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真珠の涙とハーニーのハープ

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「ハーニー、ハーニー…どこ?」

シャイニーが目を覚まし、パタパタと飛びながらハーニーを探している。

「シャイニー、私はここよ。」
「あ!ハーニー!」

サビィの部屋から急いで戻ったハーニーが両手を広げると、シャイニーが嬉しそうに飛び込んで来た。
そんな姿が可愛らしく、思わずギュッと抱き締めた。

「あのね。ぼく、ずっとハーニーを探してたんだよ。」

シャイニーが腕の中から不安そうにハーニーを見上げている。

(シャイニーが、もうこんなに話せるようになっているわ…)

あまりの成長の早さに戸惑いながらも笑顔でハーニーは答えた。

「ごめんね。シャイニー。ちょっと用事があって出掛けてたの。」
「そうなんだ…でも、来てくれたからいいよ。」

シャイニーが輝くような笑顔で答えると、ハーニーの胸がチクリと痛む。

(成長の部屋の事を話さないと…可哀想だけど、いつまでもこうしてはいられないわ。)

天使の成長はとても早く、人間の5倍のスピードで成長する。
最初の1年で5歳、次の1年で10歳まで成長するのだ。
これからシャイニーが預けられる成長の部屋は、2つに仕切られており、最初の1年を『夢見の部屋』次の1年を『希望の部屋』分かれて10歳まで過ごす。
幼い天使達は、10歳までは自由に伸び伸びと成長して
いく。

ハーニーは深呼吸をすると、シャイニーに切り出した。

「シャイニー。あなたは、これから成長の部屋に行かなければならないの。」
「成長の部屋?ハーニーも一緒に行くんでしょ?」
「いいえ…私は行けないの。」
「え…それなら、ぼくはいつ、ハーニーの所に戻れるの?」
「戻る事はないの…成長の部屋には、あなたのような子供の天使を世話をする専門の天使がいるのよ。」
「ハーニーはいないの?ぼくだけなの?」
「そうよ。シャイニー…私は行けない。ごめんなさい…」
「ぼく…ハーニーと一緒じゃないと嫌だよ…」

シャイニーは、そう呟くと大きな瞳から涙を溢れさせた。
その涙は、頬を伝いポタポタと床に落ちていった。
すると、涙はカチンと音を立て跳ね上がりコロコロと転がった。
その涙は、虹色に輝く真珠に姿を変えていた。
シャイニーの涙は、後から後から瞳から溢れ出し真珠となり床に転がった。

……カチン…コロコロ…カチン…コロコロ……

床にどんどん虹色の真珠が溜まっていく。

(大変!このままでは、床が真珠だらけになるわ!)

「シャイニー聞いて。私は一緒には行けないけど…成長の部屋は、誕生の部屋の隣よ。いつもあなたの近くにいるわ。私も成長の部屋に行くから、シャイニーも会いに来てくれるかしら?」

ハーニーがニッコリと笑い掛けると、シャイニーは泣くのを止め、まだ涙で濡れた瞳でハーニーを見つめた。

「本当に会いに行ってもいいの?」
「勿論よ。寂しくなったらいつでも来てね。」

ハーニーの言葉に安心し、シャイニーは笑顔で頷いた。

「分かった。寂しくなったらハーニーに会いに行くよ。離れるのは、やっぱり嫌だけど…」

シャイニーの言葉にホッとしながらも、ハーニーも離れる事に寂しさを感じていた。

「あのね。ハーニーにお願いがあるんだ。」

シャイニーは、モジモジしながらハーニーを見つめた。

「どんなお願いかしら?」
「えっとね…ハーニーのハープを聴きたいんだ。ぼく、卵の時にハーニーが弾くハープの音色が大好きだった。生まれたら、真っ先にハープを弾いている天使に会いたい…そう思ってたんだ。」
「分かったわ。シャイニーが楽しい気持ちで成長の部屋に行けるように弾くわね。」

ハーニーは、抱いていたシャイニーを優しく床に下ろすと、ハープを構え柔らかな指使いで奏で始めた。
ハーニーの細く長い指先から奏でられる、リズミカルで楽しげな音色が音符に姿を変え、シャイニーの周りをクルクルと回りながら踊り始めた。

「わぁ~」

シャイニーは瞳を輝かせながら、音符と一緒に踊ったりクルクルと回る音符を追い掛け、キャーキャーと喜び音符と遊んだ。

シャイニーがひとしきり遊び満足すると、ハーニーはハープを弾く手を止めた。
音色が途絶えると、音符も姿を消していった。

「あ~楽しかった。ハーニー、ありがとう。やっぱりハーニーのハープは凄いな~」
「喜んで貰えて良かったわ。ハープが聴きたくなったら、いつでも会いに来てね。」
「うん。ぼく…寂しいけど、成長の部屋に行くよ。」

シャイニーは笑顔だったが、その瞳には寂しさが溢れていた。

「分かったわ。シャイニー…いらっしゃい。」

ハーニーが両手を広げると、パタパタと翼を羽ばたかせながらシャイニーが腕の中に飛び込んで来た。
そんなシャイニーをギュッと抱き締め、ハーニーは成長の部屋をノックするのであった。



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