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第一章:【LOVE......≒( ニアリーイコール)】
開花の刻(とき)
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[上級悪魔の特徴として]
見た目の幼さ、容姿端麗、能力の高さは比例する。
悪魔とは皮肉なもので、美と凶悪さと力こそ全て。
力が強ければ強いほど見目の麗しい者となる。
クロエもその愛らしい外見の身の内に計り知れないほど膨大な能力を持って発生した。
幼悪魔または産まれたての嬰児《えいじ》の姿で発生する。
力が強ければ強いほど幼い姿となる。
その身に宿した魔力と能力のコントロールのための期間を要するものと思われる。
顔に文様が現れる。
花や動物をモチーフとしたものが多い。
クロエは花の文様を持っている。
通常、悪魔の文様は身体の一部分に現れる。
多くの者が腹であったり腕に現れる傾向が強い。
「顔」など目立つ場所に現れる場合、能力と魔力の高さの現れの場合が多い。
――この三つの価値こそが、彼が「特別」であるという証左である――
言うまでもなく「クロエ」はこの三点全てに該当する悪魔の嬰児《えいじ》であった。
更にクロエは数万年に一度発生すると言われる[両性具有性]として、希少性を持って発生した小悪魔でもあったのだ。
両性を併せ持つ身体⋯⋯。
男と女、それは私に穢されるためだけの特別な「獲物」の証ではないか。
私の側で美しく開花していく姿は、静かに私の狂気を助長させたのだ。
幼き皇太子である私に保護され、魔皇居に共に帰還した後、私は共に成長することを望んだ。しかし将来の私の補佐官として育てたいという父王始め周囲の声もあり、彼は現副魔王アークの元に引き取られた。
副魔王と言う地位を継ぐだけの素質を持って発生したこの小悪魔は、アークが養い親となり生計を共にすることが決まった。
悪魔は自然発生するものだ。親もなければ子もない。
運が良い者は誰かに拾われ、運の悪い者は売り飛ばされるか殺されるか。その二択しかないのだ。
クロエは前者に該当した。
アークに引き取られたとは言え、私の希望通り一緒に過ごす時間は多かった。
時間が許す限り私達は共に過ごし、「兄弟」のように育てられたのだ。
その時間が、私には生涯かけがえのない宝物のような、唯一癒しと解放の時間だった。
発生してから感じ続けた孤独も、周囲への不信感も忘れさせてくれたのは「クロエ」と言うかけがえのない存在だったのだ。
小さなクロエが自分の庇護下にあるという状況は、優越感と独占欲を満たしていたに違いない。
――大切な大切な私のクロエ。誰にも渡しはしないし、私のそばで私の為だけに生きてくれればいい――
幼心にそう思っていたのだろう。
彼との時間は、私の心と体の成長に多大なる安定を与えた。
あれ程自分でも持て余していた能力のコントロールは落ち着き、完全に自分でコントロールできるまでになっていたのだ。
精神の揺らぎも落ち着き、誰に対しても穏やかに接する事が出来るまでに成長を遂げた。
あの私が周囲から「穏やか」と称されるまでになっていた。
「兄さまは皆に優しい」
とクロエに言われるほど、私は落ち着きと安寧を取り戻す事が出来たのである。
優しい? 誰が? 笑わせてくれる。
君に向ける微笑みは、善き兄の仮面であり、今か今かと果実が熟れるその時を待っているのだよ?
それを知ったら君はどんな顔をするのかな?
ああ…………愛おしいクロエ。
私が、その香しい、白くほっそりとした色香を振りまく首筋に「牙」ではなく――欲望」を突き立てたい、そう思っているなんて君は思ってもないだろ?
