胡紛(こふん)のアジール ―天才修復師は騎士の腕の中で夢を見る―

義井 映日

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番外編:甘い毒の溶かし方

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 ​「……瑛人、もう、食べられないよ」
 
 ​アジールのダイニング。藍が困ったように眉を下げ、口元を拭おうとする。
 だが、その手首は瑛人の大きな掌に優しく、けれど抗えない力で押さえ込まれていた。
 
 ​「あと一口だ。……お前のために、俺がわざわざ選んだものだぞ」
 
 ​瑛人の指先にあるのは、白桃のコンポート。
 シロップが滴るそれを、瑛人は自分の唇で一度受け止め、温度を確かめてから、藍の唇へと押し当てた。


 
 ​「……ん、……」
 

 
 ​藍は熱っぽい瞳で瑛人を見上げ、観念したようにその甘みを受け入れる。
 瑛人は藍の口内に残ったシロップを親指で掬い取り、そのまま自分の口へと運んだ。
 
 ​「いい子だ。……お前が俺の与えるものだけで満たされていくのを見るのは、実に気分がいい」
 
 ​瑛人は藍を椅子ごと引き寄せ、その細い腰を腕の中に閉じ込める。
 逃げ場のない檻の中で、藍は瑛人のシャツの胸元をぎゅっと掴み、その胸に顔を埋めた。
 
 ​「……瑛人が、甘すぎるんだよ」

「お前を甘やかしているんじゃない。……お前を、俺なしではいられない身体に作り替えているだけだ」
 
 ​そう言って笑う瑛人の声は、震えるほどに優しく、そして救いようがないほどに執着に満ちていた。

「……瑛人、指の匂いがする」

「当然だ。お前の口にするものも、纏うものも、すべて俺の指を通さなければ許さないと言っただろう」
 
 瑛人は藍の顎をクイと持ち上げ、その潤んだ瞳に、逃げ場のない宣告を刻みつけるように囁いた。
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