傘使いの過ごす日々

あたりめ

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家具を買いそろえる。

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ザークについていくこと10分、一軒の立派な建物の前に着いた。
村の探索をしていて見たことがあったが、その時は立派な屋敷だとばかり思っていた。

「ここが…家具屋なんて…」
「一見したらただの屋敷だが、ここは歴とした家具屋だ。それと、私が監修しておる。ぼったくりなどしていないから安心してくれ。」
≪シズヤよ、妾のまで揃える必要は無いぞ。妾は床で寝ることが普通だったからな、状況が変わってしまうと元に戻れぬ気がするからな。我が儘を言うようだが、出来れば毛皮が欲しいのだ。≫
「いや、いやいや、それだと俺が気にするのでお願いですので言うことを聞いて下さい。」
≪む、そうか…お主がそこまで言うのなら仕方なし…≫
「シズヤ、ノーナはなんと言ったのだ?」
「床で寝るから自分のは揃えなくて良い、元に戻れない気がするから毛皮で良いといってます。」
「ぬ、そうか、ノーナの言うことにも一理ある。貴族が平民と同じもしくはそれ以下の地位に落ちて生活するのはむずかしいと言う。贅沢するのは簡単だが、元に戻るのは難しい。分かるか?」
「分かる来はします…ですがそれだとノーナさんを除け者にしている気がするんですよ…」

するとノーナが静也の肩に後ろから手を置く。
後ろを振り向いた静也が見たのは外套から覗かせるノーナの笑顔だった。

≪妾はそのような生活に慣れておる。というよりもそのような生活をしておったのだ。お主たちのしておる生活では落ち着かぬ気がするのだ。だから、妾の我が儘を聞いてはくれぬか?≫
「…わかりました。でも、もしも俺と同じようにしたかったら言ってくださいね?絶対にですよ?何でしたらベッドを貸しますし、要望があれば聞きますから、その時は遠慮なく言って下さい。」
≪…うむ、その時は遠慮なく言うからの?覚悟しておくのだ。≫

その時のノーナの表情は悪戯を企んでいる小悪魔のような顔だった。
しかし、ノーナの初めて見る表情に静也はドキっとしたのだ。

「ん?どうしたシズヤ。早くいくぞ。」
「はい。行きましょうノーナさん。」
≪うむ、妾も一緒させてもらおう。≫

三人は家具屋に入っていった。


「いらっしゃいませ。おや?これはこれは村長ザーク様ではございませんか。どのようなご用件で?」

白いスーツを着た執事のような男が入店一番に出迎えてくれた。
店内は清潔感で溢れていた。むしろ眩しいくらいだ。
店内の広さを活かした商品の配置、ベッドだけでなく布団やカーテン、ハンガーラックなど衣服や布製品は一階に、二階には魔導コンロや鍋やフライパン、包丁、ナイフやフォークなどの食器が置いてある。
確かに、家具ならここで買いそろえられる。
なお、この建物は三階建てで、三階は従業員、もしくは関係者しか入れないようだ。

「こいつの家具を一緒に見に来た。間が悪かったか?」
「いえいえ、滅相もございません。いつでもいらしてください。」
「シズヤ。家に配送するが構わんか?」
「いえ、その必要はないです。便利な魔法を使えるので。」
「そうか。ならいい。ということだ。…ついでに私も新しいのを見ておこう。」
「すいません、お名前をお伺いしても構いませんか?私は静也と言います。」
「これは失礼しました。私、家具屋『カーゴ』の店長『ボーラ』と申します。以後お見知りおきを。」

軽い挨拶を終え、家具を見て回ることにした。
ザークは二階に向かって行った。
静也はノーナと話しながらどれがいいかというのを聞いていた。
ベッドは夢にみたキングサイズ。建物を見たときに部屋に置けることはわかっているので迷わず購入。
ハンガーラックは多めに購入。カーテンも同じく。
ノーナの要望の毛皮は置いてなかったので、暫くは毛布で我慢してもらうことにしたがノーナはまんざらでもないご様子だ。

こんな感じで一階に置いてある必要な家具は購入していった。
次は二階に行こうとしたとき

「おーいシズヤ、見れくれコレ。マリアが新しい包丁が欲しいって言ってたからどっちがいいと思う?」
「ざ、ザークさん!危ないので包丁を仕舞ってください!」
「むむ…確かに、すまない。」

ザークは両手に包丁を握り見せてくる。
愛妻家なのはわかるが、これをみたらどうなることやらと内心思っていた。

ザークは妻のマリアの尻に敷かれているのだ。
下手なことをしたならマリアにひどい目にあう為、マリアのご機嫌取りをやらされているのが現状だ。

「何してたんですか…一体…」
「いや、妻に包丁が欠けたから新しいのを買ってきてくれと言われてな…浮かれていたようだ…」
「………それじゃぁ、私はこれから色々買いますので…」
「待たんかい。」

ザークの手が静也の肩を止める。
直感的に嫌な予感を感じる静也はゆっくりと振り替えると満面の笑みのザークが耳を貸せともう片方の手で手招きする。
すると小声で囁いた。

「私の手伝いをしてくれ。ノーナが魔族だといまはまだバレたく無いのだろう?」
「くっ…謀りましたね…!」
「失礼な、使えるものはなんでも使うたちだからな。」

ザークの顔は悪人のそれといっても良い顔をしていた。
その後、荷物係をさせられたのだった。

便利な収納系?の能力を持っている者は貴重で、収納系の能力をもつアイテムはあるにはあるのだが高価なためなかなか手を出せないため、タダで働いてくれる有能な荷物係シズヤがいて助かったのだという。

食器類だけでなく他にも回って買っては荷物を傘ストレージに入れさせらるの繰り返し、容量の限界がどこまでなのか気になったがそれはまた別の機会に試すことに。


結局、静也の家具を買いそろえ始めるのに一時間程掛かった。
ホクホク顔のザークは静也達についていく。

傘ストレージに入っているアイテムは覚えている。と言うよりも、思い浮かぶのだ。
だから、何を収納したか忘れない。

目的のベッドや、棚や食器、キッチン用品など、買いそろえられた為、結果は良しだ。
終わりよければすべて良しと思うことで、ザークに対する怒りは抑えていた。
ザークの人使いの粗さに呆れていたのだった。


家具の買い揃えで5万ルターも使った。
かなり使ったが、手持ちはまだまだあるので気にはならない。
が、ここまで一気に減ると、精神衛生上あまりよろしくない。

「さて、シズヤよ、まずは私の家にでも来てくれ。そこで荷物を出してくれ。」
「わかりました…ですがノーナは…」
「安心しろ、私が何とかする。…と言いたいが、私の妻は変わり者だからその必要はないだろうが…」
「変わり者?」
「あぁ、私の妻はかなり浮いている。まぁ、そこに惹かれたのだがな。」
≪妾はどこかで待っておるが?≫
「いや、その必要はないですよ。ついてきても大丈夫らしいです。」

そうなのか?、と遠慮がちなノーナの返事に大丈夫ですよと笑顔で返す。



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