早く私の手の中に堕ちておいで。
悠久の時間は流れ、季節は数万年と幾分過ぎた頃、人間にしたらクロエは一八歳位の姿になっていた。私は二三、四辺りの姿と言ったところだろうか。成長と共に彼は「男」が優位な外見へと姿を変えていった。
悪魔の時間軸は人間のそれとは異なり、肉体の成長は早いが、精神の成熟と魔界の歴史は数万年単位で進行する。
幼い頃は魔女のような可愛らしさと愛らしさの容姿で私を癒し満たしてくれたが、今ではなんとも美しい美丈夫へと変化を遂げていた。
豪奢な美しい金髪に「男」にしては小柄で線の細い儚い中性的な美しさ。どちらともつかない「性」の危うさが相まって、なんとも妖艶な青年へと姿を変えていた。そう、それは「魔王」を誘惑する毒婦そのものではないか。
そのクロエの咲き誇る美しい姿の変化によって、自分の中の「男」としての欲望はギラギラと鎌首を擡げ大いに刺激されたのだ。
今まで目を逸らしてきた彼に対しての「欲」をはっきりと自覚したときでもあった。
あんなに可愛かった私のクロエ。
そのきれいな顔を快楽に歪ませて、涙を流しながら私に縋る姿を想像してゾクゾクとした。
私の中に眠っていた『雄』としての飢えが、猛烈に鎌首をもたげたのだ。
これほどまでに浅ましく、支配的な『情欲』を飼い慣らしていたとは、私自身、知りもしなかった。
全ては、クロエ彼に対する『支配と独占欲』の塊であると気付かされたのだ。
彼が「私の為だけに」発生したと言うならば、その生は私だけのものだ。そうだろ? 君と生涯を共にする「運命」ならば、心も身体も私のものになるべきなのだ。
君は何も知らず、穏やかに接する「私」を兄と慕い、未来の「主」と崇め讃え「主君と臣下」としての主従関係の未来を信じて疑わない。
君にしてみればなんと美しい未来の姿なのだろうな?
自分のこの思想にたまらず口元が弛み、生贄が捧げられる祭壇に美しい身体を横たえる君を想像して、終いは高らかな笑い声が静寂の私室に響き渡った。
見た目の幼さ、容姿端麗、能力の高さは比例する。
悪魔とは皮肉なもので、美と凶悪さと力こそ全て。
力が強ければ強いほど見目の麗しい者となる。
クロエもその愛らしい外見の身の内に計り知れないほど膨大な能力を持って発生した。
幼悪魔または産まれたての嬰児《えいじ》の姿で発生する。
力が強ければ強いほど幼い姿となる。
その身に宿した魔力と能力のコントロールのための期間を要するものと思われる。
顔に文様が現れる。
花や動物をモチーフとしたものが多い。
クロエは花の文様を持っている。
通常、悪魔の文様は身体の一部分に現れる。
多くの者が腹であったり腕に現れる傾向が強い。
「顔」など目立つ場所に現れる場合、能力と魔力の高さの現れの場合が多い。
――この三つの価値こそが、彼が「特別」であるという証左である――
言うまでもなく「クロエ」はこの三点全てに該当する悪魔の嬰児《えいじ》であった。
更にクロエは数万年に一度発生すると言われる[両性具有性]として、希少性を持って発生した小悪魔でもあったのだ。
両性を併せ持つ身体⋯⋯。
男と女、それは私に穢されるためだけの特別な「獲物」の証ではないか。
私の側で美しく開花していく姿は、静かに私の狂気を助長させたのだ。
幼き皇太子である私に保護され、魔皇居に共に帰還した後、私は共に成長することを望んだ。しかし将来の私の補佐官として育てたいという父王始め周囲の声もあり、彼は現副魔王アークの元に引き取られた。
副魔王と言う地位を継ぐだけの素質を持って発生したこの小悪魔は、アークが養い親となり生計を共にすることが決まった。
悪魔は自然発生するものだ。親もなければ子もない。
運が良い者は誰かに拾われ、運の悪い者は売り飛ばされるか殺されるか。その二択しかないのだ。
