傘使いの過ごす日々

あたりめ

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人付き合いってとっても大事

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名前を呟いた瞬間石板が白くうっすら発光した。
前の人のそれを見たときから大丈夫なことを学んでいたのもあって何の抵抗もなかった。

「これを持っておけよ。」

と門番の一人が小さいプレートを渡した。
これが仮の身分証明書になることも前の人を見て習っていた。
所詮は仮の身分証なので正式に使えるように身分証明書を発行してもらえとのことだ。

もう一人の門番はどうやら休憩に入ったようだ。

「無一文なんですが、どうやったらお金を稼げますか?」
「…お前さん、どこかの貴族の人かい?」
「いいえ、違いますが…」

門番の人にため息を吐かれたが、親切に教えてもらったところ、魔物の核は売れば金になるようです。

魔物の核?見てないな…どんなんだ?と思ったら勝手に傘が出現し、開いたと思ったら黄緑色の透明なビー玉みたいなのだ出てきた。

「そうそう、それを組合に買い取ってもらえば金になる。」
「組合ってなんですか?」
「組合ってのはな、魔物やら魔獣を討伐する人達『冒険者』のギルドだ。」

冒険者専用のギルドで組合って呼ぶようだ。

「しょうがねぇから、俺が買い取ってやるよ。」

もしかすると相場より安く買い取られるんじゃ…と思った。
初対面の人間が自分の持っているものを買ってやると言われたら安く買われるのではないかと疑うのは人間の心。

「なんだ?相場より安く買い取られるんじゃって思ってんじゃねぇよな?」

この門番さん、もしかしてエスパー?心読めちゃう系門番なのかな?と内心かなり浮わついていた。

「んなこたぁしねぇよ。相場より少し色付けて買ってやるよ」
「ありがとうございます。えーと…貴方の名前は?」
「おぉ、わりぃ、俺は『デカルト』。元銀級冒険者だ。」

銀級という単語に静也は疑問を抱いたが自分も名乗らないといけないと思い自己紹介をする。

「俺は水鏡 静也。静也って呼んでください」
「シズヤか…おう。じゃあさっさと入った入った。」
「ありがとうございました。」

礼を言って町へ足を踏み入れる。
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