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第23章~転生王子と魔獣の森
9巻発売日特別編 子ヴィノと広場
ヴィノたちと山へ散策へ行った、次の日。
俺はアリスとカイル、召喚獣の皆を連れて、再び子ヴィノに会いに来た。
明日出立だから、その前にもう一度遊ぼうと思ってやってきたのだ。
メンデルさんの所へ行くと、村のヴィノ広場に預けているとの話だった。
そこは、ヴィノ村の一角にある高い柵に囲まれた広場で、遠出をさせられない高齢のヴィノや、幼いヴィノたちを運動させるための場所らしい。
高い柵のおかげで肉食獣などに襲われる心配もないため、ヴィノ遣いたちはここに自分のヴィノを放し、他の仕事へと出かけるのだそうだ。
俺たちは柵の扉を開けて、その中へと入る。
【ヴィノたちだけしかいないようですわね】
そう言って、姿を消していたヒスイが現れる。
ヒスイの言うように、高齢のヴィノたちがのんびりひなたぼっこをし、子ヴィノたちは広場を駆け回っている。
広場にはヴィノのご飯となる草が茂り、雨風がしのげるスペースや、子ヴィノのための遊び場があった。
「ヴィノたちが過ごしやすいようになっているんですね」
「遊具も充実しています」
感心しているアリスとカイルに、俺も広場内を眺めながら頷く。
遊具には高いところが好きな子ヴィノのための岩場や、階段状のステップ、シーソーに似たバランスをとるものがあった。
全て、遊びながらにして子ヴィノの運動能力を高める遊具ばかりだ。
「小屋に作る遊具の参考になるな」
学校の敷地内には、デュラント先輩とマクベアー先輩から譲り受けた小屋がある。
ブランコや水場は作ったが、まだ遊具が足りていなかった。
どうせなら動物も遊べるものがいいよなぁ。
新たな刺激を受けて構想を練っていると、ホタルが遊ぶ子ヴィノたちを見つめて呟く。
【子ヴィノ楽しそうです】
そう言って、羨ましげに「ナウ~」と鳴いた。
【すごいですね】
肩の上のルリは興味深げにあたりを見回し、胸ポケットのコハクも大きく頷いた。
【うぉぉ!面白そう!】
【フィル様、遊んできていいっすか?】
ランドウやテンガは、まるで遊園地に来た子供みたいなテンションでぴょんぴょんと跳ねる。
「そうだね。子ヴィノにお願いして、仲間に入れてもらおうか」
俺が微笑むと、皆嬉しげに尻尾を振ったり羽根をバタつかせる。
その時、岩場で遊んでいた子ヴィノがこちらに気がついた。
【ちるたん!】
【あちょび きてくれたの?】
嬉しそうに言って、一匹の子ヴィノが岩の頂上から下の石垣へと飛び降りる。
「んなっ!!」
いくら何でもあの高さから落ちたら怪我をする。だが、落下速度を考えたらコクヨウでも間に合わない。
俺とカイルが息を呑み、アリスは顔を覆う。
俺たちの目の前で子ヴィノが石垣の上に落ちた――かに見えた。
石垣で見えなくなると同時にボファッという音がして、藁が巻き上がる。
慌てて駆け寄ると、石垣の向こう側には藁がうずたかく積まれていた。
その藁の中から頭に藁をつけた子ヴィノが、ひょこっと顔を出す。
【ちーるたーん!あーちょーぼー】
怪我もなく元気そうである。
「あ、焦ったぁ……」
「私もびっくりしました……」
足の力が抜け石垣にしがみつく俺とアリスに、子ヴィノは不思議そうに首を傾げる。
【どーちたの?】
自分の行動が原因とは思ってないんだろうなぁ。
「岩場から落ちてもいいように、藁山が設置されているみたいですね」
カイルはそう言って、俺たちが元の体勢に戻るのに手を貸してくれた。
安全面が配慮されている点は、とても素晴らしい。だけど、知らなかったから、心臓止まるかと思った。
【フィル様、俺も飛ぶのやってみたいっす!】
【俺も俺も!】
ねだるテンガとランドウを、俺は不安な気持ちで見つめる。
「大丈夫?子ヴィノは慣れているけど、藁以外の所に落ちたら怪我しちゃうんだよ」
【大丈夫っす!落ちて怪我なんかしないっす!】
自信満々のテンガだが、俺の召喚獣になる前、崖を登り切れずに落ちて怪我したこと忘れてないか。
許可すべきか迷っていると、カイルに石垣の上に下ろしてもらったザクロが、ふと辺りを見回した。
【おや、コクヨウの旦那の姿がありやせんね】
