転生王子はダラけたい

朝比奈 和

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第20章~転生王子と後期授業

GW企画 特別編 カルロスと友だちの証

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 これは、マクベアー先輩たち三年生の中等部卒業が間近となった、ある日の出来事。

 秘密基地として使用している旧教務室では、フィルやその友人たちの召喚獣が留守番をしていた。
 留守番するメンバーは、その時々で違う。
 今日のメンバーはフィルの召喚獣のテンガ・ホタル・ザクロ・コハク・ヒスイ。
 ライラの召喚獣のラグールというアライグマに似た種のナッシュ。
 レイの召喚獣の砂猿のロイ。トーマの召喚獣の長耳兎のエリザベスだ。
 
 留守番中は、たいてい皆で話をしたり遊んだりしている。
 今日の話題はマクベアー先輩の召喚獣、三日月熊のカルロスのことだった。
 【もうすぐ卒業ってことは、カルロスとも会う回数が減っちゃうっすねぇ】
 袋鼠のテンガが悲しげに呟くと、氷亀のザクロもしんみりとため息を吐いた。
 【今だってお互いに召喚されている時くれぇしか会えねぇのに、もっと会えなくなっちまうんだなぁ】
 毛玉猫のホタルも、元気なく耳を下げる。
 【ひなたぼっこの時、カルロスは大きな体で枕になってくれたです。いっぱいお話もしたです。寂しいです】
 そんなテンガたちの中でも一番しょんぼりしているのは、カルロスと一番仲の良いコハクだ。
 【……カルロス】
 いつになく元気のない声で呟く。
 そうして落ち込むコハクたちを、ナッシュが二本足で立って見下ろす。
 【随分しょんぼりさんやなぁ。気持ちは分かるけど、ぱあっと明るく送り出してやらな。カルロスかて、別れがたくなるやろ。ほら、皆でぱあっと明るくしよーや】
 ナッシュは「ぱあっと、ぱあっと」と繰り返しながら、前足を上に挙げる。
 だが、コハクたちはそれに返さず、重いため息をついた。それを見て、ナッシュは挙げていた前足を力なく下ろす。
 【あかん。俺の言葉が、全然届いてないわ】
 悲しげなナッシュに、ヒスイは困り顔で微笑む。
 【仕方ないわ。テンガとホタルとザクロとコハクは、カルロスととても親しくしていたもの。入学前に知り合って、お付き合いが長いから寂しいのよね】
 【僕もカルロスさんには、仲良くしてもらったから寂しいです】
 ロイが小さな声で言うので、ナッシュは「はうぁ~」と嘆く。
 【ロイもかーいっ!ここには、しょんぼりさん以外おらんのかぁ】
 エリザベスはそんな皆に、タンタンと足を鳴らす。
 【もう!卒業って言っても、同じ敷地内でしょ。会おうと思えば会えるわよ!】
 【お、エリザベスは寂しないんか?エリザベスかて、付き合い長いんやろ?】
 意外そうに言うナッシュに、エリザベスはフンと鼻息をつく。
 【私だって寂しいわよ。だけど、しっかり送ってあげたいもの】
 【えらい!エリザベスの言うとおりや。な!自分らも明るくいこ!】
 ナッシュは大きく前足を広げ、テンガたちに言う。
 【会えなくなったら、俺たちのこと忘れちゃうかもしれないっす】
 テンガは悲しそうに呟き、コハクたちも「うんうん」と頷く。
 【この、困ったしょんぼりさんたちめーっ!俺かて寂しいんやぞーっ!】
 堂々巡りにナッシュが頭を抱えたその時、フィルたちが部屋に戻ってきた。
 【あぁぁ!ぼん待っとったわぁ。この重い空気から、助けてぇぇ】
 ナッシュがそう言いながら、フィルの足に抱きつく。
 「え?何事!?」
 突然の救助依頼に、フィルが目を瞬かせた。
 【実はですね……】
 ヒスイは苦笑しつつ、フィルたち全員に人の言葉で部屋であった出来事を話して聞かせた。
 「そっかぁ。カルロスと別れるのは皆も寂しいよね」
 エリザベスを膝に抱っこしながら、トーマが言う。
 「会う機会が減るのは確かだしな」
 カイルが渋い顔で言い、アリスも表情を曇らす。
 「そうね。離れたら忘れられちゃうんじゃないかって不安になる気持ちわかるわ」
 「皆、カルロスと仲が良かったものねぇ」
 「ロイだって面倒見てもらったしな」
 ライラやレイもそう言って、ナッシュやロイの頭を撫でる。
 フィルはしばし考える仕草をしていたが、ふと思いついた顔をする。
 「そうだ。カルロスにお友だちの証をあげたら、それを見るたびに皆のこと思い出してくれるんじゃないかな?」
 その提案に、その場にいた皆の顔が嬉しそうに輝いた。

 その日の放課後、フィルたちはマクベアー先輩を呼び出した。
 「カルロスに用事があるってことだったが、何だ?」
 【召喚獣の皆もそろって、どうしたのぉ?】
 首を傾げるマクベアー先輩とカルロスに、フィルたちは微笑む。
 「カルロスにあげたい物があるんです。召喚獣の皆から代表して……コハク」
 キョトンとするカルロスに、色紙を頭に載せたコハクが、バランスを取りつつよろよろと歩いてきた。
 「おい、大丈夫か?」
 マクベアー先輩が心配そうにしたが、フィルは困り顔で言う。
 「どうしても頑張るみたいで、あたたかく見守ってください」
 よろよろ運ぶコハクの後ろでは、ナッシュたちが応援していた。
 【転びそうでハラハラするわぁ】
 【コハク、頑張れっす!】
 【あと少しでぃ!】
 テンガやザクロの声援を受けつつ、コハクは何とかカルロスのもとへ色紙を届ける。
 【これ僕にくれるの?】
 カルロスが尋ねると、コハクは大きく頷いて色紙を指した。
 【ともだちのあかし!】
 【友だちの証?】
 そう言って、カルロスが色紙を見つめる。マクベアー先輩もそれをのぞき込んだ。
 そこにはコハクをはじめとする召喚獣たちの、足型が押されていた。
 「これは?」
 マクベアー先輩が尋ねると、フィルはその色紙について説明する。
 「離れていても、ずっとカルロスとお友だちだっていう証です。カルロスと離れるのが寂しそうだったので、皆で作りました」
 「なるほどな。良かったなカルロス。高等部の俺の部屋に飾っておこう」
 マクベアー先輩がカルロスの頭を撫でると、カルロスは色紙を見つめながら嬉しそうに「グガァ」と鳴いた。
 【この肉球は、ホタル。この丸いのはザクロかな?この小枝みたいな足型が、コハクだね。他にもいっぱい足型がついてる。嬉しいなぁ】
 【俺はこの足型っす!】
 【俺はこれや!】
 カルロスの近くに来て、テンガやナッシュが色紙を前足で指す。それに続いて、エリザベスやロイなど、他の召喚獣たちも自分の足型を指した。
 【ありがとうね。すごく嬉しいよ】
 お礼を言うカルロスに、コハクはフンスと息を吐いて言った。
 【カルロス、ともだち!】
 それに頷く他の皆に、カルロスは言った。
 【うん。離れても友だちだね!】
 

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