クロエは前者に該当した。
アークに引き取られたとは言え、私の希望通り一緒に過ごす時間は多かった。
時間が許す限り私達は共に過ごし、「兄弟」のように育てられたのだ。
その時間が、私には生涯かけがえのない宝物のような、唯一癒しと解放の時間だった。
発生してから感じ続けた孤独も、周囲への不信感も忘れさせてくれたのは「クロエ」と言うかけがえのない存在だったのだ。
小さなクロエが自分の庇護下にあるという状況は、優越感と独占欲を満たしていたに違いない。
――大切な大切な私のクロエ。誰にも渡しはしないし、私のそばで私の為だけに生きてくれればいい――
幼心にそう思っていたのだろう。
彼との時間は、私の心と体の成長に多大なる安定を与えた。
あれ程自分でも持て余していた能力のコントロールは落ち着き、完全に自分でコントロールできるまでになっていたのだ。
精神の揺らぎも落ち着き、誰に対しても穏やかに接する事が出来るまでに成長を遂げた。
あの私が周囲から「穏やか」と称されるまでになっていた。
「兄さまは皆に優しい」
とクロエに言われるほど、私は落ち着きと安寧を取り戻す事が出来たのである。
優しい? 誰が? 笑わせてくれる。
君に向ける微笑みは、善き兄の仮面であり、今か今かと果実が熟れるその時を待っているのだよ?
それを知ったら君はどんな顔をするのかな?
ああ…………愛おしいクロエ。
私が、その香しい、白くほっそりとした色香を振りまく首筋に「牙」ではなく――欲望」を突き立てたい、そう思っているなんて君は思ってもないだろ?
早く私の手の中に堕ちておいで。
悠久の時間は流れ、季節は数万年と幾分過ぎた頃、人間にしたらクロエは一八歳位の姿になっていた。私は二三、四辺りの姿と言ったところだろうか。成長と共に彼は「男」が優位な外見へと姿を変えていった。
悪魔の時間軸は人間のそれとは異なり、肉体の成長は早いが、精神の成熟と魔界の歴史は数万年単位で進行する。
幼い頃は魔女のような可愛らしさと愛らしさの容姿で私を癒し満たしてくれたが、今ではなんとも美しい美丈夫へと変化を遂げていた。
豪奢な美しい金髪に「男」にしては小柄で線の細い儚い中性的な美しさ。どちらともつかない「性」の危うさが相まって、なんとも妖艶な青年へと姿を変えていた。そう、それは「魔王」を誘惑する毒婦そのものではないか。
そのクロエの咲き誇る美しい姿の変化によって、自分の中の「男」としての欲望はギラギラと鎌首を擡げ大いに刺激されたのだ。
今まで目を逸らしてきた彼に対しての「欲」をはっきりと自覚したときでもあった。
あんなに可愛かった私のクロエ。
そのきれいな顔を快楽に歪ませて、涙を流しながら私に縋る姿を想像してゾクゾクとした。
私の中に眠っていた『雄』としての飢えが、猛烈に鎌首をもたげたのだ。
これほどまでに浅ましく、支配的な『情欲』を飼い慣らしていたとは、私自身、知りもしなかった。
全ては、クロエ彼に対する『支配と独占欲』の塊であると気付かされたのだ。
彼が「私の為だけに」発生したと言うならば、その生は私だけのものだ。そうだろ? 君と生涯を共にする「運命」ならば、心も身体も私のものになるべきなのだ。
君は何も知らず、穏やかに接する「私」を兄と慕い、未来の「主」と崇め讃え「主君と臣下」としての主従関係の未来を信じて疑わない。
君にしてみればなんと美しい未来の姿なのだろうな?
自分のこの思想にたまらず口元が弛み、生贄が捧げられる祭壇に美しい身体を横たえる君を想像して、終いは高らかな笑い声が静寂の私室に響き渡った。
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