれだけいるのかは分からないが、俺は推理物の小説や漫画を読む時に自力で犯人を当ててやろうと考えながら読む人間ではないので、サラーッと1冊を読み終えてしまった。それでもお昼ご飯を食べ終えてから4時間以上経っていて、外は暗くなり始めていた。

このまま2冊目も読もうかな。と考えたが、フッと来週から期末試験が始まるんだった。ということを思い出した。カジワラと2人で試験勉強するためにキョウヘイと仲直りしたんだから(弁明させてもらうが一番の目的はそうだが仲直りした理由は他にもいろいろある。)、キョウヘイに勉強を教えてくれるように頼もう。

すぐに俺はラインのメッセージでキョウヘイに、「明日から試験対策の勉強を教えてくれ。」と送った。メッセージを送って数分後にキョウヘイから、「了解。」と返信があった。それに対して、「サンキュー。」と返信を送ったら、2冊目の推理小説を読み始めた。

外が暗くなってきて小説を読むのが難しくなってきたので電気をつけて読み始めて少し経った頃、母さんが晩ご飯ができたと俺を呼びに来た。そこで小説を読むのをやめて部屋の時計を見ると、少ししか時間が経っていないと思っていたが2冊目を読み始めて1時間近く経っていることに気が付いた。

リビングへ行って晩ご飯を食べて、また自室へ戻ってくるとナツキからラインのメッセージが来ていた。

「期末試験で部活が休みになったら、また勉強を教えて。」とあった。

ナツキと試験勉強を2人ですれば、カジワラもきっと2人で試験勉強してくれると考えていたので、ナツキから誘ってくれるとはありがたいと思いながら、「了解。」と返信を送った。

すると、すぐにナツキから、「え?いいの?」と返信があった。

何で驚いてるんだろう?と思いつつ、「全然いいよ。ナツキと2人で試験勉強すれば、カジワラも2人で試験勉強をしてくれるはずだから。」と返信を送ると、「分かった。そういうことね。」と返信があった。

特に絵文字が入っているわけではないので、ナツキの感情は分かるはずがないのだが、何となくがっかりしている感じがメッセージから見て取れた。

何にがっかりしているんだろう?と不思議に思ったが、俺の勘違いかもしれないのでナツキに尋ねることはしなかった。

よし!明日から試験勉強頑張るぞ!と決心して、この日はベッドに横になった。
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