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しおりを挟む「おっはよー!」
耳障りな程に元気な声が頭に響く。うるさい。寝させてくれよ。俺はまだ寝たいんだ。
「うぅ……あと30分………」
「そんな事言って……もー!ダメでしょ。」
そう言いながら変態野郎が布団を引っ張る。
「寒い。布団返せ。」
布団の端を引っ張り再度くるまろうとすると布団を無理矢理剥ぎ取られてしまった。
目を擦りながら起き上がると昨日の嫌な記憶が俺の目を覚まさせる。
「ほら、朝御飯出来るから起きて。」
そういって腕を引っ張られる。
寝ている間に大股で歩けはしないがそれなりに余裕のある足枷と手錠をはめられていたようで逃げようとしたら躓いてしまった。
「いってぇ……」
「もー、暴れようとするからそんな目にあうんだよ。暴れたら床に叩き落とすからね?」
そう言いながら俺は無理矢理お姫様抱っこをされた。
昨日頬を叩かれたのを思いだした俺は苦虫を噛んだような顔をしてふて腐れていた。
「今日は卵焼きと鮭の塩焼き、あとごはんと大根の味噌汁だよ。」
昨日は気がつかなかったが地下室の扉をよく分からないカードと相性番号を打ちながらそう言う。
こいつどんだけ筋肉あるんだよ。
片手で男一人持ち上げるとか俺には無理だわ……
ゴリラかよ。
俺は話したくないのにこいつはヘラヘラ笑いながら空気を読まずに話しかけてくる。
「お、おう……」
適当に相槌をうつが監禁する頭のイカれたこの筋肉ゴリラからまともな飯を貰えるとは思えない。
ヤバい薬でも入ってるんじゃ……
「はーい座って~」
そんな事を考えていたらいつの間にかダイニングキッチンらしき所についていた。
机の上には少し冷めてはいそうだがまだ湯気をたてる味噌汁等が並んでいた。
「はい、あーんして。」
アホ面で口をあけて目の前に出された塩焼きの鮭は昨日から何も食べていない俺にはすごく魅力的に見えた。
思わず口を開けようとしたが見ず知らずの俺を監禁する野郎だぞ?まともな物なんて入ってないはずだ。
「……お前が食ったら食う。」
そう興味が無さそうに良い毒味を促されると男は鮭を口にした。
「はい。食べたでしょ。今日は変な物入れてないんだけどな。」
今日ってなんだ今日は……恐ろしいセリフが聞こえた気がする。
取り敢えずこいつも食ってるし何も入ってないようだ。
自分で食べようと箸に手を伸ばしたが鎖のせいで茶碗を倒してしまった。幸い中身の米は溢れてない。
「っ……悪かった……」
取り敢えず謝っとこう。こいつの気にさわる事をしたらまたぶん殴られるかもしれない。
「はぁ………怪我してない?僕が食べさせてあげるから大人しくしてよ。」
一瞬真顔そう言いながら茶碗を起こして鮭を俺の口の前に持ってきた。
いやいやお前のせいで食いにくいんだよ。あなたが手錠とか掛けたのご存知?
「旨い!」
久しぶりに魚……というかまともな飯を食ったかもしれない。魚なんて生臭いし骨があるしで食おうとは思わなかった。
「だろ?良いのを取り寄せたんだ。」
そう言いながら親鳥のように俺に飯を食わせている。
「腹いっぱい!」
「朝食いつも食べてなかったもんな。」
え?いやなんで知ってんだよ。怖っ……
せっかく気分が良かったのに台無しだ。
ってか俺あいつと同じ箸使ってたよな?飯に夢中で忘れてた。最悪だ。
「んじゃ僕は仕事あるから。この部屋でなら映画とかアニメ好きなの見て良いよ。」
そう言いながら俺の足の鎖を変えて部屋に繋いでとっとっと部屋を出ていった。
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