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約束
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「ふう…」
ハーニーは、天使長室の前で深呼吸をした。
「サビィ様は、なぜ私をお呼びになったのかしら…」
ハーニーは、なかなか扉をノックする勇気がなく、かれこれ10分ほど扉をジッと見つめている。
8枚の翼が描かれている大きな扉を前にすると、緊張しどうしてもノックができない。
「もう、こうしていても仕方ないわ!」
意を決してノックをしようと腕を上げた瞬間、扉の向こう側から、穏やかで澄んだ声が聞こえてきた。
「ハーニーだね。入りなさい。」
「は、はい…失礼致します。」
ハーニーは早鐘を打つ胸を押さえながら、扉を押し開け中に入った。
深く一礼し、顔を上げると穏やかな笑顔のサビィの姿が目に入った。
「ハーニー、突然呼び出してすまない。」
(なんて美しいの…〕
ハーニーは、サビィの美しさに目を奪われ言葉を失った。
今までは遠くからしかサビィを見た事がなかった。
しかし、それでも彼の美しさは眩いばかりの光を放っていた。
改めて、サビィを目の当たりにしあまりの美しさに息をのんだ。
足首まである長い髪は銀色に輝き、サビィが動くたひにサラサラとなびく。
肌は雪のように白く、瞳は知的さをはらみながらも憂いを纏った美しい青。
翼は左右合わせ8枚。
翼の多さは天使の力の強さを表し、8枚の翼は天使の中でも最大の力を持つ証である。
そして、身に纏う真っ白なローブが更に美しさを引き立たせている。
(きっと、天使の中でもサビィ様が一番美しいわ…)
ハーニーは、サビィに見惚れたままぼんやりと考えていた。
「ハーニー…ハーニー?ボーッとしているが大丈夫か?」
ハーニーは、サビィの問い掛けにハッと我に返った。
「申し訳ありません。大丈夫です!」
慌てて答えたせいで、ハーニーの声は思ったよりも大声になっていた。
その大声に一瞬目を丸くしたサビィは、クスクス笑った。
「元気そうで何よりだ。」
(もう!やだ…恥ずかしいわ)
ハーニーは顔を真っ赤にし俯いてしまった。
サビィは暫くクスクスと笑っていたが、呼吸を整えると真剣な顔でハーニーを見つめた。
「ハーニー、顔をお上げ。実はシャイニーの事で話しがある。」
「シャイニーの事ですか…?」
ハーニーは弾かれたように顔を上げた。
「そうだ。シャイニーは君も知っているとは思うが、特別な子だ。卵の頃から他の天使達とは違っていた。そして、それだけではない。実は、シャイニーには大きな使命があるのだ。」
「シャイニーが特別な子だという事は知っていましたが…大きな使命があるなんて…あの子の使命は一体どういったものなのですか?」
ハーニーの頭にはシャイニーの可愛い笑顔が浮かんでいた。
「すまないが、あの子の使命については話せない…私も、詳しくは分からないのだ…ただ、その使命はとても大きいと感じている。いずれ、彼自身が自分の使命に気付くだろう。その大きな使命故、あの子の学びもとても大きく辛いものとなる。学びの大きさに嘆き悲しむ事があるかも知れない。苦しみが胸いっぱいに広がる事もあるだろう。そのような時は、君がシャイニーの支えになって欲しい。シャイニーは、君を慕い甘えるだろう。あの子を温かく受け止めてあげて欲しいのだ。」
ハーニーはサビィの話しを聞きながら、シャイニーの笑顔や抱き締めた感触…そして、安心して眠る姿を思い出し胸がいっぱいになっていた。
このまま離れてしまうのは、とても寂しいと思っていたのだ。
これからもシャイニーの成長を見守る事ができると思うと嬉しい。
しかし、今後シャイニーが嘆き悲しむような出来事が起こると知ると、胸が締め付けられるように痛んだ。
(何が起こっても、私がシャイニーを守り支えになろう…)
ハーニーが固く決心すると、更にサビィが言葉を続けた。
「そして一つだけ約束して欲しい事がある。先程ライルにも全天使に伝えるよう頼んだのだが…シャイニーを特別扱いしないようにしてもらいたい。彼本人や他の子達にも特別だと気付かれないように…」
「サビィ様、ご安心下さい。シャイニーとは上手く接しながら支えとなり見守っていく事をお誓いします。」
ハーニーは力強く、そして自分自身に言い聞かせるように言った。
「感謝するハーニー。」
サビィが安堵し艶やかに微笑むと、その美しさにハーニーはうっすらと頰を染めるのであった。
「ハーニー、ハーニーはどこ?」
その時、先程サビィが見ていた水盤から心細そうな声が聞こえてきた。
「どうやら、シャイニーが目覚め君を探しているようだ。私からの話しは以上だ。行っておやりなさい。」
「はい、サビィ様。失礼致します。」
