愛することを忘れた彼の不器用な愛し方

あさの紅茶

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腰に回された手が私をしっかりと包み込む。
心臓が口から出そうなほどに、緊張とときめきでどうにかなってしまいそうだ。

「と、とにかく上がってください」

動揺を悟られまいと日下さんを部屋へ促す。

狭いワンルームに日下さんと二人きり。
初めてじゃないのに初めてみたいな感覚。

「えっと、仕事中なので待ってもらっていいですか?ていうか、日下さん仕事は?」

「芽生が心配で早退してきた」

「えっ、大丈夫ですか?」

「仕事を放り出したのなんて初めてだ。でも芽生の無事を確認したかったから。こっちの方が仕事よりも大事なことだよ」

そんなことを言われたらますますドキドキが止まらなくなる。今日の日下さんはやっぱり甘いよ。

「隣で待ってていい?」

「いいですけど、つまらなくないですか?」

「芽生が普段どんな仕事をしているのか見たい」

パソコンのモニターには複数のウィンドウにプログラムコードがずらりと並ぶ。調達関係の日下さんとはまったく違う仕事だ。

「システム改修とトラブル対応がメインの仕事ですよ」

「うん。芽生のこと、もっと知りたいから。ここで見てる」

「なんか緊張しますよ。でも嬉しいです」

静かな部屋にカタカタと響くキーボードの音。一度集中し始めると私は仕事に没頭してしまう。
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