「え?」
そう言えば、さっきまで近くにいたコクヨウがいないな。
【フィル~。ぴょん!】
ポケットにいたコハクが羽根でペシペシと俺の胸を叩いたかと思うと、ピッと岩場の頂上を指す。
俺が見上げた時には、黒い子狼が岩場から飛び降りるところだった。
藁山に落ちて、ボフッと藁を巻き上げる。
「わっぷっ!」
近くにいた俺たちは、思い切りその藁を浴びた。
「コクヨウ……落ちるなら落ちるって言ってよ」
頭の藁を払いながら、俺は藁山から顔を出したコクヨウを半眼で見つめる。
【どんなものかと思ってな】
それ以上は言わなかったが、まあまあ楽しかったのか二本の尻尾を揺らしている。
【フィル様、お願いっす~】
【ぴょんしたい~】
俺の足にぺったりとくっついて、テンガとランドウが甘える。
うーん。こうされると弱いんだよね。
「わかったよ。でも、下に誰もいないのを注意して、順番にだからね」
そう許可した途端に、テンガとランドウは「やったー!」と岩場へと走って行く。
本当に大丈夫かな……。
俺の不安が顔に出ていたのか、ヒスイがくすっと笑った。
【フィル、私が見ておりますからご安心ください】
「助かるよ。お願いね」
ヒスイが見ていてくれるなら安心だ。
「フィル様はやらなくていいんですか?」
アリスに聞かれて、俺は岩場を見上げて唸った。
「僕は……いいかなぁ。藁にジャンプは楽しそうだけど、この岩場に上るのだけで大変そうだもん」
四メートルほどの高さがある岩場は、上るための足場はあるものの、結構勾配が急だった。
テンガとランドウはヒスイに頂上まで連れて行ってもらっているみたいだけど、それはちょっと頼みにくいもんなぁ。
以前ヒスイにお姫様抱っこされた過去があるだけに、運び方がどうなるか心配である。
そんなことを考えているところへ、子ヴィノがわらわらと集まってくる。
【ちるたん、何であちょぶ?】
問いかけながらも、期待のこもった瞳は『おにごっこしよう』と言っていた。
やはりか……やはり鬼ごっこしたいのか。
基本、子ヴィノは追いかけたり追いかけられたりが好きみたいだもんな。
ある程度は覚悟してきたけど、来て早々の鬼ごっこはきつい。
俺はせめてもう少し先延ばしできないかと、考えをめぐらせたのだった。
俺はアリスとカイル、召喚獣の皆を連れて、再び子ヴィノに会いに来た。
明日出立だから、その前にもう一度遊ぼうと思ってやってきたのだ。
メンデルさんの所へ行くと、村のヴィノ広場に預けているとの話だった。
そこは、ヴィノ村の一角にある高い柵に囲まれた広場で、遠出をさせられない高齢のヴィノや、幼いヴィノたちを運動させるための場所らしい。
高い柵のおかげで肉食獣などに襲われる心配もないため、ヴィノ遣いたちはここに自分のヴィノを放し、他の仕事へと出かけるのだそうだ。
俺たちは柵の扉を開けて、その中へと入る。
【ヴィノたちだけしかいないようですわね】
そう言って、姿を消していたヒスイが現れる。
ヒスイの言うように、高齢のヴィノたちがのんびりひなたぼっこをし、子ヴィノたちは広場を駆け回っている。
広場にはヴィノのご飯となる草が茂り、雨風がしのげるスペースや、子ヴィノのための遊び場があった。
「ヴィノたちが過ごしやすいようになっているんですね」
「遊具も充実しています」
感心しているアリスとカイルに、俺も広場内を眺めながら頷く。
遊具には高いところが好きな子ヴィノのための岩場や、階段状のステップ、シーソーに似たバランスをとるものがあった。
全て、遊びながらにして子ヴィノの運動能力を高める遊具ばかりだ。
「小屋に作る遊具の参考になるな」
学校の敷地内には、デュラント先輩とマクベアー先輩から譲り受けた小屋がある。
ブランコや水場は作ったが、まだ遊具が足りていなかった。
どうせなら動物も遊べるものがいいよなぁ。
新たな刺激を受けて構想を練っていると、ホタルが遊ぶ子ヴィノたちを見つめて呟く。
【子ヴィノ楽しそうです】
そう言って、羨ましげに「ナウ~」と鳴いた。
【すごいですね】
肩の上のルリは興味深げにあたりを見回し、胸ポケットのコハクも大きく頷いた。
【うぉぉ!面白そう!】
【フィル様、遊んできていいっすか?】
ランドウやテンガは、まるで遊園地に来た子供みたいなテンションでぴょんぴょんと跳ねる。
