俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい

あさの紅茶

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花咲くとき

007

自席に戻ってうるさい心臓をなだめていると、隣の席の朋子がこそっと耳打ちしてくる。

「さすが奈々。社長の息子でも容赦ないね。私なら言えないわ」

と、感心したように笑った。

そんなことで感心されても困る。社長の息子だから何だというのだ。仮にも今は勉強中の身だと聞いている。偉そうな態度を取るなら社長になってからにしてほしいものだ。

(あ、でもそんな偉そうな社長も嫌よね……)

自身にツッコミつつもモヤっとした気持ちは晴れないまま、奈々はいつも通り真面目に仕事に取りかかった。

倉瀬はデスクに置かれた書類を忌々しげに見つめていた。突き返したのに逆に突き返された。口調は怒っているように感じられたが、それでも丁寧に置かれた書類。記入しなくてはいけない箇所に丁寧に付箋でマークしてあり、綺麗な女性らしい字体で“ここに記入お願いします”と書いてある。

倉瀬は入社以来、将来のためという名目でいくつかの部署を渡り歩いてきた。倉瀬に限らず、出世していくいわゆるエリートコースの者はたいてい複数の部署を経験していくのがセオリーとなっている。

その時に、自分がこの会社の社長の息子だと自ら言ったことは一度たりとてない。けれどそのことを隠しているわけでもない。

そんな倉瀬だったので、一度社長の息子だとバレたらその噂が広まるのはとんでもなく早かった。おかげで今では周知の事実になっている。

だからか、今までどこの部署に行ってもチヤホヤ甘やかされることが多かった。望んでもいないのに周りは倉瀬に忖度するのだ。あわよくば玉の輿に乗ろうという女性社員も少なからずいた。それにつけこんで倉瀬は好き勝手やってきたと自分でも自覚があるくらいに自由奔放に過ごしてきた。

御曹司でエリート。
次期社長候補。

勉強中の身とはいえ、倉瀬の存在は多少尾ひれがつきながらも異彩を放つ。誰もが倉瀬に遠慮し頭を下げ、女性に至っては猫なで声で寄ってくる。上司でさえ自分の評価を気にしてか倉瀬に厳しいことを言わない。

それなのに──。

奈々は倉瀬に対して忖度するわけでも猫なで声をあげるわけでもなく、真正面から堂々とものを言った。それは倉瀬にとって初めての出来事だと言っても過言ではないくらいの衝撃を与えた。

倉瀬は態度悪くチッと舌打ちし、その書類を忌々しげにデスクの脇に追いやった。

この出来事は腹立たしくもあり新鮮で、図らずも倉瀬の心にしこりを残したのだった。
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