ハーニーは深く一礼をし、天使長室を後にした。
ハーニーは、天使長室の前で深呼吸をした。
「サビィ様は、なぜ私をお呼びになったのかしら…」
ハーニーは、なかなか扉をノックする勇気がなく、かれこれ10分ほど扉をジッと見つめている。
8枚の翼が描かれている大きな扉を前にすると、緊張しどうしてもノックができない。
「もう、こうしていても仕方ないわ!」
意を決してノックをしようと腕を上げた瞬間、扉の向こう側から、穏やかで澄んだ声が聞こえてきた。
「ハーニーだね。入りなさい。」
「は、はい…失礼致します。」
ハーニーは早鐘を打つ胸を押さえながら、扉を押し開け中に入った。
深く一礼し、顔を上げると穏やかな笑顔のサビィの姿が目に入った。
「ハーニー、突然呼び出してすまない。」
(なんて美しいの…〕
ハーニーは、サビィの美しさに目を奪われ言葉を失った。
今までは遠くからしかサビィを見た事がなかった。
しかし、それでも彼の美しさは眩いばかりの光を放っていた。
改めて、サビィを目の当たりにしあまりの美しさに息をのんだ。
足首まである長い髪は銀色に輝き、サビィが動くたひにサラサラとなびく。
肌は雪のように白く、瞳は知的さをはらみながらも憂いを纏った美しい青。
翼は左右合わせ8枚。
翼の多さは天使の力の強さを表し、8枚の翼は天使の中でも最大の力を持つ証である。
そして、身に纏う真っ白なローブが更に美しさを引き立たせている。
(きっと、天使の中でもサビィ様が一番美しいわ…)
ハーニーは、サビィに見惚れたままぼんやりと考えていた。
「ハーニー…ハーニー?ボーッとしているが大丈夫か?」
ハーニーは、サビィの問い掛けにハッと我に返った。
「申し訳ありません。大丈夫です!」
慌てて答えたせいで、ハーニーの声は思ったよりも大声になっていた。
その大声に一瞬目を丸くしたサビィは、クスクス笑った。
「元気そうで何よりだ。」
(もう!やだ…恥ずかしいわ)
ハーニーは顔を真っ赤にし俯いてしまった。
サビィは暫くクスクスと笑っていたが、呼吸を整えると真剣な顔でハーニーを見つめた。
「ハーニー、顔をお上げ。実はシャイニーの事で話しがある。」
「シャイニーの事ですか…?」
ハーニーは弾かれたように顔を上げた。
「そうだ。シャイニーは君も知っているとは思うが、特別な子だ。卵の頃から他の天使達とは違っていた。そして、それだけではない。実は、シャイニーには大きな使命があるのだ。」
「シャイニーが特別な子だという事は知っていましたが…大きな使命があるなんて…あの子の使命は一体どういったものなのですか?」
ハーニーの頭にはシャイニーの可愛い笑顔が浮かんでいた。
「すまないが、あの子の使命については話せない…私も、詳しくは分からないのだ…ただ、その使命はとても大きいと感じている。いずれ、彼自身が自分の使命に気付くだろう。その大きな使命故、あの子の学びもとても大きく辛いものとなる。学びの大きさに嘆き悲しむ事があるかも知れない。苦しみが胸いっぱいに広がる事もあるだろう。そのような時は、君がシャイニーの支えになって欲しい。シャイニーは、君を慕い甘えるだろう。あの子を温かく受け止めてあげて欲しいのだ。」
ハーニーはサビィの話しを聞きながら、シャイニーの笑顔や抱き締めた感触…そして、安心して眠る姿を思い出し胸がいっぱいになっていた。
このまま離れてしまうのは、とても寂しいと思っていたのだ。
これからもシャイニーの成長を見守る事ができると思うと嬉しい。
しかし、今後シャイニーが嘆き悲しむような出来事が起こると知ると、胸が締め付けられるように痛んだ。
(何が起こっても、私がシャイニーを守り支えになろう…)
ハーニーが固く決心すると、更にサビィが言葉を続けた。
「そして一つだけ約束して欲しい事がある。先程ライルにも全天使に伝えるよう頼んだのだが…シャイニーを特別扱いしないようにしてもらいたい。彼本人や他の子達にも特別だと気付かれないように…」
「サビィ様、ご安心下さい。シャイニーとは上手く接しながら支えとなり見守っていく事をお誓いします。」
ハーニーは力強く、そして自分自身に言い聞かせるように言った。
「感謝するハーニー。」
サビィが安堵し艶やかに微笑むと、その美しさにハーニーはうっすらと頰を染めるのであった。
「ハーニー、ハーニーはどこ?」
その時、先程サビィが見ていた水盤から心細そうな声が聞こえてきた。
「どうやら、シャイニーが目覚め君を探しているようだ。私からの話しは以上だ。行っておやりなさい。」
「はい、サビィ様。失礼致します。」
ハーニーは深く一礼をし、天使長室を後にした。
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