「そうだね。子ヴィノにお願いして、仲間に入れてもらおうか」
俺が微笑むと、皆嬉しげに尻尾を振ったり羽根をバタつかせる。
その時、岩場で遊んでいた子ヴィノがこちらに気がついた。
【ちるたん!】
【あちょび きてくれたの?】
嬉しそうに言って、一匹の子ヴィノが岩の頂上から下の石垣へと飛び降りる。
「んなっ!!」
いくら何でもあの高さから落ちたら怪我をする。だが、落下速度を考えたらコクヨウでも間に合わない。
俺とカイルが息を呑み、アリスは顔を覆う。
俺たちの目の前で子ヴィノが石垣の上に落ちた――かに見えた。
石垣で見えなくなると同時にボファッという音がして、藁が巻き上がる。
慌てて駆け寄ると、石垣の向こう側には藁がうずたかく積まれていた。
その藁の中から頭に藁をつけた子ヴィノが、ひょこっと顔を出す。
【ちーるたーん!あーちょーぼー】
怪我もなく元気そうである。
「あ、焦ったぁ……」
「私もびっくりしました……」
足の力が抜け石垣にしがみつく俺とアリスに、子ヴィノは不思議そうに首を傾げる。
【どーちたの?】
自分の行動が原因とは思ってないんだろうなぁ。
「岩場から落ちてもいいように、藁山が設置されているみたいですね」
カイルはそう言って、俺たちが元の体勢に戻るのに手を貸してくれた。
安全面が配慮されている点は、とても素晴らしい。だけど、知らなかったから、心臓止まるかと思った。
【フィル様、俺も飛ぶのやってみたいっす!】
【俺も俺も!】
ねだるテンガとランドウを、俺は不安な気持ちで見つめる。
「大丈夫?子ヴィノは慣れているけど、藁以外の所に落ちたら怪我しちゃうんだよ」
【大丈夫っす!落ちて怪我なんかしないっす!】
自信満々のテンガだが、俺の召喚獣になる前、崖を登り切れずに落ちて怪我したこと忘れてないか。
許可すべきか迷っていると、カイルに石垣の上に下ろしてもらったザクロが、ふと辺りを見回した。
【おや、コクヨウの旦那の姿がありやせんね】
「え?」
そう言えば、さっきまで近くにいたコクヨウがいないな。
【フィル~。ぴょん!】
ポケットにいたコハクが羽根でペシペシと俺の胸を叩いたかと思うと、ピッと岩場の頂上を指す。
俺が見上げた時には、黒い子狼が岩場から飛び降りるところだった。
藁山に落ちて、ボフッと藁を巻き上げる。
「わっぷっ!」
近くにいた俺たちは、思い切りその藁を浴びた。
「コクヨウ……落ちるなら落ちるって言ってよ」
頭の藁を払いながら、俺は藁山から顔を出したコクヨウを半眼で見つめる。
【どんなものかと思ってな】
それ以上は言わなかったが、まあまあ楽しかったのか二本の尻尾を揺らしている。
【フィル様、お願いっす~】
【ぴょんしたい~】
俺の足にぺったりとくっついて、テンガとランドウが甘える。
うーん。こうされると弱いんだよね。
「わかったよ。でも、下に誰もいないのを注意して、順番にだからね」
そう許可した途端に、テンガとランドウは「やったー!」と岩場へと走って行く。
本当に大丈夫かな……。
俺の不安が顔に出ていたのか、ヒスイがくすっと笑った。
【フィル、私が見ておりますからご安心ください】
「助かるよ。お願いね」
ヒスイが見ていてくれるなら安心だ。
「フィル様はやらなくていいんですか?」
アリスに聞かれて、俺は岩場を見上げて唸った。
「僕は……いいかなぁ。藁にジャンプは楽しそうだけど、この岩場に上るのだけで大変そうだもん」
四メートルほどの高さがある岩場は、上るための足場はあるものの、結構勾配が急だった。
テンガとランドウはヒスイに頂上まで連れて行ってもらっているみたいだけど、それはちょっと頼みにくいもんなぁ。
以前ヒスイにお姫様抱っこされた過去があるだけに、運び方がどうなるか心配である。
そんなことを考えているところへ、子ヴィノがわらわらと集まってくる。
【ちるたん、何であちょぶ?】
問いかけながらも、期待のこもった瞳は『おにごっこしよう』と言っていた。
やはりか……やはり鬼ごっこしたいのか。
基本、子ヴィノは追いかけたり追いかけられたりが好きみたいだもんな。
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